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魔王死す

「あの~店員さん。」

「はい?」


 最近良く見かける子だな…そう思いながら商品を棚に並べる手を止めて返事をする。


 俺、渡来(トライ)タケルはフリータ歴3年目に入ったコンビニ店員である。高校卒業してすぐに就職したのだが、入社して3ヶ月でその会社は倒産してしまった。


 そこからニートな日々を一月ほど続けたのだが叔母から怒られてしまい、求人誌を漁っているうちに今勤めているコンビニにアルバイトとして入った。


 「専門学校にでも行け!」とも言われたが、今更勉強する気になれない。


 両親は高校一年の夏、俺を置いて旅行に出かけてそのまま…帰ってこなかった。その後家に一人残された俺のところに叔母が暮らすようになり生活を共にした。


 世話になりっぱなしじゃいけないと思い高卒後就職したが数ヶ月で躓く形となった。だが、コンビニ店員は今の所続けられている。


 このままな日々を過ごすのかな~と最近は不安も確かにある。他に当てが在る訳でもないのでどうしようもないけどな。


「なんでしょうか?」

「『名士チョコ・やきいも味』という商品なんですけど、置いてありませんか?新発売だったと思うのですが…」


 ん?その商品は確か今並べている菓子類の下から二段目のダンボールの中にあったな…

 名士製菓のチョコはユニークな味を期間限定でよく出すよな。


「その商品ですね、今から並べるところだったんですよ。少々お待ちください。」


 そう言いながら一番上と二段目のダンボールを持ち上げ横に置く。そして、下から二段目になっていた箱の中から商品を取り出す。


 それにしても、この子も甘いものが好きだよな。このコンビニ来たときはパックのコーヒー牛乳とチョコレート製品をセットで必ずといっていいほど買って帰る。


 なぜ詳しいかって?俺がレジしてる所に来るからだよ。決して他意は無い…いや、カワイイんだけどね。メガネ女子で高校の制服に両サイドのおさげが似合う。髪を結ぶ髪ゴム、今日は青のようだな。


「ありましたよ。この商品で間違いないですか?」

「はい。ありがとうございます!」


 おお、とても嬉しかったようだな…素敵な笑顔だ。


「いえいえ、いつもこのコンビニをご利用いただきありがとうございます。」

「あっ、えっと、それは…先輩が…」


 おや?声が小さくてよく聞き取れなかった「それは…」なんだったのだろう。




 その時、店の外が急に騒がしくなった。車のクラクションが複数鳴り響き…


       ゴオオオオォ~~~  ガシャンッ!!!!


 は?大型トラックがコンビニに突っ込んできやがった!このままでは…


 隣りの女の子も唖然としていた。悲鳴を上げるまもなく、まさに商品棚と共に押しつぶされそうになった時、足元が光った気がして…


 そのまま意識を手放した。















「グエッグエッ~、成功だ!人間国の勇者召喚術式の横取りに成功したぞ!これで、ワシの駒が手に入ったワイ。何人たりともワシに逆らうことはできぬ。」


 なんだ?くぐもった声が聞こえてくる…俺は、何があったんだっけ…


 あ、そうだよ。大型トラックがコンビニに突っ込んだんだ!そしたら…足元が光ったんだよな。ありゃ一体なんだったんだ。


 それにしてもここはどこだ?薄暗い室内で、足元には魔法陣が描かれている。そう、魔法陣だ。赤く光っているのがなんとも生々しく感じる。


「ん?なんじゃ…コヤツ。勇者召喚で呼ばれた魂をこの魔法陣に固定し、ワシが隷属の術式を今から背に描ければ覚醒する筈なのじゃが…既に意識があるような気が…」


 は?俺の腰の高さほどの背丈を持つカエルが喋っているんだが。それも二足歩行で、右手には杖だろうか…なかなか立派な彫刻入りだ。高そうだな~


 俺が杖に感心していると…


「ば、ばかな!これではワシの隷属魔法がレジストされる可能性が…ええいっ!こうなったら気絶しといてもらおうかっ!」


 隷属?レジスト?なんだそれ…魔法って言っていたような気もするんだが。そう思っていると、カエルは杖を頭上に掲げ何かを唱えた。


「ショック!」


 杖の先端が輝き、こぶし大の大きさの黄色い光の玉が俺の腹辺りに向かって飛んでくる…


 いてっ!ピリッとしたぞ。今のは、静電気かなにかか?


<状態異常耐性を手に入れた。>


 状態異常耐性?何のことだ。それにこの女性の声は何だ?


「なんじゃとっ!こうなったら…スタン!…もダメか。…なら、ショックショット!」


 次に灰色っぽい光の玉、少しズシリと身体に荷が乗ったような感覚…


<状態異常耐性が上がった。>


 今度は、バレーボールほどの大きさの黄色い光の玉がががが…ビリビリするぜ。


 そしてとてもイライラするぜ!


<状態異常耐性が上がった。>

<状態異常耐性が上がった。>

<状態異常耐性が上がった。>

<状態異常耐性がMAXになりました。>


 俺は右の拳を握り。カエルにむかって歩き出した。その時足元でパリンという音がした。


「ショットでもダメなのか…バ、バケモノめ!なんじゃと!固定するための魔法陣すら壊しおった…ひ、ひいいいぃ~!!!く、くるなあぁ~ワシを誰じゃと思っている。止まれ!止まれ~ぃ!し、シールド!」


 カエルの前に薄いガラスの壁のようなものが…


 だがそんなことはどうだっていい!


「しるかああああ!さっきからビリビリ攻撃してきやがって!このカエル野郎おおお~!!!」


 俺は叫びながら、拳を振るった。


 パッキーンという音がしてガラスのような壁が砕け散り、カエルは驚愕し…俺の拳によって顔を物理的に歪めた。そのまま勢い良く壁にぶつかり…


<スキル・【シールドブレイク】を覚えた!>


 その時、後方で扉がギイィと開く音と何かが投げ込まれたのかカランと音がして…


「魔王!覚悟!」


 という若い女性の声と…


「グゲェ!」


 カエルの潰れたような声が室内に響いた…


<レベルがアップしました。>

<最大HPが上がった。>

<最大MPが上がった。>

<攻撃力は上がりませんでした。>

<防御力が上がった。>

<素早さが上がった。>




 

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