森へ行くことになりました。
朝日が眩しい…。
あ、そうだったな。
城に帰ったらメイド長が
リーナの部屋でリーンと先生が寝てるから空いてる部屋をご利用くださいって言ってきたから…
『なら、星空を見ながら屋上で休むよ。』
って俺は毛布を受け取りながら言ったんだったな。
良く寝た良く寝た!
ん?動けん…
「くかー。くけー。ふひ、ひひっ…」
…俺はこの笑い方の主を知っているぞ!
「我もこれで女じゃ…ふふふ、ふひひ。」
…寝言ですら怖いこというな。
その姿じゃ流石に色々と問題がある。
満月の夜の姿なら、ミステリアスで魅力的な女性の姿なんだろうがなぁ。
「先生。朝ですよ~?おーい。」
「もういっかい…もう一回じゃ~!っは!?日がでとる!ぐあああ!あ?れ?あーそうじゃそうじゃ、トライが側におるから問題ないんじゃッた!くかー!」
「おい、二度寝をするな二度寝をっ!てか、俺の顔を確認してから寝ようとするのはいかがなものか…。それに、夜行性だろ先生。」
毛布の上から俺の胸元にお世話になっていた先生は仕方なさそうに起き上がり
「それがな、トライの魔力のおかげか調子が…」
「む?それは俺が側にいるからか?」
「じゃな。おぬしは回復力が優れているのじゃろう?最大値まで自然回復した後は、余剰分を無意識に拡散しているようなんじゃ。これは昨日リーンやリーナと話してみて辿り着いた答えじゃ。」
…。ナニソレ、無意識にばら撒いてるとか。
ん?あー、だから回復したというか疲れ気味だったムーちゃんやアコーが調子がよくなったと言ってたわけか。先生もだけど…
「心当たりがあるじゃろう?」
「ある。」
俺の返事にうんうんと頷く。
なぜか誇らしげだ。
すると、どこからか、いや、コレは下からだな…
『だからーこのアンズ!タケ様に呼ばれたのですぞ!招待されたのですぞおおお!だから退け、雑兵よ!』
ちょ、雑兵とか…
『ですから、ね?お嬢ちゃん。タケ様じゃわから無いんだよ。詳しく、ね?』
確かにタケ様じゃ分からんわな。
皆、回復魔王トライオスとして把握しているはずだからな。
「あー、先生。知り合いが困ってるようだ。」
「なんじゃと?あの女子の声は知り合いか!ええい!我が先じゃからな!」
「…。いや、何が先か分からないんですけど?今回の会議に参加してもらおうと呼んだんですよ?」
「は?あ、あー、そうかそうか。なら、説明しに下りるがよい。我はオトナじゃからな、余裕をもって接してやらねばな…」
全然無理そうですよ!
先生が退いたので毛布をどかし、屋上から…跳ぶ。
なれたものだな。
昨日の会議室の窓から跳んでみて着地に余裕があったから躊躇いも無く跳んでしまった。
位置を調整して、クリスタさんの側に着地する。
「っ!?へ、陛下っ!ど、どどどこからおいでに?今のどう見ても着地ですよね?」
城門の見張りが驚く。
いや、驚かないほうがおかしいか…
「屋上だよ。」
「…。陛下に訊いた私が愚かでした。」
城の屋上、ヴィオリラ先生が手を振っているのでふりかえす。
「タケさま。おはようございます。」
「おはよう。クリスタさん。」
お元気そうで何より。
今日は明るめのローブだな。
会議だからと少しおめかししたのかな?
「おとなしめな色もいいですが、明るいのもその美しい紫髪にお似合いですよ。」
「っ!う、うれしいでしゅううぅ~。(タケさまったら、んっもう♪)」
「タケ様!アンズもっアンズもっ!クリスタんみたいに~!」
「アンズも似合ってるよ。」
「むふふ~♪」
そんなやり取りを見ながら兵は
「…タケ様って、陛下の事でしたか。なら、陛下のご友人だとおっしゃってくれれば良かったのに。二人そろってタケ様に呼ばれたじゃ、誰が呼んだかわかりませんでしたよ。こほんっ。では、私は配置に戻りますね。」
これは申し訳ないことをしたな。
「申し訳ない事をした。詫びるよ。」
「は~、ホントすぐに謝りますよね陛下?もうちょっとドシンと構えていいのでは?」
そういわれてもコレばっかりは変わらないだろうなぁ。
兵と一二言話すと、俺達は城の中へとはいった。
二人とも朝食がまだだったので食堂へと案内し、そこに先生が合流してみんなで朝食を食べた。
城のほうにもお肉が届いていたらしく、バジリスクのお肉が少しだけだがスープに入っていた。
パンを浸して食べる食べる…
クリスタさんが物足りなさそうだったので、俺はパンを半分譲った。
朝から良く食べますなぁ。
朝食の後、中庭に顔を出す。
「あらあら、陛下。今日の会議はバスさんいますからね?『流石に2日連続の欠席は不味い!』ですって。うっふふ…元気なら、今晩も…ふふっ♪」
仲がよろしいようで。
腰痛が酷いようならヒール使うつもりだったが大丈夫そうだな。
次に、リーナの部屋…
「あら、陛下。リーナ様ならもう既に会議室のほうへと行きましたよ?『タケル~!!!』って言いながら走っていきましたけど。」
台車を押しながら歩いてきたメイド長にそう言われてしまった。
あちゃ~。てか、早いな。
これだと皆会議室にいるのかね?
ヴィオリラ先生を先頭に会議室へと急ぐ。
途中マルノトさんに挨拶し、目的の部屋へと辿り着く。
扉を開けると…
「タケル。いや、魔王陛下。おはよう!」
キラキラしてる!
ギータ(イケメン)がお出迎えしてくれた。
そこはリーナが良かったな。
まあ、そのリーナはすでに席に座っている。
「陛下ちゃん。もう決まったんだけど…森に行ってもらえないかしら?」
唐突ですな。
「いや、な。セイヨウ王子の話と新しく来た商人キャラバンの話、森に採取に行った冒険者の話等で毒グモの魔物?が大量に発生してるらしいのだが、調査するにも解毒薬が多量に必要になるし、女性が毒に侵された場合は痣のようなものが出るのだよ。」
「それを陛下ちゃんなら治せると聞いたし、陛下ちゃん自身が毒が全く効かないから、ね?」
おおう、今日の会議で森へ行きたい!って言うつもりだったが、どうやら、森へ行ってほしいらしいな。
さてと、そうなると準備しなくちゃな…