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第23話(記憶の断片)


 この世に四神獣蘇るとき 千年に一度 救世主 ここに来たれり

 光の中より出で来て 七人の精霊の力 使ひて これを封印す

 七人の精霊の力とは 転生されし七神鏡

 これを集め 救世主 光へと導かれたり

 満たされし四神獣は また千年の眠りにつく




「ふ……わあああ」


 大あくびをしながら制服に着替える。そして黒のハイソックスを履いて、カバンを持って自分の部屋を後にする。トタトタと軽やかに階段を下りて一階へ行くと、やはり いつも通り。店の厨房で いい匂いをさせている我が兄。いい匂い……香ばしい、ラーメンの香り!

「おはよう勇気。調子は どうだ?」

と、明るく微笑みかける兄。手には お玉を持って、スープの入った大鍋の端を叩いている。

「この、通り!」

 私はガッツポーズをして、兄の前のカウンターに座った。兄は手際よく、どんぶりにラーメンの麺と具を盛り付け、スープをたっぷりと かけて箸と共に私の前に置いた。

 朝からラーメン! これが私の日課!

「あ、甘い……」

 ゴホゴホと むせながら変な顔をした。

「ん? そりゃそうだろ。勇気が居ない間に研究し開発した、“特製! 勇ちゃんラーメン・パート2”だ! 見た目は普通のラーメン。しかし その実体は……」

「ん?」

 私は奇妙な物を箸で つついた。つまんで出してみると、それは……。

「まさか……チョコレート?」

 箸に つままれた茶黒い固体物の向こうで、兄がニッカリと笑った。

「あたり! 超激甘! チョコたっっぷりラーメン」

「…………ごちそうさま。私、もう行かないと」

と、箸をどんぶりの上に揃えて置きカバンを持った。水で口の中をすすぐ。

「行ってらっしゃい。気をつけてな」

と手を振った。

 そう。私は これから、学校に行くんだ。

「行ってきます!」

 手を振り返し、勢いよく引き戸を開けた。


 パアア……と、朝の光が眩しい。

 ……と、思ったらだ。


「松波勇気さんですね!?」

「これから学校ですか!?」

「一体一ヶ月も何をしていたんですか!? 教えて下さいよ!」

「久々の登校はどうですか!?」


 ……。

 ……という、言葉が ぶつかってきた。

 呆気に とられて見ると、私を取り囲むかのようにマイクだのカメラだのを持った取材陣が押しかけて来たのだ。さっきの朝の光だと思ったのは、カメラのフラッシュだった。

「す、すみませぇん。通して下さい……」

と、人混みかき分け、前へ進んで行く。

 ワイワイガヤガヤ……訳の わからない所に居るようだった。一体何で……。


 それも そうか。

 だって私、一ヶ月近くも行方不明だったんだもの。その間、兄は必死に私を捜していた。もちろん警察にも届けて、店も休みがちで。店の前や中に私の写真付きのポスターを作りデカデカと貼って。“この子を見かけたら すぐに連絡を”って これまた大きく書いて。

 色々と、やってくれていたみたいだ。そこまでして本当に心配してくれていた。

 それで、一週間くらい前。私はヒョッコリ現れた……というわけで。一ヶ月近くも行方知れずの少女が見つかった……と地元のメディアやマスコミが聞きつけたのか他にネタが ないのか。大騒ぎに なっている。

「勇気さーん! 何か一言ーっ!」

「コメント下さいよーっ!」

 せっかくの さわやかな朝も台なし。私は取材陣に追いかけられる。

 でも、子供の足には敵わないさ! チャッチャと まいてしまった。

「はー……これから毎日これかなぁ……?」

 まいた後。塀に手をつき ため息一つ。

 学校に行くのって、疲れるう……。

「でも、ま、そのうち飽きて どっか行っちゃうわよね」

と、元気を出して歩き出した。

 発見されて今日までの約一週間。私は病院へ通った。なんせ、一ヶ月近くの記憶が ないもんだから。精密検査やら心理テストやら、何でも やった。

 ところが何も わからず。私の空白の時間は謎のままになってしまった。

 で、しばらく安静に していた後。やっと日常に戻れたわけ。

 日常、のはずが さっきみたいな報道陣に囲まれたりしちゃうと まだまだ本当の日常までには ほど遠いような気がするけれどね。


 ……そういえば。私、大事な事が抜けていた。

 学校に行くという事は……教室に入る事だ。教室には、皆が居る。

 皆……私を罠に はめ込んだ お嬢、結果的に被害者に なってしまった新島さん、私から離れて行ったアッコ、私を無視し始めたクラスの皆……。

 私は“イジメ”に遭っていた事。

 何で こんな事をすっかり今まで忘れていたんだろうね? 普通、こんな事 忘れっこない。やっぱり私ってバカなのかも。

 教室の前で足が止まる。中からはワイワイと声が騒がしく聞こえる。今、8時30分。ほとんどの人が もう来ている時間帯だ。今、ココで私が このドアを開けたら、いっせいに皆こっちを見るだろう。

 そうしたら……どうなるだろう? 前みたいに無視されるのかな。それとも指さされて笑われたりするのかな? それか……集団で私を責め立てて攻撃するんだろうか。もっと最悪なら、暴力 振るわれたりして。


 怖い……ドアを開ける事が、こんなに怖いだなんて。

 ガラッと勢いよく開けて「おはよう!」って言えば済む事。なのに、なのに……。


 ……だめだ。足が震えてきた。手も冷たいし、顔も蒼白なんだろうな。今、呼吸しているんだっけ? それすら わからない状態だ。

 どうしよう……怖いよ……。

 嫌な汗が浮かんでいる。手で拭っても浮き出てくる。

 ああ、こんな所に いつまで居たって仕方ないのに。誰か……。


 誰か、助けて!


 ……


 ……


 フワッ



 ……?


 廊下の開けられた窓から青空をすくうような暖かい一吹きの風が、私に向かって吹き抜けた。

 その風は……とっても優しくて……。

「……」

 私は包み込まれた感覚がした。

「あ……」

 奇妙だった。

 普通の、いつも肌で感じていた春風なのに。どうして こんなに今日は敏感なんだろうか。こんなに、風を暖かいと感じるなんて。こんなに、透き通った気持ちに なるだなんて。


 深呼吸、一つ。


 不思議だ……まるで、さっきの風が私の悩みや不安を全部かき消してくれたようだ。こんなに落ち着いて、冷静に なれるなんて。

 私は、いっせーの、せ! という心の掛け声と共に。ガラッとドアを開けた。そして同時に、予鈴のチャイムが鳴り響いた。

 教室中 全員が いっせいに、こっちに注目していた。それこそ無言の対話でも しているかのように しばらくお互いが黙り合って見つめている。

 しかし私には目を逸らしたりするような迷いなんて なかった。


 予鈴のチャイムが鳴り終わったと同時に誰かが「松波だ」と漏らした。そして堰をきったかのように、皆がワッ! と騒いだ。

 私は びっくりして転びそうになる。

 もう無視でも暴力でも何でも なかった。

 皆が私の元に駆け寄り、「勇気ィ」「何処行ってたのよぉ!」「心配してたんだから!」と口々に言い合った。

 私がポカンとしていると、いきなり私の頭をグチャグチャと掻き混ぜたのは……アッコだった。そして笑い泣きながら「おかえりなさい」と言った。

 クシャクシャになった髪を直す事さえ忘れるほどボケっとしていた私。すると前に いつもと変わらないド派手な容姿の、お嬢が立ちはだかった。


 気のせいか、皆が静まる。

 そして、私と お嬢は睨み合うように見つめ合った。いや、睨まれたような気がしたから睨み返すように見た、といったトコだ。

 その様子を見た少女……が、私と お嬢の間に入り込んで来た。その少女とは……何と、あの か弱い新島さん。素直で、おとなしいはずの女の子。あの、イジメの原因ともなった手紙を読んでシクシクと泣いていた子。

 その子が今、お嬢を強く責め立てるかのように立ち、真っ直ぐに睨み返している。


「峰山さん。松波さんに言う事があるでしょ」


 彼女の口は そう はっきりと言った。私はと いえば、まだポカンとしているばかり。


「……ごめんなさい」


 お嬢は、今にも泣きそうな顔をして小さく言った。でも しばらく間を置いて「ごめんなさい!」と深く頭を下げて、感情を込めた声でハッキリと強く言った。

 私の思考回路が ようやく正常に戻って来たようで、髪を整えた。

「……一体、私の居ない間に何が あったの?」

とそう聞くと、新島さんが ゆっくりと説明してくれた。


「松波さんが行方不明だって知って、私はアッコちゃんと松波さんの家に行ったの。そして そこで松波さんの家庭の事情を知って。私達2人、考えたの。松波さんが あんな手紙を本当に書くのかどうか……」

 実際の所、私が書いたわけじゃない。私が書いた事に“された”だけ。

 お嬢の策略だ。

「だって、おかしいわよね。普通あんな手紙を堂々と手渡しなんかするものなんだろうか……下駄箱でもソッと入れておけばいいじゃない。ねえ?」

 視線を振られた先のアッコは、コクンと頷いた。

 私の方へ向き直して、新島さんは話を続ける。

「で、不思議に思って、皆で話し合って。誰かが、『松波さんがあの時、峰山さんがコレ書いたんでしょって言ってた』って言い出して。結局、峰山さんに問いただして峰山さんが書いた事が判明したの。筆跡も似ていたし……それで。私達、先生に今まで あった事を全部話して、反省会を開いたの。いまだ行方知らずの松波さんについて、私達が やってしまった事について……作文だって書く事に なって」

 何と、新島さんの目の端に涙が溜まっていた。

「ごめんなさい。私、悪い事をして。すごく辛かったでしょ? ごめんね……」

 そして、泣き出した……。

 それから皆も、次々と「ごめんね」「ごめん、勇気」と言い出した。


 ……。

 私も、たまらなくなって涙が出てきていた。

 何だか、今まで堪えてきたものが急にワッと。胸の内から水が溢れてくるみたいに押し寄せてきた。

 もう、泣くしかない。


 すると また。今度は教室の窓から、暖かさを持った風が吹いた。


“良かったな。勇気”


 ……?


 風の声が、聞こえた気がした。



 こうして私は無事イジメから解放され、普通の学校生活を送れるようになった。まだ取材で追っかけてくる人の姿もチラホラだったけれど、次第に彼らは居なくなり、消えていった。

 ああ、私、幸せなんだなー……。

 そう思うように なっていた。すべてが、上手くいっているように感じられた。

 でも……。

「勇気。いつも その指輪はめてるね。何処で買ったの?」

「え……ええと」

 教室の中休みの時間で友達に ふいに聞かれて、返答に詰まってしまった。

「さあ……何処で買ったんだっけな……」

と、手を広げてみせ、右手の中指に はめられていた指輪を見た。

 キレイな、神秘の色。薄い紫のも見えるし、光の具合による。

「キレイよねー。ちょっと貸してもらって つけていい?」

 友達が言い出して私の その指輪に触ろうとした。しかし私は何故か その時カッと感情的に なって、友達の手を勢いよくバシリと振り払ってしまった!

「!」

 驚く友達。私も すぐにハッとなって我に返った。

「ご、ごごごゴメン! 痛かった!?」

 慌てて謝った。友達は少しホッとして微かに笑って「いいよ、いいよ」と言ってくれた。

「こっちこそゴメン。指輪、大事なもんなのね」


(え……?)


 そう言われて。私は改めて指輪を見ながら考えてしまった。

「大事なもの……?」

 頭に引っかかる。指輪が……どうして私、こんなものをはめているんだろうか。


 すべてが日常で。別に何も ないというのに。何も……私を困らせる事も ないはずなのに。

 コレだけじゃない。もっと他にも、アレ? と思うような事が度々起こった。

 お兄ちゃんのラーメンを食べながら「アレ? こんな味だっけ?」と一瞬 戸惑う事がある。お兄ちゃんのラーメンの味には すっかり慣れきっているはずなのに。何で そんな事を思うんだろうか?

 街を歩いていると商店がヒッソリと たち並ぶ中で。出先で飾られたショウケースの中の日本刀だのを見て……気分が悪くなる。

 課外授業中に行った山の森で、デジャビュとも言える感覚と懐かしさが あった。

 帰り道では、子供が人形を持って走り回っているのを見ると自然に目が そこへ行ってしまう。子供が黒い服を着ているのも同じく。関心が何故か そっちに行ってしまうのだ。

 何かを思いだそうとするんだけれど……。


 よく、わからない。


 もっと よくわからない事は……風が吹く度に、胸を締めつけるような痛さが あるっていう事。私、ひょっとして病気なのかもしれないと思うようになってきた。

 今日も学校の渡り廊下を歩いている時、風がふいに流れ込んだ。勢い余って持っていたプリントを2・3枚 飛ばしてしまう。それを拾うために屈み込むと また その痛みが やってくる。

(何だろ……コレ)

 拾い終え、立ち上がって また歩き出す。

(私……何かを忘れている?)



 その勇気をジッと観察していた少女が2人居た。向かい側の校舎の屋上の手すりに座り、少し口元をニヤつかせながら。



 夜。

 店を閉めてしまっても、お兄ちゃんは まだ後片付けをしていた。私は お風呂から上がったばかりで、濡れた頭をタオルでゴシゴシと拭いていた……その時。電話が鳴った。

 ちょうど そばに居た私が電話に出る。

「はい。松波です」

『もしもし? 小谷ですけど……お兄さん、おられますでしょうか?』

 電話の相手はキレイな声の女の人だった。小谷なんて人、知らないけれど。だが私は声に聞き覚えがあった。そして、つい聞いてしまった。

「います……けど。あの、お兄ちゃんの……彼女さんですか?」

 後から考えたら、馬鹿な事を聞いたもんだと思う。きっと相手も そう思ったに違いない。だから、私が そう聞いた時に一瞬 黙ってしまったんだろうな。

 間は空いたけれど、少し経ってから返事をくれた。

『……そうよ。知っていたのね。そちらでバイトしている小谷です。変な言い方だけど……改めまして、よろしくね』

「あ……こちらこそ。妹の勇気です」

 緊張が走る。

 ああ、汗かいてきた。背中にも額にも受話器を握る手にも。また妙な間隔の間が空いたので、私は慌てて言いかけた。

「あ、あのっ。えと。お兄ちゃんに代わりますね!」

 用が あるのは私にでは ない。その事を思い出す事が出来て、声が ひっくり返りそうになった。だけれど。

『あ……ちょっと待ってくれる?』

「え?」

 呼び止められた受話器の向こうで、ガサガサと紙の擦れる音が した。そして紙の束をまさぐっているような気配と。何かを探しているのだろうか。やがて『あったあった』と声が返ってきた。

『あのね』

 小谷とかいう人の説明が始まる。私に合わせて わかりやすいように、ゆっくり落ち着いた声色で坦々と話し始めた。

 それは どうやら、学校の話。私の今後についての内容だった。


「学校……ですか? 港学園って……」

 名前くらいは聞いた事が ある所だ。今まで あまり興味は なかった。

『ええ。中等部と高等部が あって、寮があるの。市内だし、そんなに遠くは ないのだけど』

「……」

『どうかしら?』


 ……最初、何を言っているのかと思った。でも、段々と この人の魂胆が見えてきた。

 つまりは こういう事だろう。

 私に兄と別れて寮に入れ、と。そうしたら、この人は兄と一緒になって暮らせる。要するに私を追い出そうというわけだ。


(勝手な人……)


 悲しく思う。


「わかりました」

 わかってたまるもんですか。

「兄と相談してみますね」

 本当は そんな事したくない。

「それじゃどうも。さようなら」

 消えちゃえ。


 ガチャン。


 ……


 ……受話器を戻したまま、身は固まってしまった。髪の毛先から、ポタリポタリとしずくが落ちる。しばらく そうやって俯いていると、スッと そばに あって目に入ったスリッパの片方だけを手に取った。

 そして床に激しく叩きつける。


 バシッィィィ……!


 廊下中に響き渡った。静まる廊下……だけれど、私の心の中は穏やかでは なかった。まるで激しい波のようだ。

「何だ? 何の音だ? それと さっきの電話、誰から だったんだ?」

 店の方から 丈の長い のれんをくぐって、お兄ちゃんが やって来た。顔を見た途端、スッと波風は収まってくれた。

「ん、間違い電話ー。ねえ それよりさ。ちょっと散歩 行ってきていい?」

と言うが、兄は「もう遅いだろ、明日にしろ」と言って また店へ戻ってしまった。

「ちぇ……」

と頭を掻きながら。私は裏の勝手口から、気がつかれないようにコッソリと外へ出て行った。



 散歩……家の近くならいいよね。

 私は歩いた。とりあえず、あてもなく。気の向くままに。

 住宅が並ぶ道を抜け、遠くで犬に吠えられながらも道路に出て、歩道を歩く。


 はあ……気が滅入る。凹んでいる気分……さっきの電話のせいなんだけどさ。

 どうして人間って勝手なんだろ。あの お嬢だって、ちょっと自分が気に入らないからってだけで私や新島さんを(おとしい)れて。まあ、誤解も解けて晴れて堂々と学校へ行けるんだけれどさ。結果 良ければ全て良しって? ……本当に そうかなぁ。

「あ……」

 サッと、夜空を横一直線、一つの星が流れて行った。流れ星……本当に一瞬の事だった。

「願い事……」

 私の願い……望みって何なんだろ?

“幸せになりたい”……かなぁ? うーん、単純かつ漠然ね。


 そうやって色々と考えているうちに、近所の公園へ来てしまった。もう遅い時間帯だ。もちろん こんな時間には誰も おらずで、ヒッソリと公園内の空気ごと静かに眠っているようだった。

 無意識にブランコに手を伸ばしてみる。そういえば公園に来るなんて自体が久しぶりだった。

 両親が亡くなって以来、来る事は ほとんど なくなった。行きたいと自分から思う事も少なくなった。

 いや、なくなった、というべきかも しれないな。

「ふふ……ひっさしぶランコ♪」

 ブランコに座る。

 誰も聞いては いない。読者以外は。

 キーコ……キーコ……。

 昔に よく聞いたブランコの鎖の、きしむ音。勢いよく こげば こぐほど風が気持ちよかった。

 風……。

 風、か……。

 肌で感じるたび、胸が苦しくなる。最初、気のせいだと思っていた。でも、日が経つにつれて それは違う事に気がついていった。私は何か……そう、 何 か を忘れているの。

 きっと それは重大な事……一体、何だろう。うーん……。



 突然だった。


「どうやら全部、忘れてしまっているみたいね」



 ……!?


 空を見上げた。すると私の上に、空では なく黒い影が いつの間にか あった。

 滑り台の上に誰かが居る。

 私の上に……要するに、滑り台の上に居る何者かの影が月明かりのせいで細く長く伸び、私の頭上へと届いているのだ。

 さっきまでは なかった影が。

 しかも、人物は2人だ。月明かりの逆光で顔も姿も暗くハッキリと見えない、2人が。

 一体、こんな時間に誰?

「あ、あなた達は……」

 ブランコを止めて、私は立ち上がる。


 びっくりした顔で、この異様な状況の中に居た。




《第24話へ続く》





【あとがき】

 勇気の兄の名前は考えていない。どうしようか。“勇”が付くのは間違いないんだけれど。意表を突いた名前の方がいいだろうか。そもそも、地球人だろうかゴンザレスだろうか。“勇”は何処行った。


※ブログ第23話(挿絵入り)

 http://ayumanjyuu.blog116.fc2.com/blog-entry-70.html


 ありがとうございました。

 勇気がグレませんように。



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