ヴィオリラ先生は幼稚
「芸が無いな。他に技とかないのかね?それに、リーナに当たったらどうするつもりだ?」
グッ! パシュン!
俺がシャドースピアとやらを握りつぶすと、リーナが…
「危ないじゃないか、お嬢さん?おや?どこかで見たことあるような気が…」
その発言に金髪幼女は即座に顔を逸らした。おや?おやおや?
「まさか、せ「わ~わ~!ごめんなさ~い、おに~ちゃん!」
リーナが何か言おうとした途端にわ~わ~言い出しながら顔の前で両手をパタパタ、そのまま…リーナの視線から隠れるように走り、俺の左手を掴んでくる。
『おい、トライとやら…言うなよ?』
頭の中に直接声が届く。
『これは珍妙な…混ざっているな、お主?本当に魔王なのか?』
悪かったな、勇魔族って言う聞いたことない種族らしいからな。片角だしよ。
『勇…まさかな、カエルの小僧が言っていた勇者召喚か!?』
その通りでございます。せ、ん、せ、い、さん?
『言うなよ…ゼッタイ言うなよ。リーナには満月の夜の姿しか見られたことが無いんだよ。こんな姿な我を知られたら威厳が無くなる。それだけはイヤじゃ。』
なるほど。だから満月の夜しか現れないと言っていたのか。でも、リーナ曰く気難しくて、すぐに拗ねちゃうような先生だと言っていたぞ?その時点で威厳も何も無い気がするよ。見てくれ(みかけ)さえ良ければ良いのか、偉大な勇者殺しの魔王様よ。
『ぐ、ぐううううぅ~それだけは言うな。それだけはな。トライ、貴様を殺してくれようか?あ?リーナの想い人か何か知らんが、それは言うなよ?我とアヤツの日々を愚弄することだけは許さん。…て、リーナの想い人なのか!?』
顔を真っ赤にする先生。大丈夫だろうか?にしても想い人ね…。光栄だよ。教え子の春だ、祝福してくれよ?先生。
『なんじゃ、先生、先生と貴様にそう呼ばれる筋合いは無い。ヴィオリラ様と、そう我を呼ぶが良い。カワイイ教え子につく虫は払ってやろうか?子ども扱いしおってからにっ!幻術も魅了もダメとかチートじゃろっ!満月の夜ならフルパワーでけちょんけちょんにしてやれるというのにっ!このナイスガイ仮面めっ!我にも来い、春よっ!なぜいつもいつも教え子の結婚式にだけ参加せねばならんのじゃ…。我もウエディングアイルを歩きたいのぅ…。』
表情がころころと変わる愛らしい顔だな、早口でまくし立てられたが…
ねえ、知ってる?ヴァージンロードって日本人が作った言葉なんだよ?だから他所では通じないから、間違えないようにね!
今、ヴィオリラ先生が言ったウエディングアイルもしくはウエディングロードが本来の呼び名です。
てか、ヴィオリラ先生はチートとかけちょんけちょんとか、なんだろうか…幼い。
『ぐぎぎぎ…だからのうっ!気安く先生と呼ぶな!様じゃ!様!ヴィオリラ様!オーケー?それに、幼稚じゃとっ!これだから最近の若いモンは…』
年寄りぶるなよ、婚期を逃すぜ?若作りじゃなくて若いんだからさ、もったいないよ?
『う、くうぅ~。お主みたいな男、他におらんかね?それとも、ハーレム目指すか?のう?ほれ、ほれ、我の魅力の虜にならんか?な~な~ならんか?』
俺の左手にむぎゅむぎゅしてくる幼女。姿は豪奢で白が多めなゴシックドレス。スカート丈が短い気がする。フリフリフリル…。
「む~、なんだい、さっきから二人でイイ感じな雰囲気出して…アイコンタクトとか…実に面白くない。」
リーナの機嫌が悪くなってしまった。
「ごめんよ。謝る声が小さくてな、ちゃんと反省しているか目を見て確認していたんだ。この子は大丈夫、もう悪いことはしないさ。な?」
ばれたくないんだろう?何か考えておけよ?俺はそれなりに合わせれるが、これからのことを考えておくんだな。その姿で見かかってもフツーに教え子と会話や行動ができる言い訳を。
『ぐ…心遣い感謝する。だがの~そういうのが苦手じゃから隠れてコソコソしておったんじゃ。それが、それがのう…今宵リーナとトライが幸せそうにおてて繋いで歩いておった所を見てしまい、いてもたってもいられず行動してしもうたのじゃ。』
何だかごめんなさい。だが、リーナが手を繋いでほしいと言ってきたんだよ。
「そうなの~、おね~ちゃん。ごめんなの~。」
何だその言い方はっ!違和感が無い!大丈夫かオトナな先生よ。
「そうなのかい…でもボクの名前知ってたよね?ボクは初めて、いや似たような顔をどこかで…まさかっ!」
ヴィオリラの顔を近くでじっくりと見るリーナ。柔らかい膨らみが俺の右腕に押し当てられているのは…わざとかい?でも、あまり気にしてる感じが無いな…。集中すると周りがあまり気にならないのか?
『や、やばいのじゃ!バレるっ!てか、ずるいの~リーナの膨らみを味わうとは…けしからん。我にもその柔らかい感触を分けておくれ!我も堪能したい!』
ピンクな先生だな…よく嫌われずに済んできたものだ。女性の柔肌を求めるなんて、自分の方がぷにぷにだろうに…。
『我と他者とではやはり感覚が違うの、これでも表情や行動に出さないように気をつけて接してきたの。先生が教え子に手を出すなんて、社会的にダメじゃろう?おぬしの世界でも、おまわりさんこっちです。って言われるのがオチじゃ!』
詳しいな。この世界にもおまわりさんはいるのかね…素朴な疑問。
でも、兵がいるから問題ないのか?
何かに辿り着いたらしいリーナは嬉々として語りだす。
「先生のお子さん!?ご結婚なされていたんですね…先生。それに、お子さんも…バルちゃんくらいの背丈まで成長されてるのに、一度もお目にかかれなかったとは。」
先生のお子さんだそうです。ご結婚なされていたんですね?ね?
『ぐうっ…トライ、貴様っ!うう、だから満月の夜以外で遭いとう無かった!生娘なのに~!子とか!娘とか!うわわ~んっ!!!』
涙を浮かべながら…えらいこと言うな、凄い生々しい情報だ。
「そうなの~おね~ちゃんはママから聞いたの~。でね、知らないおに~ちゃんと一緒にいたから、助けてあげようと思って魔法を使ったの~。」
言い訳としては二重丸だな、だが、幼稚な喋り方は心が痛む。リーナにかけていた幻術を解いてごめんなさい。
『同情のようなことするなら、婿になれ!』
どっかでか聞いたフレーズに似ている。
「そうか、それは悪かったね。タケルはやさしいからアコーの時みたいに許しちゃうんだろうけど…。お名前は?なんて言うのかな?」
「リラだよ。」
「へ~先生の名前を短くしたような名前だね~リラちゃんよろしくね~。」
無言でコクコクと頷くリラ(ヴィオリラ先生)はとても複雑そうな顔をしていた。