表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/174

アコーの記憶・2

苦手な方はスルーしてください。




 朝早くに目が覚める。


 屋敷勤めだったからかなあ…おかげさまで生活習慣が…


 旦那様のお相手をしていましたから…


 少しばかり疼きますね…。


 一人で処理するのはなんとも虚しい。


 やっぱり、寝込みを襲おうかしら…。




 弟のディオンと行動を共にするようになって一週間。


 まだまだ屋敷での扱われ方が身体から抜けません。


 旦那様は結局は自分の欲を満たすことばかりの方でしたからね。


 あのマッチョドワーフなメイド長はお元気でしょうか…。


 他の子たちも…


 いいえ、考えるのは止しておきましょう。


 あの中には襲われて殺された子達も…


 名前すら出てこない…実際、旦那様も名前はあまり呼ばない方でした。


 旦那様も名前を言わない方でした。


 「旦那様」と呼ばれることに快感を覚えるらしく…結局最後まで教えてもらえませんでした。


 ふっ、変態ですね?


 っと言われると大きくなされましたね…


 え、どこがとは言いませんよ?




「姉さん。出発の目処が立った。流石に問題なく人間国の外れまで移動できたのはぎょうこうだよ。」


 ですよね。妖精族の私達は見た目変わらないのですが、どうしても普通の人間ではないので…


 同じ外見に、同じ言葉を話すのに…


 悲しいですよね、人間は…


「ここからは、なるべく友好国を目指して行くか…移動手段を手に入れてなるべくは関わらないように行くか考えておかないとね…。」


 移動手段?ロバでしょうかね…。それともお馬さん?


「ロバは流石に荷物持ちだろう?移動手段には厳しい。買うとなると馬は高いからね…。乗り合いが通ってるところはそれでいいし、商人に頼んで…」


 うひぃ…


「ね、姉さん!どうしたんだい!」


 商人…売るのね?私を売るのね!


「な…なん…なんでそんなこと言うんだよ!姉さん!」


 手足が震える。鎖につながれていたあの頃を思い出す…


 殴られる…


 罵られる…


 心を踏みにじられる…


 ああ…ああ…ああっ!


「姉さん!しっかりしてくれ!姉さん!」


 私はそのまま意識を手放した。




 右手があったかい…


 放してしまったら…もうだめかもしれないと思えた。


 だから強く握り締めた!


「いだっ!いだだだ!姉さん!手が痛い!」


 ん?おや、いつの間に…


「手を伸ばしたから意識が戻ったかと思って握ったら強く握り返されるとは…姉さん。握力凄いね。手がしびれるよ…。」


 パワーだけではないわよ?


 テクニックもなかなかなのよ?


「っ!?姉さん。その手の動き…」


 おやおや?気になっちゃう?


 試してみる?


「…。元気だね。それじゃあ、おやすみ。」


 あ、出て行かれた。


 もー。こうしゅしゅしゅっと早業で…


 え、何のことかって?ご想像にお任せしますよ?





 翌朝、移動を開始する。


 今までいた町のとなりの小さな町まで出ている馬車に乗る。


 その日はそれだけで終わった。


 馬車は不味い。それだけが良くわかった一日だった。


「姉さん。頭固定しようよ?」


 NO!


 拒否します。


「…。昼間、危ない所だったじゃないか!相手が寝惚けていたからよかったものを!心臓に悪かったよ!」


 ぶー。


「ほら、こんな感じに布で固定するだけでね?」


 や、やめてっ!


 私に首輪をつけるつもりっ!


 おびえてしまいました。


 近づくその姿がどうしても重なる…怖い…助けて…。


 部屋の隅にうずくまり、肩を震わせてしまう。


「ご、ごめん姉さん。そんなつもりじゃ…」


 い、いいんですよ。これは流石に痣と共に体に染み込んでしまったものですから…


 私は悲しい表情を作ろうとしましたが、どうにも難しいですね…


 引きつる感じがします。


「…どんな表情をしようとしたのか良くわからないけど、ごめん。馬車はこれからは無しだ。他の移動手段を…竜車は流石にここら辺にはないだろうし…野生の鳥か…それとも…」


 そう言いながら考え込んでしまいます。


 は~物知りですね~。ディオンは私より賢いのね?


 それとも、私が無知なだけ?


 まあ、ずっと囚われてばかりでしたから仕方ないといえばそこまでですがね。


「…僕も大変だったんだよ?姉さんが攫われた後、すぐに父さんは死んじゃうし…母さんもおかしくなって…自ら…うう、ごめんよ~ごめんよ~。」


 そう言いながら泣き出してしまう。


「僕だけ…僕だけ…。」


 あらあらまあまあ…慰めるために背中をさする。


 泣きやむと…


「お金は余裕があった。それでも、もしものために貯めておいた。それでも、もしもの事があるかもしれないから魔族の国までは余裕を持たせておこう。そう思って、ケチっているのは事実なんだ。なるべくなら個人部屋も…。」


 大丈夫よ?


 昔のようにお姉ちゃんと寝ましょう?


 泣いて疲れちゃったでしょう?


 さあ、おやすみなさい。


「うん。そうする…疲れたみたいだ。最近は気が休まらなかったからね、さすがにここらからは獣人族の人たちもぽつぽつとはいるみたいだから…もしもの事があっても気が少しでも休める。」


 ん、もう。心配性よね。


 あ、私のせいか。


 ごめんなさいね、こんなダメな姉で…


「家族じゃないか。そんなこと言わないでくれよ姉さん。」


 ごめんなさいね。





 …今はただの女で。


 じゅるり。





 ……


 …


 ええ、イタダキマシタトモ。


 え?


 ご想像にお任せしますよ?





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ