回復魔法マスタリー
<オーバードライブを覚えた!>
<リミットブレイクを覚えた!>
は、ははは…仰々しいな…ぐ、まだMPを持っていかれるか…。
<いえ、どうやらHPのほうも使用されているようです。>
<今覚えた能力の所為でしょうね…。>
足りない分はよそからってことか…ん?
手袋と杖が白い?どうこと?
<リミットブレイクでしょうね。効果以上の効果を引き出したのでしょう。>
<オーバードライブのほうでご自身のHPを削られているようです。>
限界突破に酷使か…。寿命でも縮むかね?
<そこまでは流石にわかりません。長生きしてくださいよ?>
はい。それでだが、名前は…どうしたもんかね。
<冷静ですね。今もHPを削られているのに…。>
もう慣れたさ。それだけで多くの民が救えるんだ、いいだろう?
<んっもう。勇者様って呼ぶのもういいかしらね…。タケルさん?>
とても甘い声でした。おおう、耳に心地よい。
<あらあら?声だけでここをこんなにしちゃって…イ・ケ・ナ・イ・ヒ・ト♪>
…。それで、名前はどうしようかね。
<ぶー。わたしだってこういうの会話に混ぜてみたいんです~。>
<はいはい、調子に乗りました。そして、勇者のネーミングセンスが今輝く!>
楽しんでいらっしゃるな。
さてさて…。心地良い…まるで歌声のような…そうか!
ソプラノ…いや、アルトかな?
<タケルさんだけに贈る声としてですね?>
<わたしの歌声で酔わして差し上げましょうか?うっふふっ♪>
では、アルトさんこれからもよろしく。
<ん~やっぱり「さん」はいらないかな?>
<多分、わたしよりタケルさんのほうが年上でしょうからね…。>
そうか、ならアルト。よろしく。
<はい♪…さすがにレディのプライベートは聞かないんですね?>
ああ、その悲しそうな言い方に少し…勇者の国が関係してるんだろう?俺にはそう思えて仕方が無い。
俺のことを勇者様と呼ぶその存在に、本来勇者として呼ばれたはずの俺のナニかが引っかかる。
このことは、後々解決しないといけない気がすると…
だが、今はこの国についてだ。魔族でもある俺として…今はできることをこの国でしてみせる。
どうやらついに魔法が発動したみたいだな。
<回復魔法の熟練度が上がった!><回復魔法の熟練度が上がった!><回復魔法の熟練度が上がった!>
<回復魔法の熟練度が上がった!><回復魔法の熟練度が上がった!><回復魔法の熟練度が上がった!>
<回復魔法の熟練度が上がった!><回復魔法の熟練度が上がった!><回復魔法の熟練度が上がった!>
<回復魔法の熟練度が上がった!><回復魔法の熟練度が上がった!><回復魔法の熟練度が上がった!>
<回復魔法の熟練度が上がった!><回復魔法の熟練度が上がった!><回復魔法の熟練度が上がった!>
<回復魔法の…
はあ!?
<エリアヒールが…LV10になりました。>
<レジストフィールドが…LV10になりました。>
<獲得経験値が多大のため、他の回復魔法にもまわします。>
<ヒールが…LV10になりました。>
<レジストが…LV10になりました。>
<レジストボディが…LV10になりました。>
<メガヒールが…LV10になりました。>
<ギガヒール LV1 を覚えた!>
<ギガヒールが…LV10になりました。>
<テラヒール LV1 を覚えた!>
<テラヒールが…LV10になりました。>
<メンタルヒールが…LV10になりました。>
<メンタルシールド LV1 を覚えた!>
<メンタルシールドが…LV10になりました。>
<経験値が多大に余っています。残りは保留しました。>
<ちょ、こりゃないでしょ!!!めちゃくちゃよ!!!>
<一瞬おかしくなっちゃったかと思ったわ!>
俺もバグったかと思ったよ。
<累計回復魔法使用者数が一万を超えました。>
<回復魔法マスタリーを手に入れた!>
回復魔法マスタリー?
<え~っとなになに?は?めちゃくちゃよ!>
何がどうしたんだ?
<全ての回復魔法の獲得ならびに使用の制限を解除だなんて!>
なるほど、確かにマスタリーだね。
そして、新しく覚えれば余っている経験値ですぐにLVが上がるだろう…。
やべー!まじやべーよ!回復魔王だわ!
<は、ははは…確かに『回復魔王』ですね。>
ん?ステータスのほうも回復魔王になったんだな?
トライ(♂) も トライオス に変わるくらいだからな。
<表示ミスがそのまま多くの方々に認識された結果ですよ。>
<知られて、憶えられてこそ表示が変わります。>
そうか、俺の名前を知らないやつらばかりの場所に居たわけだもんな。トライオス陛下と呼ばれればいつの間にかその呼ばれ方が定着したわけだ。
っと、足元がふらつくぞ?
<それはタケルさんの頑張りの証拠ですよ?>
<皆の声が聞こえるでしょう?>
<流石、わたしたちの勇者様♪>
あ、ああ…そんな感涙の涙まで流さなくても…
これは俺がやってのけたんだな…
でも、HP削れたのが堪えるね…。思わず膝をついてしまった。
「タケル!」「陛下!」
声が近づく…。
リーナとレベックか…
やったぞ?やってやったぞ!俺は駆け寄ってきた二人にたいして微笑むのを感じる。
ふ…ふふ…。
「んっもう。タケルはやっぱり勇者で魔王なトクベツだ!こんなことしてよくもまあ…。んん?大丈夫じゃなさそうだね…。」
「へ、陛下~。うう、あったかいな~ん♪…っは!?去れ!自分の煩悩よ!」
少し疲れたようだ…。
「すまん。ちょいと疲れた。」
ん?何だかジトッとした視線を…
「これがちょいと疲れたですって?トライオス…次は無理しないでね?お願いよ?」
ヴィオリーンに心配されてしまった。
「は、はは…なら無理しないように食事の時も見ててくれよな?」
「っ!?わ、私は自室で食べるわよ。そんなにご一緒したいなら私の部屋で一緒に食べなさい!」
そうきたか…。
「ん~機会があればね。すまん、そろそろ眠く…」
ねみ~
「あらあら~…ボクの部屋に運ぼうか。レベック、キミにも話しておきたいことがある。タケルも薄々気付いているだろうし…君の気持ちも聞いておきたい。いいかい?」
「は…はい。自分の気持ちですか…。ええ、お話させていただきます。」
「ごめんよ?そろそろ、キミはあれな日だろう?休暇もとらないといけないし…」
「っ!!!ひゃ、ひゃいっ!わかっております。ですが、今はまだ大丈夫です。」
俺を挟んで何かを話しているようだが…何の話だろうな…。
「ちょ、ちょっと!二人してなに話してるのよ?」
「ん~リーンにも後日聞くよ。まずはレベックと話をしておきたいんだ。」
「じ、自分よりヴィオリーン様のほうが…」
「ダメだよ?レベック。ボクはキミと話をしておきたい。いいね?リーンは後日。」
「ぶー。いいわよ。レベック。リーナとお茶でもしときなさいな。」
俺は話し合いを子守唄がわりにしながら意識を手放した…