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アルラウネのラーベル

 この中庭の光景は、なんとも懐かしささえある。 


 何となく家庭菜園って感じもしなくもないな。あ~、俺もちょいちょい庭いじりしてたな~野菜を育てるか!うん。そうしよう!


 野菜魔王でもなるか?


 野菜は新鮮なのがうまいからな!野菜はうまいだろう?


 キミ達もそう思うよな?


 な!?まさか…嫌いとか言わないでくれよ!


「…。タケル。何を一人で頷いたり、凛々しい顔してるのかな?ボクは凄い気になるんだけど?」


 そんな不安そうな顔しないでくれたまえ!野菜の良さをだな!


「あらあら~?うっふふっ。植物に興味がありまして?お若いのに、庭いじりとしゃれ込みたいとは…面白いお方ですね。リーナさんの…ふふっ、そんなにお顔を赤くなさらなくても…かわいいわね?」


 いつの間にか女性が…


「んもう。ラーベル!それにタケル。庭いじりがいいのかい?なら、畑を近場に用意できるから好きなのを試してみたら?」


 ほう?畑か…老後の嗜みって人もいるだろうが、都会から離れて若いうちから始める人も増えているよな。うん。自由に使える土地があるなら好きな野菜を植えてみるか。


「はじめましてだな。俺の名前はトライ・タケル。貴女がラーベルさんですね?よろしくお願いします。」


 想像していた感じと全然違うな。


 黄緑色っぽい髪に麦藁帽子?のような被り物。そして、白のサマードレスなのが驚き。二の腕まである白い長手袋装備に足元は茶色のグラディエーターサンダル。


 なあ、俺の感覚が間違っているのか?これが庭師の装備とは思えん!


 俺が呆然としていると、エメラルドのような双眸を細める。


「ええ、はじめまして。お会いできて光栄です、魔王陛下。」


 そして、恭しくスカートの裾をつかみ一礼。アコーとは違い洗練されている。まあ、あの時は兜付きだったから珍妙に思えただけかね。


「お噂はお聞きいたしました。バグパス様に代わるお方だということも、そして、ヴィオリラ様が狙っていることも…うっふふっ。仮面の貴公子といった所でしょうか?」


 大人びているはずなのに、その微笑みは少女のように幼く明るい。不思議なお方だ。妖精といわれたらそりゃ確かにと言った所だな。華が咲くといった言葉がよく似合う。


「あらあら、そんなお顔をなさらないでくださいな。私も気になるお方が居りますので。それに、リーナさんが嫉妬なさいますよ?ふふっ♪」


 おや?俺はそこまで思っちゃいないが?


「もうっ!からかわないでよっ!そう、それで相談なんだけど…ラーベル。」


 そう言うと二人で何かを話し始める。はあ、また俺は教えてもらえんのか…。植物でも視て回るか。





「それで、相談なんだけど…ヴィオリラ先生がラーベルに頼めば分けてくれるとか…。頼めるかい?」

「あら?そのようなものが必要でして?私も用意してなんですが…使うべきかどうか、いえ、使うことに恐怖があるのですよ。嫌われてしまったらどうしたものかと…彼は気難しい方ですから、特に…。」


 その言葉にリーナは苦笑いを浮かべる。


「確かに、気難しいお方だとは思うよ。でも、ラーベルのことを気にかけてくれるじゃないか?それに、立派なお仕事だってしている。彼ほど職務を全うしている方はいないと思うな。それでも、庭や庭園ではお優しい顔をなされる。それを作ってあげているのはラーベルじゃないか!自身もちなよ?…ってことでボクに分けてくれない?たのむよ~」

「陛下もリーナさんにはかなり気を許しているご様子。不要なのでは?」


 ラーベルの言葉にリーナは首を左右に振る。


「いや、こんなことを言ってなんだけど…ボクに必要かな~と、好きな気持ちが強くても…。勇気が出なくてね。もちろん他の準備もしている、だけど…先生にも宣言されちゃって…焦っているのも確かかな。ボクらしくないや…。」


 親しい友のように、そして仲むつまじい姉妹のようにも見える。


「そう…ね。確かに、怖いと思う気持ちがどこかにあるものよ?仕方ないわね…私は念のためだから、まあ、分けても問題ないわね。でも、用法容量には十分注意してお使いになってね?約束よ?強すぎた~激しすぎた~とか後日言うようなはめにはならないでよね?それが心配だわ。」

「分かっているよ。こう見えても小さい分量まで気にするたちだからね。」

「それは知ってるわよ。長い付き合いじゃない?まさかこのまま先を越されちゃうのね…。私も機会があればいいのだけれども。」


 ふむふむ…ラーベルさんの想い人はどのような方だろう?ちょいちょい聴く限りじゃあ、気難しいって所か…仲良くなれればいいのだが。


 まあ、庭園で癒されるような方だ、問題ないだろう。うん。


 

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