昇る金色の朝日
ん?むう…いつの間にか寝ていたようだな…あれ、リビングのソファーで俺寝たっけ?いや、ソファーベッドなんて家にはないぞ?あれれ~それに、なんだこのさらさらとしたものは…髪の毛!?え、俺、誰かと一緒に寝たのか?
「すぅ…すぅ…んんっ。タケル~♪ボクは幸せだよ~…ふふっ…すぅ…すぅ…。」
寝言か?銀髪サラサラ~銀髪!?それに、耳が尖っていらっしゃる。肌も浅黒いのだが…こんな綺麗なお嬢さんが俺の名前を…そうか、これは夢だな…
「あは、はは…俺は何て夢を…うぬぅっ!」
俺の朝の生理的なテントに寝返りを打った彼女の健康的な太ももがHIT!
やばいやばいやばい…この感触はやばいぞ!理性ががが…
「タケルぅ~我慢しなくていいんだよ?」
ああ~変な寝言を囁くなよおじょ…うさ…あ、そうだっ!俺は死んだんだなっ!コンビニに突っ込んできた大型トラックに…そうか、天国か。それなら仕方ないよな、うん。このお嬢さんとにゃんにゃんな関係でも問題ない。てか、寝言ですらこんなに慕ってくれているんだ。大丈夫。自身を持て渡来タケル!男だろう?勇者の剣を開放するのだ!
…。勇者?…魔王!?はっ!
ぺたぺた…
角だ!角があるぞ俺!天国ではなく地獄だと!なんてこった!生殺しというヤツか!怖ろしい刑だ!俺の精神を削る怖ろしい策だっ!
ぐおおお~美女が添い寝してるのに!手出しできないということか!?何たる地獄!
「んっ…んむう?あ、おはよ~タケル~」
俺が悶えていると銀髪の美女が目を覚ましてしまっ!おおうっ!俺の胸板に頬ずり!そしてそのまま俺の顔を覗く眠たげな赤紫色の双眸。綺麗だな~うん?むむむっ…???
「ん。」
もう天国なのか地獄なのかどうでもよくなりました。唇が重なっちゃったんですから…思考が溶かされていく、このまま…このまま元気な勇者の剣をっ!
<…。勇者様、何してるんですか?>
とても冷たい女性の声が急に聞こえたせいで驚いて唇を重ねる美女に抱きついてしまう。
「んあっん!タケル!激しいよ!ボ、ボクはまだ心の準備が!は、離してくれ!おはようのキスをしたのは他意はないんだ!ただの好奇心なんだ!だからまだそれ以上は…今のところは待ってくれ!」
俺は何て事を…。
…あ、俺は何をしているんだ?こんなに寝覚めが悪かったか?は、恥ずかしい!!!
<召喚酔いが今頃ですか…。役得ですね?>
ああ、声の人よ!正気に戻してくれたのはいいが、俺かなりやらかしてるな。
「ごめんよ、リーナ。寝惚けていたようだ。」
耳元で囁く。
「ふぁあっ!ボク、変な気持ちになっちゃうっ!ははは、早く離れたまえ!」
申し訳ありません。俺はそう思うと離れ、ソファーから起き上がる。
「疲れがきたのかね…俺は、寝起きがいいほうだったんだが…。」
「ボクに言われてもね…まさかアラームより早く目覚めてしまうとは。疲れている割りには早起きなんだね、タケル?」
アラームあるのかよ?リーナの言葉に反応してそちらを見るとクリスタル?石ころ?まあ、それを握りながら首を傾げていた。
「俺もそこらへんはわからんな、時差でもあるのかね?この世界の時間は?あと一年は何日?」
気になるよね?ああ、俺も気になる。
「時差があるのはまあ、長距離用の伝石の実験で解っているとして、時間は24時間。まあ大体らしいけどね。昔の偉い学者さんが言ったらしいよ?そしてこの結石はね、太陽の位置によって設定した時間帯に反応するんだ。だから、時間がどうとかまでは時計を見に行かないとわからない。そして、最後に一年は約360日といわれている。まあ、それくらいだろうって所だね。年に何回か日が長~い時があるからね…数日のズレみたいなのはあると考えといてくれ。」
サマータイムに近いのかね?まあ、似たような世界、しかし多種族並び魔法がある世界なのはこの世界が今までいた世界と違うということを如実に伝えてくる。
「説明ありがとう。それじゃあ、屋上に行こうか?」
「うん♪」
素敵な笑顔だ!それが俺に向けられているというのがたまらなく幸せだな。
部屋を出て、薄暗い廊下を歩く。城内の明かりもいつの間にか落としてあるな。
「トライオス陛下、リーナ様おはようございます。」
おや、彼は背が高い兵だったな、背の低い兵とディオンの三人でいた気が…
「ああ、おはよう。えっと…」
「ん~おはよ~。?どうしたんだいタケル?」
「いや、名前を知らないなぁと思ってね。すまないが名前を教えてもらえないかな?」
彼は敬礼のまま…
「マルノトといいます。」
「そうか、マルノトさん。おはようございます。」
俺は挨拶し直した。すると両手を突き出し左右にパタパタ
「さん、だなんて!陛下。マルノトでお願いします。我らは兵なのですから。」
「そうは言ってもな、急に現れた俺にそんな気遣いもいらんだろうに…よそ者だぞ?」
「だとしてもです。ローブを身に纏い、颯爽と歩くその姿に敬意をいだかせてください。」
「そんなもんかね?」
「そんなものだよ?タケル。それじゃ、ボクたちは屋上で朝日を見てくるからね。お勤めご苦労様です。マルノトさん。」
おや?リーナがさんをつけるのは珍しいな…
マルノトと別れてからふと思った。
「彼も城勤めが長いからね。ボクも流石に敬意をいだいているんだ。」
そうか、となると…ディオンやレベックはそこまで長くないのかね…。
「まあ、他の兵や民との交流が増えるだろうから、今から色々と知っていけばいいよ。ボクなんか10年近く居てもまだまだだからね。まあ、ほとんど王城勤めだからしょうがないか…。」
研究職の定めかね?まあ、俺は一般人の生活の方がいいかな…でも、どんな生活をしているかも知らんから一概には言えないか。
屋上に着く。ほ~壮観だね。山や木々が見える。自然はあるようだ。砂漠地帯とかじゃなくて良かった。川も見えるから水にもそこまで困らなさそうだな。
そして、金色の朝日が昇る。美しい…
「綺麗だね…タケル。」
「ああ、誰かとともにこの景色を分かちあえるとは、一人じゃなくて良かったと思えるよ。傍にいてくれてありがとう、リーナ。」
「ふんっ、どうせ我は仲間はずれだなっ!」
ん?幼女の姿に戻った?先生がいじけているぞ、てか、普通に朝日に当たれるんですね?ヴァンピールなのに…
「我は我だからな!朝日には負けん!昼間は流石に厳しいから、その時はトライからエネルギーをもらうぞ?血でも可だが、やっぱりあの味をもう一度…ふひっ。」
よだれも輝くほどの朝日。こんなんでいいのか?金色髪の先生よ…。