黒の紐パン!
妖しく笑うリーナ。
「ど、どうしたんだ?リーナ。」
俺の下半身に熱視線を向けていたが、今度は俺の角がある辺りと仮面を見る。
「ボクとしては、不思議でならないよ。タケル。魔法を使ったときキミの角と仮面が白くなっていたんだ。今は、戻ってるけどね。」
杖と手袋が白くなったのは憶えているが…角や仮面も?
「俺としては、杖と手袋が白くなった理由なら…いや、まてよ…。オーバードライブの反動か?」
リーナの表情が強張る…
「その、オーバードライブとは?杖と手袋についても知りたいんだけど。」
「杖と手袋に関しては、リミットブレイクが発動したからだ。」
「リミットブレイク?」
俺の言葉に首を傾ける。
「リミットブレイク…それは限界突破だ。簡単に言うと性能以上の効果を引き出す。もちろん、負担があるようだ。」
「…ん、ごくっ。それで、オーバードライブは…」
生唾を飲みながらそんな不安そうな顔しないでくれよ。俺は苦笑いしてしまう。
「簡単さ…身体の酷使…ごうっ!」
殴られた。…痛くは無い。だが、心が痛んだ…。
「ばかっ!タケルにもしもの事があったらっ!あったらっ!ううう…。ぐすっ…。」
参ったね。リーナが泣くところは堪えるよ…。
好いている女性を泣かすことになるとは…。
「殴った手が痛いじゃないか!」
…。殴ったのはあなたでしょう?責任は負いかねます。
「ばーか!ばーか!タケルのばーかっ!!!」
「そういわれましても姫様…自業自と…」
「それはボクの台詞だ!自業自得だと思って…思って…でも、心配したんだよ?すっごーく心配したんだよ!目を閉じている時も辛そうだったから、汗も凄かったから…」
「それで全裸なのか…汗を拭いてくれたのはありがたいが…なぜ全裸?」
「…非常に興奮いたしました。気がついたら二人してタケルを裸にひん剥いていたんだ!無意識に!」
よだれを拭きたまえ!
なぜキリッとした表情をするかね…。伝うよだれが残念だ。
「しかたないだろう?殿方の裸には慣れていないんだ。ボクもレベックも…」
「レベックも?」
「いや、まあ他人の裸にってことだよ。」
「確かに、他人の裸に慣れていたらある意味心配になるな。」
俺は頷くことにした。うん。慣れたらイヤだよね?え、キミ達は慣れたいのかい?
「時に思うんだけど…誰に対して頷いたりするんだい?この場にいない他の誰かに向けているときがないかい?」
「俺にもよく分からん。」
「…。」
なんだ?そんな残念そうな顔しないでくれ。俺にもよく分からんのだよ。
「それで、俺はどれくらい?」
「ん~そうだね。半日?かな…。ボクとレベックで交代交替に汗を拭っていたよ。仮眠も休憩もある程度は入れたからそこまで疲れは無いよ。タケルの様子が落ち着いてきてからは二人でお話してたんだ。」
なるほどなるほど…
「ありがとう。リーナ。そして、ごめんよ。まさか、範囲を設定するのにミスったとは…。」
「そう!それだよ!あの後は凄かったけど、兵たちを引き連れていたのと、魔王陛下の魔法だと言う国内用の伝石での放送があったから早めに落ち着かせれたよ。バス将軍も大忙しだったね。」
「それは悪いことをしたな。」
「どこが悪いことだよ!めちゃくちゃすごすぎてなんと言っていいのやら…で、範囲は?」
凄い真剣な眼差し。だが、俺の勇者の剣が反応してしまう。顔が近い…それにほのかにいい香り?お香でも焚いたのか?やばい、気持ちが高ぶる!
「あ、ああ…ぐ、堪えよ俺!…でだな、範囲は…」
「範囲は?」
「…朝日を見ただろう?屋上で…その時にな、見えた畑とそれより奥にあった見張り塔?だっけかね…。こう、山や森に近いアレだよ…。」
「は…。はああああああああぁ!!!!!!!」
あれ?どうしたんだ?
「もう疲れちゃった…聞いたボクが間違っていた。もしやと思ったけど南門の外よりももっと後方で、畑よりももっと後ろだなんて…。あの場所は、森の異変や山沿いに大型の魔物が出る可能性があるから建てられたものなんだよ?」
はあ、そうですか。
「…。つまり、全国民だけでなく、訪れた者達も全員範囲に入っていたと。範囲だけでなくちゃんと魔法が発動してる時点でめちゃくちゃだね。」
いや~照れるね~。
「こらそこ!照れるな!ボクは怒るを通り越して呆れているんだよ!そのオーバードライブとやらは今後なるべく使わないでくれよ!」
俺は肩を落とす。褒めてくれるかと思ったんだけどね…。
「んっもう。慰めてほしいのかい?」
ちょ、今の言い方!反応してしまう!
「とりあえず、このお茶でも飲んでくれよ?さすがに、汗を流しすぎただろう?」
いつの間にか両手にカップが用意されている。確かに、水分がほしいね。
「ありがとう。いただくよ。」
片方を受け取り俺は、一気に飲み干した。んむ?やけに甘いな…
「のん…じゃった…。」
え?なにその言い方?
すると、リーナは何かよく分からん錠剤を取り出し口に含むと、カップのお茶を飲み干した。
「これでいいんだ…。うん、大丈夫。」
呟きながら頷くリーナ。俺が訝しむと…
「タケル…気分はどうだい?」
それに気付いたリーナは微笑んだ…。
俺の顔が熱くなるのがわかる。あら?熱でもあるのかね俺…
「ちょっと熱っぽい感じがするぞ?」
「…そうか、やはりレジストされるぎりぎりだね…少しでも効いてよかったよ。」
レジストだ…と…おうい!何をするキサマ!!!
リーナは自分のスカートに手をかけ…
しゅるしゅると音がする…黒い紐が見えるぞ?
ふぁさっ…
あの~う。パンツが落ちましたよ?…なんだこれなんだこれ!?
『黒の紐パン!』が現れた!
つまり、リーナノーパン!
「…ごくっ。…リーナ?」
俺が声をかけると、とろけるような笑みを浮かべる。彼女は本当にリーナなのか?
心配になる。が、心配をよそに、俺に近づくリーナ。
「ふふ…うふふ…気持ちが昂るね。どうだいタケル?興奮するだろう?ボクもドキドキが止まらないんだ!」
俺の肩に手を置き、耳元で甘く囁く。
ああ、ダメそうだ…理性が溶かされる。
俺の首に両腕を回し、ゆっくりと顔を近づけるリーナ。
俺もあわせるように近づけ…
お互いに触れそうになる前に…彼女の頬に右手を添えた。
「ん?どうしたの~タケル~?」
…。
俺は、彼女の頬を流れる涙を拭う。
近くで見るリーナの瞳には不安が見て取れた。
表情との温度差がある…
「リーナ。その涙の理由が知りたい。その瞳の奥にある不安が…」
それをどうにかしないといけないと…
この場の流れに流されてはいけないと…
俺の心がそう叫んだ。
だから、訊かなければならない、その涙の理由を…