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新しき魔王『トライオス』

 は?カエルを殺してしまったのか!?壁にはシミ一つ無いがカエルの姿も見当たらない。だが、その下にはカエルが身に着けていたローブ、首飾り、そして彫刻がすばらしい杖が転がっている。


「な、魔王がっ!?貴様何者おっ…ぐうっ…」


 え~魔王とか、カエルが魔王とかなんですか…。声のほうを振り返ると、目のやり場に困る女性が咽喉元を抑えて倒れようとしていた。なので駆け寄り、抱きかかえる。


 どうしたんだろうか。ん?煙いな…俺が立っていた魔法陣(今は光っていないようだ)の上に転がる黒っぽい子供のこぶし大の大きさの石から煙のようなものが出ている。


「おい、お嬢さん。大丈夫か!?この煙たいやつの所為なのか?」


 俺が抱え、お嬢さんと呼ぶと顔を真っ赤にして俺から顔をそらしてしまった。


 こりゃダメか…煙の所為なのか、って俺上半身裸じゃねーか。コンビニの制服は?中に着ていた長袖のシャツも無い。ズボンは穿いているが裸足だ。


「ぐ…リーナめ!調合ミスってるではないか…それにコイツは誰だ、片角の魔族にこんなヤツがいるなんて知らんぞ。」


 顔をそらしながらブツブツ言っている。片角?魔族?そんなのは今どうでもいいので、彼女を一旦床に寝かすと壁に掛けてあるローブ(なんか高級そうなのだよ。)を羽織った。


「そ、それはっ!」


 彼女は苦しそうにしながら顔を上げると、俺が纏うローブに驚愕する。


 さて、どうしたものかな。今いる場所も分からなければ、どうすればいいのかも分からない。とりあえず…


「医務室とかあるかい?もしくは病院関連施設とか。」

「ぁ…ク…う…。」


 なんてこった。気を失ったようだ。こんな場所に居続けるのは不味いだろうと思い、彼女を抱えて部屋から出ることにする。


 部屋もそうだが廊下も全体的に石造りで窓の外は暗く、夜なことは分かる。誰かいないのか、そう思っていると右側の通路の端に人影が見えた。


 即座に駆け出し人影を追う、端に辿り着くとその人物は全身鎧に身を包んでいる。此処は中世か?そう思ってしまう姿。兜で顔は隠れているようだ。

 

「すみません!お聞きしたいことが、医務室とかありませんか?」

「ん?キミは…え、その方はヴィオリーン様!となるとアナタが…協力者?」


 顔は分からないが若い男の声だ。協力者?この子の名前はヴィオリーンと言うんだな。様って事は偉い人?なのか。だが…


「そんなことは今はどうでもいい!彼女は倒れて気を失っているんだぞ!」

「申し訳ございません!陛下、この場合はリーナ様の研究室に向かうのがよろしいかと…」

「それが分からないから聞いているんだよ!」

「は、はいっ!お連れいたします。ですからそのように覇気を出さないでください。」


 陛下ってだれだ。いや、覇気を出さないでくださいと言われてもな、怒らないでほしいということかな?


 それにしても、新しい名前がでてきたな。リーナね、研究室ときたか…。学者と言うことだろうな。


「道案内をたのむ。ちなみに君の名は?」

「はっ。自分はレベックであります。では、ご案内いたします。こちらです。」

「ありがとうレベック。」

「勿体無きお言葉。」


 レベックの後ろをついていく。通路を曲がり、階段を下りる。すると前方に複数の鎧に身を包んだ人たちが現れるが…


「陛下とヴィオリーン様が通られる。皆、道を開けよ!」

「なんっ?!」「はいっ!!」「お、おお~新しい魔王様か。」


 レベックが声をかけると壁際によりこちらを見て声を上げる。新しい魔王だと?


「すまない。道を急いでいる。」


 俺は彼らの横を通り過ぎる際にそうこたえた。そして、通り過ぎると後ろの方から


「凛々しいお姿。」「ローブが良くお似合いで。」「片角ですと!」


 褒めてもらったのか?また片角と言われたな…どういうことだ?だって、彼女の角は両サイドから伸びてるぞ。


 え、なんだって?…そうなんだよ、ヴィオリーンさんは角生えてるんだよ。後、尻尾も有るよ!


「此方の部屋になります。陛下。」

「道案内ありがとう。レベック!両手がふさがっているから開けてもらえると助かる。」

「かしこまりました。」


 目的の部屋についたらしく扉の前で立ち止まるとこちらを振り返り、両踵をつけ、敬礼してきた。俺も感謝の意を伝え、そして開けてもらうように頼む。


 そして、開かれた扉の中へと踏み込んだ。そこには大小さまざまな石ころが机の上に転がっており、その机に突っ伏している人物がいる。


「休んでいるところすまない。急に彼女が倒れたんだ、診て貰えないだろ…う…か?」

「んん~?なにか……ね?」


 俺の声に顔を上げた人物は、耳が尖っており、銀髪で、黒っぽい肌をしていた。


 うん。白衣っぽいものを着ているが、見た目年齢的にこの子じゃないような気が…助手さんかな?


「む…。キミ、失礼なこと考えているだろう?ボクは立派な大人の女性だよ。少なくともキミより年上だと思うがね。…で、キミ誰?リーンは何があったのかい?魔王は?」


 次々と質問攻めをしてくる銀髪さん


「俺の事はどうでもいいんだよ!この子の事を診て貰えるか、どうなんだ?」

「そんな怖い顔しないでくれよ。まさか、使用ミスしたのか!?ドジっ子リーンめ…。連れてきたということは君にも何か症状が出てもおかしくないはずだが…」

「ん?俺はなんとも無いぞ、それに彼女は調合ミスっ!とか言ってたぞ。」

「はあ?なわけないよ。ボクはちゃんと実験したんだからさ。だから、使用ミスなはずだよ。だからキミもステータスを見てみなよ!」

「すてーたす?どうやって見るんだ?」

「「…。」」


 なんだ?2人ともそんなに静かにして、信じられない様なものを見る目を俺に向けているんだ?


 急に黙り込んでいたが、まずレベックが先に口を開く…


「ご存じないと…逸脱したお方だ。」


 それに続いて銀髪さんが


「…簡単だよ。心の中で≪ステータス≫って念じるだけさ。子供でも知ってるはずなんだけどねぇ。キミ面白いね。」


 ぐぬぬ…馬鹿にされたのか?まあいいや、≪ステータス≫。



トライ【♂】



「おい、この表示はどうかと思うぞ!トライ♂って!」

「トライオス様、落ち着いてください。トライオス様!」

「んん~?そんなことより状態異常にはなってないのかい?」

「いたって健康だよっ!」










 その時、扉の向こう側の廊下では…


「新しい魔王様の名前はトライオス様らしいな。」

「前・魔王バグパス様よりはましであってほしいよな。」

「にしても、遺品は残しても死体は残らない方法で殺すとは新しい魔王も恐ろしいな…」


 聞き耳を立てながら、先ほどの兵たちが述べ合っていた。

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