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今は笑顔です。

 先生よ…なぜ俺の纏っているローブを引っ張るのだ?


「の~の~トライさんや。我に個人でのお付き合いをだな。そう、オトナなトライじゃ。」


 …。あまり気にしてないようだな。複雑とか言ってたのに。


「いや、こう言うべきかのう…男のトライ。」


 それはどうかと…


「なんじゃ?もしかして、男になったことに気付いておらぬとでも?我の耳はいいからのう…ぐぬぬ、やっぱり教え子に先を越されてしもうた。祝言でも伝えに行かんとな…。」

「あら、本当だったのね。あらあら、リーナちゃんも女か~それもお相手が陛下だなんて…」

「それも一目ぼれの両想いだそうですよ…。ぐぬぬ…私にもそんな春が欲しかった。」


 アコーの発言はちょっと…なんと答えてよいのやら。


「陛下…。過去は過去です。今は笑顔です。それでいいじゃないですか。今も陛下のローブを引っ張るヴィオリラ様とて過酷な思いをしてきたお方ですよ?それが今はこうして元気そうにお話されているのです。」


 友達をその手で殺めた過去を持つ古の魔王。


 勇者殺しの魔王ヴィオリラ。


 それほどの過去を持っているとリーナからも聞いていたがこうして愉快に過ごしている。そのようになるまでどれほどの年月をかけたことだろう…。


「これ、アコー!確かに過去は消えんがのう今を生き、これからを思うて行動することができるのは素晴らしいことなんじゃぞ!ず~っとくよくよしとればこの呪いをくれたミコトに申し訳ない。」


 呪いをくれた?


「ヴィオリラ先生。そのミコトさん?がくれた呪いって?」


 ミコトさんとやらが気になるが呪いも気になる。


「ほう?ミコトではなく呪いの事を聞くのか?」


 そう言いながら腕組をするヴィオリラ先生。


「それに、先生ではなくて様だと…いや、もちろん進めば呼び捨てにしても…あああ、それもいいのう…ふひっ、ふひひ…じゅるり。」


 すぐにそうなるのはいかがなものか…。


「ねえ、アコーちゃん。ヴィオリラ様ってこんな感じだったっけ?もう少しおしとやかでミステリアスな、くーるびゅーてぃーっぽい感じだったきがするんだけど?それと、相変わらずパンツは見せてるのね…今日は白か。」


 そう、今日は白なのですよ!黒のドレスに白のパンツを見せ付ける幼女。


 おまわりさんこっちです。


「のう、トライ。我がこの姿でいるのが呪いなのじゃ。あやつも勇者のくせに妙なことを…いや、何か理由があったのじゃろう…我が殺めてしもうたから聞けぬがのう。我の故郷にある墓参りにでも行こうかね…。」


 ん?


「なあ、教え子にその姿がばれるのを気にしていたのに、メイドや魔軍将には知られているんだな?」

「んもう。魔軍将だなんてかたっくるしいわよ。ムーちゃん、よ?陛下ちゃん。」


 陛下ちゃんでお決まりなんですね。


「ムーちゃんやアコーちゃんに知られてるんだ?」


 言い直した。


「あらあら、私もちゃん付けですか、ふふふっ♪」


 柔らかく微笑むアコー。アラサーに見えんよな。これで29らしいぜ?


 ぱっと見、成人式は終わりましたか?くらいな感じなのに…


「ぶー。我もちゃん付けを検討すべきなのかのう…。」


 更にお子様な見た目な先生。


「子ども扱いをするでない!まあ、そういうことじゃ。子ども扱いされとうないからのう…釘を刺して回ったのじゃ…もちろん悪い子にはオシオキもして回ったがのう…この、アホーだけは問題児でな。」


 面倒なことをしてきたらしい。まあ、ずっと塔に引き篭もっているわけではないということだな。うん。


「ふっふっふー私はリーン様だけに忠誠を!いえ、今は陛下にも忠誠を…」


 胸を強調しながら仁王立ちするアコー。


 ヴィオリーンへの忠誠、その後付け足すように顔を朱に染めながら俺にも忠誠を、と言う。


「我には尊敬を!っといっとるじゃろう?忠誠なんぞ要らんから敬え!」


 噛み付きそうな勢いだな。


「あ?たとえヴィオリラ様とてその言葉は頂けませんな!忠誠が要らない?敬うことの方が不要でしょう?お互い朝から昼間は弱いもの同士仲良くしてきましたが…お覚悟を!」


 ここで事を起こすつもりか?


「なあ、せっかくの景色なんだ。もう少し静かに堪能させてはくれないか?」

「「っ!!!はい。ごめんなさい。」」


 おっと、すこし強めに言い過ぎたか?


「スゴイ覇気ね。アタシも身構えそうになったわ…。」


 そう言いながらもいつの間にか右手にナイフを握っている。


「やはり、ナイフを用いた戦闘を指南しているのか?」


 俺の言葉に苦笑い気味で…


「ええ、そうね…。そういえば、モニカちゃんがナイフで襲ったらしいわね?それでもすぐに許したとか…。それ以前に首に当たったナイフの方が折れたとか…」


 あれは気にしないことにしていたんだがね。


 流石にナイフより俺の首のほうが丈夫とか、ね。


「トライ…。お主は生き物か?いや、生きてるからこんな時はなんと言ってよいのか…」

「ふふっ…簡単ですよ。魔王様です。我らが住まうこのシンフォニアの新しき王。トライオス陛下。」


 シンフォニアね…


 なるほど、多種多様な種族の住まう都にはいい名だ。


 個の種族では決して成り立ってはいないと…


 今、屋上にいるメンバーも…


 勇魔族、妖精族デュラハン妖魔族アルプ魔族ヴァンピールだもんな。



 さてと、そろそろリーナの部屋に戻ろうかね。


「あ、陛下ちゃん。昼過ぎからは会議があるからね~」


 眠たそうにしながらもお仕事の連絡ですか…。


 これから忙しくなりそうだな…。


 ツィンバロムさんから今言われたことを頭の隅に置きながら、俺はリーナが朝方指差していた方向にある森を見ながら物思いにふけた。

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