満月でしたかね
うわ~教え子に嘘をついてる~いけないんだ~ヴィオリラ先生!
『ううぅ~苦肉の策じゃ!リーナが誤解してくれれば今はしのげる。して、トライ達はどこへ行こうとしていたのじゃ?』
トイレです。スライムが待ち構える…トイレです。
『は?貴様っ!トイレでリーナと何するつもりじゃ!ええい!させぬ、させぬぞ!ぐぎぎ…気になる。とても興味がございます。覗かせて?ねーねーちょっとだけでいいからさっ?』
先生の頭の中が心配になってきた。俺は一人で行くと言ったんだが、リーナが迷わないように案内すると言い出してな。はぐれないように手を握ろうとさえ言われた始末よ。
『なにそのシチュエーション。爆発しろよ!トライは一人でトイレにも行けないのか?ふひっ…愛いヤツじゃのう…。』
むかつく~。場所が分かれば問題ないんだよ。
「なんだいタケル?不機嫌そうだね?ボクと二人っきりじゃなくなったからかな?かな~?ふふっ♪」
俺の顔を下から見上げるリーナ。相変わらず押し付けられている…去れ!俺の煩悩よ!
不機嫌そうな顔したヴィオリラ先生の顔が視界に映る。
『ふんっ!どうせ、お邪魔虫ですよ~だ。悲しくなんて無いんだからなっ!ホントだぞ?』
涙目で言わないでください。てか、俺にしか聞こえてないからなんとも言えんな…
「あ、ごめんよ~ヴィオ…じゃなくてリラちゃん?悪気は無かったんだ。よ?」
ムギュ!
おや?なぜだろう…今のリーナの言い方に違和感があった…まさかな。悪気が無いと言いつつ俺に抱きつく力を強めた。
みせつけているような気さえするんだが?だとしたら、女の子って怖いわ~
リラちゃん(ヴィオリラ先生)もトイレに行きたいと言い出したので行動を共にする。先生の方は生徒の様子の変化に気付いてないのか…ダメダメだな、気配りがなってない。
「ね~ね~リラちゃん?お母さんは今何をしてるのかな~(ニヤニヤ。)」
うわ~これは気付いてるってアピールしてるぞ?だが当の本人様は…
「ん~っとね~。屋上の塔でお休み中なの~。満月の夜じゃないとちょうしがわるいんだって~。」
子どものふりを頑張っている。
「へえ~♪リラちゃんのほうは調子は悪くならないのかな~?お母さんの子なんでしょ~?ボクが聞いた話では種族的に何かしらの問題がある~ごにょごにょ~とか言ってたんだけどね~(ニヤニヤ。)」
小さな顔に嫌な汗がいっぱい!やめたげて、先生のハートがボロボロよ!
『う、う~。これだから頭のいい子は…だが、我がその先生だとは気づいてないようじゃな…。どうだ!我の演技力?天才子役も夢ではないわ~』
誤魔化せていると思っているのは先生だけのようです。
「あ、トイレ!トイレついたの~。」
逃げたな。そして…兼用なのか?一つだけある扉を開けて中に走り去っていった。
「ん?どうしたんだいタケル。トイレについたよ、行かないのかい?」
「え?いや、男女別じゃないのか?」
「は?何のことを言っているのかな?トイレ内は個室がいくつもあるんだよ?わざわざ男女は分けなくていいだろう?それとも…このまま個室にボクとご一緒するつもりでいたのかね?」
俺は無言で扉を開けて中へと去る。
扉の向こうから…
『下のほうは素直なのにねっ♪まあ、ボクもまだ心の準備があれだけど…』
そりゃ仕方ないさ…テントが張っているのは…。リーナの、あの柔らかさが頭から離れないのだから…
「ふ、ふんっ!我の手にかかれば鎮められるぞ?どうだ、試してみるか?のう?試させてくれないか?」
危ない目つきの幼女がいやらしい笑みをしながら、手をニギニギ開閉したり上下に…ダメじゃないか!
先生がそんなんでいいのか?
「何をいぅておる…トライは我の教え子でも生徒でもないだろう?イケナイ関係ではない。いや、これからある意味イケナイ関係かの?ふふふ…じゅるり(いろんな意味で)。」
小声でなんて事を言い出すんだ…。イケナイ関係とか言うなよな。そして、よだれを袖で拭うなよ…
「この歳になってもな…教え子やメイドたちからの経験や体験談しか聞けんのじゃ…確か、耳年増とかいうんだったかの?」
体験が無いのに、男女間のことをいろいろ聞き知っている、若い女性。だったはずだが…若いのか?俺は少し疑問に思うのだがね。
俺との距離をゆっくり縮めてくる先生は俺のテントから目を離さない。
「心配することは無いぞ、トライ。聞いたときについでに手の動きやら口の動き、舌使いもちゃんと動作含めてレクチャーしてもらっておいたぞ!だから、好奇心が強くての~」
ダメじゃないか、そんなメイドが王城で働いてるとか…それに、教え子が何教えてるんだよ!教育上よろしくない。
迫力に負け、思わず入って来た扉のほうへ後退りしてしまう。すると…
『ん~おかしいねぇ~?ねえ、せ・ん・せ・い?今日は満月でしたかね?ねぇ?そこに居ませんか?』
ぴたりと動きが止まるヴィオリラ先生…
『声が聞こえてくるな~おかしいな~リラちゃんだったかな?お子さんが居るんですよね?あれれ~今思えば未経験だとか言ってた気がするんだよな~じゃあ、あの子は誰なのかな~ねえ、せ・ん・せ・い?」
扉が少し開いてますね、はい。
「タケル~そこに、ヴィオリラって名前の先生は居ないかい?金髪碧眼でね、白っぽい服が好みなんだ。リラちゃんとかじゃなくてさ、正直に頼むよ~?」
リーナの声色は優しいのだが…
ヴィオリラ先生は綺麗な碧眼から透明な汗を流しながら頭を左右に振る。
「おしまいじゃあ…今宵二度目の乱心なのじゃ…。教え子に見放されるっ!これじゃあ近づいてくるのはアホのアコーぐらいじゃ!バル子は数に数えん、あの子は我を子ども扱いするからな…。アメあげるとか言われてみよ、悲しくて涙が出るんじゃ。そしたら、バルちゃんのほうがおね~ちゃんだからね~よしよし~とか言ってくるんだぞ!うぐぐ…。」
バルちゃんに子ども扱いとは…
「もうっ、どうせボクに見放されるから黙っていてほしいとか言われたんでしょ?タケルは女性に優しすぎるきがするんだ。もっとボクを主に優しく接してくれないかい?先生はまあ、何番目くらいかに優しくしてあげたらいいんじゃないかな?」
そう言いながら少し呆れ顔のリーナが扉を開けて入ってくる。
「騙してごめんよ~我のリーナよ~!子はいないし、経験は皆無じゃ!そして、満月じゃなくても城内をうろついてたりするのだよ~。」
「我のじゃないでしょ?それに、タケルはそう易々と渡さないからね!」
…。俺、ぽつーん。
渡さないって、モノかナニカデスカ?