綺麗な部屋
花嫁修行発言の後は言葉が皆出ない。
まさかみんないっせいに咽るとは思わなかった。
大皿につがれた炒め物はいつの間にか空。食が進む味付けだったもんなぁ。
ワイバーンのステーキに関しては塩を軽く振ってあるだけだったが、赤身でミディアムといった所、柔らかく、余計なものがいらない味だった。
レベックの食の進みようも頷けれる美味しさだった。
「ごちそうさま。」
「「「「ごちそうさまです。」」」」
久しぶりにガッつり食べた気がする。
満足だ。
「陛下。この後はどうなさいます?やはり城に戻られるのですか?」
食器を洗い場まで持って行ったと思ったらすぐに帰ってきて俺に聞いてくるシディ
皿洗いは…
ほほう?魔法か何かか…
まるで食器洗い機だな…
水でできた球体に皿が浮かんでいる。
そして、見る見るうちに油汚れが綺麗に!
どうです奥さん!一家に一台!
安いよぅー!安いよぉー!今ならセールな大特価だぁよ~!
「あの~陛下?」
ちょ、上目遣いとかカワイイじゃないか!
「あ、ああ…満たされていたから少し気が緩んでいたようだ。」
「んっふふ♪満足していただけて嬉しいです。」
「美味しかったよ。ありがとうシディ。それでだが、俺は城に戻る。レベックは休みをもらってるとして…クリスタさんとアンズはどうするんだ?」
いやーすごいよな、レベックの次に大飯食らいだったクリスタさん…。
背丈と見た目では分からんものだな。
シディとアンズが普通くらい、で、俺が一番少ないと…
いや、まあ、ご飯があったからな…十分腹がふくれたんだよ。
「私は借りている家がありますので。アンズさんは将軍様の邸には?」
「む。アンズはタケ様と…」
俺のほうをちらちらと見られてもなぁ、俺の部屋ってまだ無いんだよな。
リーナの部屋に泊まらせて、俺が空いてる部屋で寝るか。
もしくは、屋上で布でも下に敷いて空を見ながらでも寝るとするか…
あ、それいいな。星空は綺麗そうだし。
雨は降りそうにないと思うし。
「アンズ様はご来客でも、王城には急には厳しいかと…」
レベックが指摘する。
「むむむ。タケ様とこのアンズを引き裂くつもりですなっ!」
「まあまあ、落ち着いてアンズさん。それなら私の家にお世話になりましょう?色々とお話がしたいわ。」
「むぬぅ。確かに、クリスタんとは色々とお話がしたい。でも、タケ様ぁ~」
すがりつくような眼差し…
それに対し俺は
「今夜はクリスタさんのところにお世話になってくれないかい?俺も王になりたてでな、把握してないことが多いんだ。あ、でも、明日の朝は王城に招待というか、王城に来てくれないか?二人とも。」
「むやっ!?うう、一晩の辛抱ですな。明日の朝には会えるなら…」
「え!?私が王城にですか?」
会議に出席してもらおう。
アンズからは森についてのこととか聞いておきたい。
斥候らしいからね。
良い意見も聞けるだろう。
クリスタさんに関しては俺の付き添いを頼みたい。
その知識を生かしてもらいたいのだよ!
「明日の会議に参加してもらいたいと思ってな。」
「私が参加しても良いのですか?」
「ぜひ。」
「…はい。」
了解を得た!
「レベックも今日は早めに休んどくように。あ、ちなみに…大丈夫か?痛くないか?」
「え?あ、は、はいっ!獣人の血が流れる自分、丈夫なんで…。」
「「「じー。」」」
「な、なっ!?シディまでなんで睨むの!」
俺に心配されたのが羨ましいのか?
「よく言うよ、ぼくに着替え手伝いさせといて…。」
「うぐ…。」
あからさまに視線を弟から逸らす姉。
俺に見てもらいたいがために着替えてくれたらしい。
その手伝いをさせられたから機嫌が悪いのか。
「なら、階段を登るのは大変だな…俺が抱っこしてあげようか?」
「なななななななな…」
おお~新鮮な反応だ!
今までの女性陣は俺に強要してくる子達がほとんどだったからなぁ。
俺のほうからこんなことを言うとは思わなかったのだろう。
痛い理由は俺と、まあ、激しかったからなぁ。
何回戦したことやら…
リーナがあの様子だったのに、レベックは即座に二回戦を所望したからな。
確かに獣人の血とやらは凄いのかも。
「あ、ずるーい!ぼくも!ぼくも!陛下の優しさに包まれたい!」
さて、このようなことを言い出す男の子が隣に座っている。
俺は、もちろん…
「そう、だな。食事を振舞ってくれたシディにはお礼をしないとな。」
「えへ、えへへへ~♪」
そう言いながら立ち上がると椅子を戻し、片膝を床につけ…うおうっ!?
同じく立ち上がったシディに抱きつかれたのだが、フニフニで柔らかい。
その柔肌を堪能したいと思ってしまったが、シディを軽々とすくい上げると部屋へと運んだ。
感想。
姉同様、整理整頓がされた綺麗な部屋だった。
テーブルの上には花瓶ときれいな花が飾ってあるという…この子達は素晴らしいな!
友達や知り合いにもこれほどまともなのはいなかった。
親に叱られても一切片付けようとしなかったやつもいたなぁ。
足の踏み場が無いようなやつもいたし…
どうやって生活してるの?寝床は?と思うやつもいた。
「綺麗な部屋だな…。」
「癖ですよ。掃除するのも日課みたいなものです。」
眩しい!この子、眩しすぎる!
さあ、君たちも見習いたまえ!
「ああ、今日の出来事は生涯忘れないとぼくは思います♪」
大げさだなぁ。
その後、顔が真っ赤なレベックを部屋へと運びおわると…
「ただいまへいかくん。子ども達は?」
「今運びました。」
「…。荷物みたいな言い方だな、でだ、夕食はそのようすからすると…」
サントラさんとレコウードさんが居間にいた。
「シディが振舞ってくれました。お二人の分はとってあるそうです。」
「気が利くわねあの子。」
「そう、だな。サントラ、食べるか?」
「ええ、軽く広場で食べたけど…アナタの手料理が食べたいわ~♪」
「いつでも食べれてるだろうに…」
「ふふっいいじゃない♪」
回りを気にせず、イチャイチャし始める二人。
「あ、あのー失礼しますね?」
「ああ、そうしてくれ。今度は店のメニューを振舞うよ。」
「おやすみ、へいかくん♪」
俺達はそそくさとその場を後にした。
そして、今はクリスタさんの住んでいる家の前…
少し建物の劣化が気になるな。
平屋で簡素。
借りてるとの話だったから、いつの日かは出て行くのかね。
「これでも昔から住んでいるのです。不便なことは無いですからね?」
俺の表情が不味かったか?
「むむ、大丈夫。昔、アンズはもっとヒドイ所住んでたから、これほどまともな建物には感激ですぞ!」
満足げに頷くアンズ。
彼女にも幼少期に何かしらの事があったのだろう。
機会があれば、話してくれるかね。
建物へと入って行く二人に手を振り、明日の朝にと再度言い、俺は王城へと一人、帰った。