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思考が筋肉に

 短パンに上はロンティーを腕まくり、そして、ピンクのリボンが尻尾につけてあり、リボンと同色のエプロン。フリルが愛らしい。


 そんな愛らしい子がキッチンで今、調理をしている。


 見事な包丁さばき。


 両親が食事処を営んでいるから昔から手伝っていたのだろう。


 全くと言って危なげが無い。


 とてもか細い腕、きめ細かな指、爪もちゃんと切りそろえられており、清潔感がある。


『ふんふんふふ~ふ~ふ~♪』


 機嫌がよいのだろう、鼻歌なんて歌っているようだ。


 俺はその背を、椅子に座り微笑みながら見ていた。






「なあ、ふと思ったのだが…レベックは料理できるのか?」


 弟君が見事に料理してくれているんだ。


 おにぎりだってにぎれるのは知ってるしなぁ。


 それに比べて、姉のレベックは大食いとの情報しかない。


「ふぇ!?あ、はい。まあ、シディほど手際はよくはありませんが、自分もできますよ?」


 どうやらズボンばかりだったからワンピースでは落ち着かないようだ。


 俺が声をかけるまで何かとそわそわしていた。


 サントラさんのお古らしいが、十分に美しい。


「ぐむむ…。タケ様はやはり料理ができる相手がよいのですかな?」

「なら、私は…あー、調合ならできるのですがダメですか?」


 俺の右隣にアンズ、テーブルを挟んで俺の前がレベック、その右にクリスタさんが座っている。


 調合ね。


 回復薬を作れることがどれほどなのかはわからないが、仕事としている以上、凄いのかね?


 後、植物に詳しいとか…


 となると、森についてもさまざまな手助けになってくれる気がする。


 アンズさんが森でクモの毒にやられたとセイから聞いているから、毒の効かないであろう俺が見に行くのがベストだ。


 そこに植物に詳しいサポートがつけば鬼に金棒!


 明日の会議とやらでこの案を出そう!


 そう。森へ行こう!


「得手不得手はあるもの。アンズとクリスタさんが料理が苦手だったとしてもだな、ほかでカバーできれば何も問題あるまい。俺としては、料理は俺も少しくらいならできる。と、だけ言っておくよ。」


 安心したとばかりに安堵のため息をつく二人。


 もちろん、料理ができないらしい二人だ。


「陛下は料理なされるのですね?陛下の手料理…エプロンすが…あ、この想像はよしましょう。」


 どんな想像してたんですかね!顔真っ赤ですよクリスタさん?


「クリスタんは、タケ様のことは陛下なんだな?もっと違う言い方ない?アンズとしてはこうなんかもやもや~とするのだ!ライバルが好いた男の名も言わぬというのは…。」


 クリスタん…聞き間違えじゃ無かったんだな。


 それも、いつの間にかライバルなのか。


「アンズさん。そういわれましても、ね。私、昨日の朝初めて広場でそのお姿を見、回復魔法の美しき輝きに涙を流しただけの民に過ぎませんでしたから。今こうしてお側にいられるだけでも幸せですよ?」


 それを言ったらアンズなんて今日のお昼に会ったばかりなんだがな、意識を取り戻してからは猛アタック気味なのだよ。


 恩人だからって感じではないんだよなぁ。


 野生の感かなにかに近いのかな?


「むー。なら、このアンズと同じでタケ様と呼ぶのが…」

「なあ、そこは呼びたいように呼ばせてあげるべきではないのかね?まあ、変なあだ名じゃなければ俺はいいのだがね。」

「え?私の呼びたい…。(ステキな筋肉、マジエロイ!)はっ!?だめよ…。思考が筋肉にいってしまう!ごめんなさい。私じゃ筋肉にしか辿り着かない。アンズさんの言うとおり、『タケさま』でイイと思うわ。」


 思考が筋肉に…うん。上着が必要だな!割と切実に!


 様付けで呼ばれるのにも慣れてきている俺は何様なんだろうな…。


<魔王様なのでは?>


 まあ、確かにそうだけど。




























 木でできた大皿にはキャベツのような野菜とバジリスクの肉を炒めたものがつがれており、それとは別に小皿で一人ひとりにワイバーンのステーキが…


 短時間で見事だな。


「どちらのお肉もかーちゃんととーちゃんの分を残しているので少し物足りないと思うかもしれませんが、ご飯がありますので、そちらでお腹を満たしてください。」


 何かスパイスでも使っているのだろうか、いい匂いだ。


 食欲を刺激する!


「ありがとう。シディ君。では、席に…」

「はい♪」


 俺の言葉に嬉しそうに返事をし、椅子を移動させると俺の左側に腰を下ろした。


「では、いただきます。」

「「「いただきます。」」」


 頂きますの掛け声ってあるんだな。


 もしかしたら、昔の人々がこの習慣を身につけさせたのかもしれないな。


「むむむ。シンフォニアでも『いただきます』がはやっとるのですな!」

「そうでもないわよアンズさん。このお店、いえ、サントラさんの育った村では普通らしいの。この『お米』も、ね?」


 へえ、サントラさんがこの国に持ち込んだも同然なわけか。


 そのご息女は一心不乱にかきこんでいる。白米を…


 いやー凄いね。確かに食費がかかりそうだ。


 ステーキ肉一切れに対しご飯茶碗一杯位の量の白米が消える。


 それに比べてお淑やかに少量ずついただくシディ。


 クリスタさんのほうが行儀が悪いぞ!


 さぞや美味しいのだろう。


 口いっぱいに美味しそうにほお張る姿は癒される。


「陛下は召しあがらないのですか?先ほどから嬉しそうにはしておりますが、食が進んでいない気が、あ、もしや…お口に合いませんでしたか?」


 そんな心配そうにしなくても…


 ちょっと泣きそうになってるぞ!シディ!


 こ、これはいかん!


 即座に大皿から野菜炒めをとるとがつがつと食う!


 うまい!


 すげーうまい!


「おいしいよ。シディ。これならステキなお嫁…あ、ち違う!この場合は何ていうべきなんだ!」


 お決まりの台詞を言って、後悔した。


 男の子にお嫁だなんて…


「ぼくなんてまだまだですよ。こうやってお出しできるのは簡単に炒めたり、焼いたりしたものばかりですから。とーちゃんみたいな凄腕料理人には…」


 どうやらおいしいの言葉にだけ反応してくれたらしい。


 レコウードさんが日常的に料理をしているから男が料理、となっても普通なのだろう。


 それどころか、まだまだ向上心を持っているようだ。


「今度はもっと手の込んだ料理をお出しできるように…花嫁修業しておきます。」


 …え、あれ?


 真顔で花嫁修業とか言ったよこの子!





 シディのその発言に女性陣が咽た。


 


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