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第18話(虐殺の街)


※シリアスあり、コメディー要素ありとなっていますが作品中、今後の経過により残酷な描写があるかもしれません。今回いきなり最初からあります(ぐはっ)。

 同意した上で お読みください。




「ふ……ついに見つけたぞ」

 不敵な笑みを浮かべ男は、その手に持つ刀の先をまだ幼き少女へと向ける。血の滴り落ちる、その刀を。

 少女は悲鳴を上げる。頭を抱え、そして、後ずさる。

 しかし後ろに転がっていた血だらけの黒い塊に つまずき、その場で転んでしまう。死んでいるのは一人だけではない……数十数百という死体が、そこら辺に転がっている。

 空中には黒い鳥が羽を飛ばし散らしながら舞っている。そして、腐った血肉を(むさ)ぼり、腹を満たすと あの真っ赤な血のような夕焼けに向かって真っ直ぐに去って行くのだ。

 少女の目には、目の前の男の不気味な顔色だけしか見えなかった。


 本当は、ついさっき この男にブスリと斬られたはずだった。なのに気がつくと、斬られたはずの胸の傷は きれいさっぱり なくなり、服にベットリとついた血の量から見ても、おかしいという事に気が ついた。

 絶対に自分は死んだはずだった。なのに、生きている……?

 そう思って黙って自分の両の手の平を交互に見ながら首を傾げていると、さっき自分を斬った男が前へと立ちふさがった。

 そして「見つけた」と言い出したのだ。

 整った顔立ち、怖いくらいに光る瞳、青い髪と、肩には少し不似合いの赤いマフラー。銀縁のメガネの両端から耳のピアスへと繋がっている、銀の鎖。青く全身を包み込むようなロングコート。

 そして手には、少し古めかしい刀。ボロボロの紙か包帯かが、柄に巻かれている。刃に付着している血は全て、この街の人々のものである。


「や……やめて。来ないで……」

と、震える声で訴えた。

 その男は急に少女の胸ぐらを掴み、グイと体を軽々と上へ持ち上げる。


「これが……これが四神鏡か……」


 目を煌々(こうこう)と光らせた……かに見えた。少女は最初、掴まれた男の手を引っ掻きむしり足を空でバタつかせ、抵抗を試みたが。微動だに できないとわかると……途端に手も足もブランと垂らし。涙さえも重力に逆らえず落ちていった。

 なすがままの状態。少女は幼いながらも、自分の死を覚悟した。

 自分も あの、黒い塊に なるのだ……と。


 ……


 男は、胸ぐらを掴んでいない方の手で少女の体内に手を えぐり入れた……ズブ、もしくはズボッ、という音と共に。気持ちの悪い音が断続的に響く。少女は手を入れられた瞬間、絶命した。

 男は体の中をさぐり、やがて ソ レ を取り出す。

 抜け殻となった少女の肉体は、ポイと捨てられた。


 ソレ、とは……。


 白い、卵のようなもの。大きさはテニスの軟球ほど。

 男が力をこめて握ると、その卵のような丸い物体はグチャリと割れた。中には、小さなガラス……いや、鏡のカケラが入っていた。

 それだけをかざしてみても、ただの鏡のカケラ。

「ふん……」

と、男はチラリと地に捨てられて転がった少女の姿を見る。

「入れ物は用なしだ……ふふ……ふふふふ……ハハハハハハ!」

 思い切り笑い飛ばした。


 ……その一部始終を見ていた若者の男が居た。元々体が丈夫なのが幸いし、さっき男に斬られても それが致命傷にならずに済んだようだ。

 とはいっても倒れており、立てない状態だったのだが。

 狂ったように笑う男の姿を見て、小さく(うめ)いた。


「畜生……!」


と……。


 そして、高らかに笑う男の元へ一人の女性が突然 何も ない所から現れた。

「レイ様。救世主達が今、こちらに向かっていますわ」

と報告し、レイの表情を(うかが)う。

「遅かったようだな。……なんてな。まあいい。四神鏡が一枚、見つかった。今日の俺は すこぶる気分が いい」

 手に持っていた鏡のカケラを、女性に渡す。

 それを受け取ると、呪符のような……経文の書かれた紙で巻かれた箱の中へコトリと入れた。

「この中に入れておけば、錆びる事なく保存できますわね。(わたくし)の術を使わずとも」

「ああ。その経は『魔道経』……特別なんだからな」

「ふふ。手間が かからず次へいけますわね。いい物を手に入れましたわ……それはそうとレイ様。如何いたします? この後は。この街の人どもは皆、お斬りになったようですけど。先ほど申しました通り、救世主が こちらに向かっていますけれど?」

 レイは冷ややかに言う。

「ふ。救世主か……来ればいい。もはや俺には、小ねずみどもの相手をしているヒマは ない」

「名ばかりの救世主ですものね。放っておいたらいいですわ」

「なあに。まだ利用価値は あるさ」


 会話をしながら、彼らは去っていった。

 空には黒鳥がまだ、うるさく楽しそうに踊っていた。



 ……



 摩利支天の塔をあとにし、私達は予定通りに進んだ。

 え? ……どうやって塔の最上階から出たんだって?

 そりゃあ、ちゃんと来た道を辿って出会った魔物とバトルしながら脱出した……


 ……はず、ない。

 実は、セナが この塔に入って来た時に言っていた方法で、塔から外へ出たんだ。

 つまり、最上階の壁をセナの風の技で ぶち壊し。その穴からマフィアの“草鞋(わらじ)”でエレベーターに乗ったみたいに降下し脱出したのだった。

 とんでもない事に、私達が脱出して数十歩 進んだ後。ガラガラと すさまじい音を立てて塔が崩れた。

 見る影も ない。

 塔を目印に森を進んでいたけれど。その目印は もはや なくなってしまった。

「ははは。面白い面白い」

と、カイトは楽しそうに笑っていたけれど……塔の中に居た魔物達は、悲惨だよなあ。


 ま、いっか。


 とりあえず私達は正しいルートで、タミダナの街へと向かう。

 ああそうだ……あの、森で迷った理由。ほら、私が勇み足で進んでいたけれど結局迷っちゃったーっていうやつ。実はアレ、蛍の罠。

 というより、蛍の奴ったら。紫苑に協力してもらって……んで、私達を森の中へ引き止めて自分はレイを裏切って逃げてきた風に偽って。そして私達の気が緩んだ隙に、一気にバッサリと やろうとしたみたい。寝込みを狙っていたんだって。

 でも私とセナが少し離れた所へ行っちゃって。二手に分かれてしまったでしょ。で、急きょ作戦変更。マフィア達を紫苑の協力のもと、さらっちゃったんだってさ。

 マフィア達は自分達が さらわれたって事、全然 気がつかなかったらしい。普通にスヤスヤと眠っていて、目が覚めたら知らない場所に居た、と。

 で、部屋の たった一つのドアは開かないし。ココは何処かも わからない。しばらくジッとしていて話し合っていたんだけれど、とりあえず あのドアをぶち破ろう、という事に なった。

 しかし いざそうしようとした時。いつの間にか鍵が外されている事に気が ついた。で、ドアを開けて、私達と鉢合わせした……と。そういう事らしい。

 その鍵を外したのは、紫苑。

 声しか聞かなかったけれど、少し年いった おじさんの落ち着き払った声だった。

 四師衆の一人らしいけれど……なーんか、それらしくないわよね。やっぱさ、(ひたき)とか さくらとか蛍とか。3人とも、意地悪っぽい性格だったからだろうけれど。

「紫苑は私に技を教えてくれて、紫を作る手伝いをしてくれたのよ」

と、蛍が言った。


 実は、蛍達と一緒に旅をする事になってしまったのだった。

 一応、説得じみた事を言った結果だった。なんっっか変な感じだけれど。段々と それは慣れてきた。

 体がボロボロだった紫は、何とか蛍の術やカイトの人形師としての技術で修復され、まだ包帯を巻かれていたりするけれど。時間が経てば治る(直る?)もんらしい。人間のような肉や骨で体が出来ているわけでは ないとか。よくわからないけれど。

「私達 四師衆を造ったのはレイ様。さくら、紫苑、鶲、私っていう順で。とっころが私は ちょっと失敗作。子供に なっちゃった。技も最初ろくに使えなかったわ。でもレイ様と紫苑のおかげで、だいぶ技が使えるように なって……そして、紫を造ったの。紫、っていう名前は紫苑から とったの。ま、紫っていう白い花も あるしね。そういえば知ってた? さくらは春の木、私 蛍は夏の虫。紫苑は秋の花、鶲は冬の鳥。ちゃんと意味が あるのよ」

と……ペラペラと話す蛍。何だかもうフレンドリーだ。かつての敵も変わったもんね。

「また、罠なんじゃねえの? 俺達を油断させといて……っていう」

と、セナが ふいに口を挟むと、フンと蛍は鼻を鳴らした。

「冗談。もう何の力も ないわよ、私は。疑ってらっしゃるんなら、どーぞ。始末しなさいよ」

 そんな2人を見て、まあまあと止めに入る私。

 セナと蛍って すっっごく相性悪いんだなー。先が思いやられるわ、全く。

 そんな こんなで。

 私達は その後スピーディーに予定通りの行程で進んだ。まずタミダナの街へ行き、情報収集。しかし収穫ナシ。それから西の方のシュル村へ行って南東のアサバ村へ行くが、ココでも収穫ゼロ。

「妙な力を持っている人 知りませんか?」って聞きまわったけれど、全っ然ダメ。まるで雲を掴む感覚だ。

「これでコンサイド大陸は一通り行ったよな。次の大陸へ行くかあ」

というセナの意見のもと、私達は またグルッと一回りしてトルベイ港へと行き、そこから船へと乗り込んだ。

 この時すでに、私の足は限界。相当お疲れだった。

 メノウちゃんですらピンピンしているっていうのに、私だけ すっごいだるく。筋肉痛が「休んでくれ」と懇願していた。

「大丈夫? 疲れたでしょ。次のマイ大陸まで丸2日だし、ゆっくり休みなよ」

「うん……そだね。でも、大丈夫よ」

と、私はガッツポーズ。マフィアの言葉は嬉しかったけれどさ。ココで気ィ抜いちゃダメだよね。これから また色んな事あるんだろうしさ。


 しっかし、私以外の皆って。本当に鍛えてあるというか、体力が あるというか。元気だ。私の居た世界……日本人ってやっぱり運動しなくなってしまったのかなあ……いや待てよ、私だけかも。そうよね、私、体育以外は全然動かないし……うう、自業自得ってやつ?


 船の外に出て甲板通路で一人。手すりに もたれて風に当たりながら、去り行く水面を見ていた。

 この船に乗り込んで まだ3時間足らず。朝焼けがキレイだった。

 でも……はっきり言って、ヒマなのよね……。同じ船に乗っている人って、ほんの何人しか居ないんだもの。しかも居る人に限って、絶対に話が合わなさそうな人達ばかりだ。白いヒゲの年の いった おじいさんとか、(がん)とした おばさんとか。

 年の近い人って居ない……。

 よくよく考えてみると。セナは17歳。マフィアやカイトは もう少し上くらいかな。で、蛍やメノウちゃんは10歳くらいでしょ。紫は……セナより少し若いくらい。

 同じ10代だけどさ……何か皆、年齢が かたまってないー?

 唯一年が近いかなっていう紫とは、絶対に気が合いそうにない……。

 ううう、寂しいなあ。

 寂しい? ううん、全然。

 気が合う合わないって、年なんかじゃ決まんないよねっ。

 と、自分に言い聞かせて。私は皆が くつろいでいる、船室へと戻った。


 船の通路奥から2番目にある船室……中へ入ると、セナとマフィアとカイトが居た。セナは部屋の奥に あぐらをかいて地べたに座り、マフィアは角隅の丸イスに座り。カイトは円形の窓から外の海の景色を見ていた。

 静かで、ちょっと重い空気。

 私が来ると、3人とも こっちを見た。

 戸惑ったけれど、とにかくドアは閉めて。マフィアの横にある もう一つのイスに座った。

「皆、何してんの?」

と、私が聞くとセナが まず答えた。

「俺は魔法考案中。たまにイメトレ」

と、素っ気なく。

 イメトレとはイメージトレーニングの事だ、もちろん。

「俺も海 見て考えてる」

「私も、頭の中で想像トレーニングしてるの」

と、後から残りの2人も答えてくれた。

 なるほど……だから、こんなに黙りこくって静かなのね。

 でも、何か嫌よね。こんな空気……息が詰まるっていうか。


 私はマフィアの横顔を見て、ピンと何かが閃いた。

「そういえばさ。マフィア、前にチラッと言ってたなあ」

「何? 何の事?」

 私の突然の言葉にマフィアが不思議がる。

「ホラ。セナを追っかけて、『時の門番』に行く途中。“草鞋”で海の上を渡れないか……って私が言ってさ。マフィア、『他の七神の力と併用させれば出来るかも』って……言ってたじゃない? あれ、今、考えらんないかな?」

 するとマフィアは「うーん……」と考え込んだ。

「例えば、どんな?」

と、聞いてきたのはカイト。

「え!? えっと……うん、ホラ。さっき言ったようにさ。マフィアの“草鞋”って森の精霊が居る所でしか使えないんでしょう? この技バージョンアップさせてさ……そうだな。マフィアが作り出した“草鞋”をカイトの水神の力で水面海面をスイスイとか! ……あとそうだなあ、セナの“鎌鼬(かまいたち)”にマフィアの木神の力を加えて……そう、名づけて! “木の葉の舞い”!」

と、握りしめた両手をブルブルと振りかざし興奮気味に力んだ私だった。はっ! ……っと我に返ると、皆キョトーンと……私を見ていた。


 うげっ。

 私はそのポーズのまま、硬直した。


 汗もタラタラ。


 やっぱりマズッタ……か……な……?

 そうよねそうよね技の併用なんてそう簡単に出来るような代物じゃないしわああどうしようどうしよう言うんじゃなかった言うんじゃなかったワオーン、っと。

 そんな風に一気に思いながら私の顔が お猿のおケツ並みに真っ赤になるのを見てから、セナがプッと噴き出した。


 あら? ららら?


 すると今度は他の2人も。クスクスと笑い出した。

 頭を掻きながら汗を手で拭く。ずっと私は しばらく笑われていた。

 ひとしきり笑い終えたセナが言う。

「……変な奴」

 があん!

「……でも、なかなか素晴らしい発想だ」

とパンパンパン……と拍手するカイト。

「“木の葉の舞い”……ね。なかなか いいじゃない」

 ウンウン、と頷くマフィア。

 おや? 何だかいい雰囲気。やったね!

「んじゃ、やってみるか。お前の言う、“水面海面スイスイ”と“木の葉の舞い”ってやつ。……って言っても、両方ココじゃ出来ねえか」

 セナが言うと、マフィアが立ち上がった。

「アラ大丈夫よ。難しいのは両神の力のバランスでしょ。何も いきなり実践じゃなくても できるわよ。ちょっと待ってて。考えたから」

とマフィアは部屋から出て行った。

 残された私達。するとセナが話し出した。

「なあカイト。俺の風で お前の水を凍らせてさ、攻撃できないか?」

「凍らす!? へえっ……いいね、それ。面白いよ。やってみようか」

という2人の会話に入り込む私。

「ねえっ、名づけてナニ!? その技っ!」

 内心ワクワクしながら聞くが、2人とも考え込んだまま黙ってしまった。

 どうやら一番の難問は『名前』みたいね……。

 ようし、私も考えようっと。


 マフィアがトタトタと通路を軽く駆けて部屋に戻って来た。手には水の入ったガラスコップと、小さな紙の束を持っていた。

「どうしたの? コレ……」

「ちょっと借りてきたのよ。さ、やってみましょうか。カイト」

と、マフィアは部屋の中央の床に そのコップを置いた。

「何するつもりなんだ?」

 カイトが首を傾げてマフィアとコップを交互に見る。

「さっきも言ったように、難しいのは両神のバランス。力の加減よ」

 マフィアは紙の束から一枚を取り、コップの水面に対して平行に持った。

「私が手を離した時、この紙を水面スレスレで浮かべるのよ。私とカイト両方の力で」

「なるほど……確かにバランスよくしないと紙は水に落ちてしまう。あるいは、見当違いの方向に飛んでいくか。簡単そうに見えて意外と力 使いそうだな」

と、2人は熱心に この『紙を浮かばせよう』訓練を開始した。

 やはり、最初は全然 上手く出来なかった。紙がペラペラと震えたり、水に落ちたり。よほどの神経を使うのだろう。2人とも、何回も何回も やり直した。

 私とセナは、黙って それを見ていた。

「あの紙が木の葉の代わりなのかな?」

「ああ。紙は一応木から出来てるしな。あれぐらいが できないと、実践なんて とんでもないと思うぜ。まだ基本っつー事だ」

という私達の会話なんて、全然耳に入っていない。すごい集中力だった。


 しばらく2人を見ていると、何やら表の方が騒がしくなった。人がバタバタと……足音をけたたましく立てて部屋の前を通って行く様子が何回も。

「? 何か あったのかな?」

「行ってみるか」

と、私とセナは真剣にコップを見つめている2人を置いて、甲板へと出てみる事にした。



 船尾へ出る。

 見ると、大ダルの中に子供が一人 入っていて、それを取り囲むように船員が何やらワアワアと話し合っていた。

「何か……あったんですか?」

と……私が その場に近寄ってみると、いっせいに船員 皆の視線が私に集まった。注目を浴びて私は一歩 引きかけたけれど、船員の一人が声をかけてくれたおかげで私は気に しなくなった。

「こいつ、無断で船に乗り込んだんですよ」

 はあヤレヤレという顔をして。その船員は親指だけを立ててタルに入っている子供を指さした。

 無断で!?

 この子が!?

と……子供の顔を見る。

 髪は肩で切り揃えられ、真っ黒。眉もキリッとしていて太め。男の子みたいな格好しているけれど。男の子かな? 年は10か、ちょっと下ぐらい。

「全く……ふてえガキだ。荷物の中に紛れ込みやがって。港の奴らもお前らも、しっかりチェックしねえか!」

と、船員の中で一番しっかり していそうで太っている男が、他の船員達に声を張り上げ叱りつけた。

 ……シュンとなる一同……。

「罰として、お前ら この後ずっと甲板の掃除! 休憩も無しだ! 働け!」

と言うと、船員達は「げー……」という顔をする。

(かしら)。こいつ、どうすんでスカ?」

 出っ歯で細身の船員が聞いた。

「う、うむ。子供といえど、無断で船に乗り込んだんだ。そうだな……よし、おいガキ。名は?」

と、太くたくましい両腕を組み、鼻息 荒く子供に聞いた。

「リカル」

とだけ子供は答えた。ムスッとしている。

「よし、リカル。お前は港に着くまでの間、船でタダ働きしてもらう。まずは こいつらと一緒に甲板の掃除。それから厨房へ行って皿洗いだ! しっかりやれよ!」

と、タルから頭だけを出していたリカルという子の頭の髪をガシガシと かき混ぜた。

 頭と呼ばれた男が手をどけると、リカルは髪を乱したままフン、と そっぽを向いた。船員の一人が(かん)に障ったのか、食ってかかる。

「お前っ、自分が どういう立場か わかってんのかよ!? 本当なら こんなタルごと海に放りこむ所なんだぜ!? なのに頭が寛大に許してやってんだ! 礼ぐらい言えよ!」

 勢いよく唾を飛ばしながら今にも飛びかかりそうな男を、別の船員が取り押さえた。

 リカルは なおも不服そうなまま、プイとしていた。

「……やればいいんだろ。わかったよ。やるよ。それでいいんだろ?」

と言うと、船員達の表情は ますます曇った。

「何だよ その態度はアアアッ!」

 さっきの男が取り押さえられたままでも、さらに興奮して暴れ出していた。

 場は騒然だ。何だか とんでもない事になっちゃってるみたいねー。


 一瞬、リカルと私の目が合ったけれど。すぐに無視されてしまった。



 リカルは忙しくバタバタと落ち着きの ない船員達に交じって、ポツンと隅っこで。甲板の床を本人の身長よりも長めの柄のモップで拭いていた。時々船員が声をかけると、ただただ頷いて返事をしているようだ。

 しばらく その様子を見ていた私だけれど。セナは とっとと船室へと戻ってマフィア達と魔法の修業だ。ヒマだった私は、そばに立てかけてあった一つのモップを手に取り、リカルに近づいた。

「手伝わせて。どうせヒマだから」

と話しかけるが、リカルは私の方をチラッと見ただけで。また無言で床を拭き始めた。

 構わず、リカルの隣で床をモップで拭き始めてみた。そんな様子を見たリカルが、しかめっ面で言った。

「俺、あんたみたいな偽善者 大っ嫌いだ。鬱陶(うっとう)しいから、やめろよ」

 私の方を邪険に。最初、キョトンとして「偽善者ですって?」と繰り返した。

「俺はこの船に無断潜入した。その罰を受けた。俺が今やっている事は、当たり前の事だ。何もあんたが手伝わなくったっていい。これは俺の罰だ。邪魔だから、あっち行ってろ」

 目を伏せて私から顔を背けた。私に背を向けて、掃除を黙々とするリカル。私はモップ片手に まだ突っ立ったままだった。

 そっかー……。言われてみれば、そうよね。何も私が手伝う事は ない……。無断で船に乗った罰を受けているんだもの。私が よかれと思ってした事は、ただの同情とかになっちゃうんだ。


「……ごめん」


 謝ると、リカルは「もういい」とだけ、言い返してくれた。

「でもさ。何で無断潜入したの?」

と私が聞くと、

「金が無かったからに決まってんだろ」

と返ってきた。

「そっか。なるほど。じゃあさ この船で、何処へ行くつもりだったの?」

「この船はマイ大陸アカナ港行きだろ」

「そうじゃなくて。そこの何処へ行って何をするつもりだったのって事よ」

 するとリカルは手を止めて、しばらく黙った後。

「……妹に会いに行くんだ」

と呟いた。

 急に素直に なったもんだから、少しだけ驚いてしまう。「妹!?」と聞き返すと、リカルは続けた。

「俺の双子の妹で、ミクって名前。半年前、両親が別居しちまって俺らは離れ離れに なった。キースの街にミクと母さんが住んでる。まあ、隣の家に知り合いの兄ちゃんが住んでいるから大丈夫だろうけど……ミクの奴、俺が居なきゃ何にも できやしないんだ。だから心配で、様子を見てくるんだ」

と……一気に話し終えると、また手を動かし始める。

 ……およ?

 少し、顔が赤くなっているのは、気のせいか……?

 もしかして……この子。実は すっごい照れ屋なんじゃあないの?

 妹思い……なんだろうけれど。

『俺が居なきゃ何にも できやしないんだ』って……実は、自分の事だったりしない? だから船に黙って乗り込んだんじゃないのかな?

 と……そこまで考えると、何だかリカルが すっごく可愛らしく見えてきた。

「俺はリカル。あんたは?」

「え? あ、勇気よ」

「フン、変な名前」

 がんっ。

 ……口悪いんだから……。

「勇気。言っとくけど」

「…………何?」

「俺、女だから。こんな格好で こんな言葉遣いだから、よく間違われるんだけど」



「ふうん……両神の力の併用、ねえ……。本当に できたらいいわね」

と、いつも通りに皮肉っぽく笑う蛍。後ろに紫、横隣にメノウちゃん。3人とも、遊戯室で遊んで来たそうだ。遊ぶ……って言っても、カードゲームくらいなもんだけれど。そこで淋しそうにしている お年寄りの人とかが数人居て、相手していてあげたみたい。

 ココは さっきの船室。メンバーが全員揃った。

 でも、相変わらずマフィアとカイトは『紙を浮かばせよう』の修行中。2人とも超真剣だから、近寄り難い。

「えっと。救世主……じゃなくて」

「え? 私? 勇気よ」

「勇気」

と、蛍が言い直して問いかけた。

「ずっと前から聞きたかったんだけど」

「何?」

「あんたには、魔力とかは ないわけ?」

 ……。

 突然 言われ、私は「は?」という顔で蛍を見た。

「ないけど……? 普通の人間。……でも」

 サッと、右手の中指に はめている指輪を見た。

「セナが くれた この指輪……時々、私を守ってくれているの。不思議な力で……」


 そう。

 私自身には、何の力も ない。

 だけれど この指輪は。いつも私を護ってくれている。落雷や、紫の攻撃から。辛い時は、コレを見たら元気が出た。

 不思議な……大事な指輪だ……。薄紫色で光沢が ある。


「……気持ちワル」

 蛍がケッ、と うんざりした顔で悪態をついた。

 何よ それ……どういう意味ィ?

「じゃあ……あの、丘一つ消すほどの力は、本当に それのせいなわけね?」

「え……う、うん」

「そうか……七神鏡も四神鏡も、同じ鏡のくせに すごいパワー」

「……」

 蛍の言いたい事が今一つわからないけれど……でも、共感できる。それは。

 この世界には、色んな鏡が ある。七神鏡、四神鏡。『時の門番』でも、鏡張りの部屋だったし。

 そういえばさ。私、こっちに来る前に鏡を割っちゃったっけなあ。でもあれ、確かに埋めたはずなのにヒョッコリって感じでポツンと置いてあったわよね。その時は きっと調査員か誰かが置いておいたんだろうと勝手に思ったんだけれど。

 でも、何か おかしいわよね。普通、年代物の物なんて そこら辺に置いておくのかしら。


 ……。

 ……何か まるで、私が鏡に引き寄せられたみたいじゃないの。

 それって、怖っ。

 意味ありげー!

 ……でも、ちょっとワクワク。

 って、ダメダメ。この前、目の泉の白虎の救世主だった氷上って人に言われたじゃないの。ゲーム感覚でいちゃ困るって!

 第一、私は絶対 心の中に余裕が あるんだ。だから、目の前で人が死んでいてもきっと ああこれは夢だテレビだ現実じゃないって思っちゃうんだ。……頭で わかっていても、どうにもならない。

(大丈夫よね……うん)

 もし またレイの犠牲者が出たら……そんな事、考えないでおこう。きっと私は私じゃなくなって、自分を責め続けてしまうから。


 しばらくジッとしていたけれど。私は再び外の甲板へ出た。すると、蛍や紫も ついてきた。

「あーあ。タイクツ」

と、大あくびする蛍。

「あ」

 通路を行く私の前に、リカルが やって来た。「勇気。見せてやるよ」

 リカルは胸元から一枚の写真を取り出した。

「何この紙きれ? 人が写っているけど」

と、蛍も覗きこんだ。

「シャシンっていうんだ。高かったけど、頼み込んで撮ってもらった。こいつ、俺の双子の妹のミク! 俺と全然 似ていないのが特徴!」

 リカルが指さす写真の中には。白黒で見えにくいけれど……中央にポツンと一人、正面を向いて微笑んでいる少女の姿が あった。

 リカルと似ていないって言うけれど、そうかな? 結構 似てると思うんだけれど。リカルをもう少し女の子っぽくしたような、そんな感じ。

「可愛いね。この子がミク?」

「おう。俺の大事なモンだ。今まで肌身 離さず持ってたんだぜ」

とリカルは嬉しそうに また写真を胸の奥ポケットに しまい込んだ。

「いよいよミクに会えるんだよなぁ……あいつ、俺 見たらびっくりして、泣いちゃうかもな」

 なんて言って笑っている。さっきまでのブアイソさは何処へやら。よっぽど、ミクって子が大好きなんだねー。ま、双子の妹だって言うんだしね。


 夕焼けが眩しい。赤い、地平のもの全て燃やし尽くすような炎の色。

 大陸へ着くのは明後日の朝、早朝予定。しばしの休息だった。

 でも、私の胸の中で。何だか嫌な予感が していた。

 何だろう。何だか……もう二度と、セナや皆と会えないような……変な感じ。



 嫌な予感は消えないまま、私達はマイ島の北西、アカナ港に近づいていった。

 もう陸が すぐそこで、到着 間近に迫った頃合い。私や お客は皆、首を傾げて しばらく様子を(うかが)っていた。

「……なーんか、妙に静かじゃないかえ?」

と、船首の場で お客の一人が呟いたのを聞く。

 私達が不思議がっていると、もっと おかしな事に気がつく。

 見えてきた港には、人が人っ子一人として見えないのだ。野犬のような動物が一匹、居たのが見えたが……。

 どんよりとした雲が空の中を流れてくる。

「ルビーカラスだ……」

 冷たさを持った風が、私達を叩いて駆け去っていった。

「セナ? どうしたの。ルビー……からす?」

 セナは突っ立って手すり側で、遠くから私達を出迎えているはずの陸の上空あたりを眺めていた。まだ少し離れているが、黒いポツポツとした点が陸の上空を飛んでまわっているように見える。

「あっちは……街の方向だ。キースの街の」

 セナの顔が見えないが、声に重みが あった。私も陸を見つめて目を凝らす。

「ルビーカラスは、肉食の鳥だ。目がルビーのように輝いているから、そう呼ばれる……よく死体の周りに集まって……くるんだけど……」

 胸騒ぎ。言葉が、頭の中をよぎる。

 そんな まさか。

 まさか、そんな。

「……やべえな」

 最後に、カイトが来て そう言った。



 船は、港に着く。

 着いただけ。船員が何人か私達の所に やって来て、「そのままココで待機していて下さい!」と大声で怒鳴った。

 危機迫る。ピリピリした空気が伝わってきた。

 バタバタバタと、船中を人が駆けずりまわる。走っているのは船員だけだ。お客は黙って見守るか、オロオロするばかり。

 どうしていいか わからず、待つしか なかった。

「勇気。行こ」

 言ったのはマフィア。ハッとして見ると、セナもカイトも私を見ていた。私の出方を窺っているようだった。「そ、そうだね。私達は、行かなくちゃ」

 慌てるような言い方に なってしまったけれど。言った通りだ。

 私達は特別。救世主ご一行様なんだから!

「蛍達はココに居て。私とセナとマフィアとカイトだけ、行こう」

と私が言うと、皆 頷いて動き出した。

 私の中には、不安の渦がグルグルと渦巻いて。それは一向に治まる気配は なかった。



 キースの街。マイ島最大の街と言われる。最大という事は、それだけ そこに住む人が多いという事。


 目の前の状況が、信じられなかった。


 人がハンパじゃないほど倒れている。大人? 子供? 老人? 判別が困難だ。石や木造りの家屋は無残に壊され、門も木々も柱も破壊され……ガレキと化した物体に もたれかかったり すがったりしている人型の……人だ。

 あれらは人だ。皆 人間だ。

 所どころ煙が上がっている。灰が空中を飛びまわっている。肉の焦げた臭いがする。温度が、気温が、熱いのか冷たいのか痛いのか ぬるいのか。

 視界が赤い。いつから視界は赤と感じるようになったの。人が、赤と黒と。色彩が水の流るるように……あれが血だと、気がついても知らないふりをするしかないほど。


 私は混乱した。

 目が光景に釘付けになる。

 訳が、わからなくなる。


「ぐっ……」

 吐きそうになって、口を押さえて必死に我慢をした。

 転がっている死体の幾つかに、これが そうなのかルビーカラス……全身を黒に包まれた鳥が、それぞれ楽しそうに群がっている。まるで獲物を見つけたと、喜んでいるかのように。

 死体の肉を(つい)ばみ、貪り、私達をチラッと睨んで飛び去っていく。空高く羽を伸ばし転回したかと思うと、近くの木の枝に とまり体を休ませているようだ。


 誰が こんな事を。


 ……知っている。私は知っている。


 見たくもない死体の傷は皆、鋭利なもので斬られた痕だ。

 一人しか、思い浮かばない……。

「レイ……!」

 嗚咽のように漏れた。

 ライホーン村の次だ。ココだ。ココを襲ったんだ。あの、邪尾刀とかいう刀で。

 私に激しく後悔という念が押し寄せる。何でレイの説得を後回しにしたのか。

 遅れれば遅れるほど、死体の山は増えるだけじゃないのか?

 私は……。

「勇気……大丈夫?」


 私の体をマフィアが揺すった。私は呆然としたままで。

「俺、だめ。ちょっとゴメンよ」

 カイトが そう言って、光景から背を向け私の横を通り抜けて行った。

 彼は こんな場面 自体が初めてだろうから、仕方は ない。私は……


 2度目だ。

「私は大丈夫よ。それより、早く何とかしなきゃ!」

 私は やっと声をハッキリ出して、セナやマフィアを安心させた。すでに街では、立てる人が救助活動を行っているさまが見られる。船員なんかも駆けつけて、大声で指示したり人が集まってガレキをどけようとして格闘していた。

 セナやマフィアが、そんな人達に手を貸しに走って行く。

 私も、一番近くに倒れている人を見つけて駆け出して行った。

 家屋が壊され石や木板などでメチャメチャに なっているのを下敷きに、仰向けで寝ているような格好で胸元をスッパリ斬られ、ドクドクと血が流れ倒れていた男の人。頭に白いハチマキを。体格よさげだったが斬られた傷からの血の量からしても重傷だと わかる。

「大丈夫ですか!」

 私が寄って聞いた。すると彼は そんな私より、私の背後を指さす。持ち上げるのも やっとという腕で。

「そこに倒れている女の子……生きている……か?」

 そう聞こえた。

 私は指をさされた方へ行って、大の字 片足だけを折り曲げて倒れていた女の子に近づき呼吸を確かめたが……息は なく、心臓も……というより、胸をえぐったような痕がある。

 私は首を振った。

 男の人の所へ戻って伝えると「そうか……」と言った。

「手当てします……立てますか?」

と言った時だった。背後で、大きな声が響いた。


「 ミ ク ! 」


 え……?

 私は振り返った。

 リカル。

 船で知り合った、男の子のような、女の子。双子の妹に会いに……。

 双子の……


 ミク?


「そんな。そんな まさか あの子が」私は見入った。さっき私が死亡を確認した女の子を抱え、懸命に呼びかけている。私は全然 気が つけなかった。あの子がミクちゃんだなんて……。

 何故リカルがココに。船で待機してたんじゃ。

 待ちきれなくて来たっていうの。そして……。

「冷たい……嘘だろ、何で」

 大きく見開いた目。リカルの様相が段々と変わっていく。声に力が加わっていった。

「何で!」

 涙が。

 声が、震えて耳に つく。

「ミクっ……ミクうっ……!


 何でだよおおおおおおッ!」


 うずくまって……泣き、叫ぶ。

 私は頭の中が ぼうっと、モヤのようなものが視界に覆い被さってきた感覚が してきた。

 涙は乾いて出ていない。それより……

 これは……何?

 私は自分の存在さえ信じられなくなっていきそうだった。

「男だ……レイ、とか、言ってた。そいつ。もう一人の……巫女みてえな格好をした女と、一緒に……消えた」

「サイガ兄ちゃん!」

 リカルが こちらを見て呼びかける。私は わかった。リカルが言っていた事が蘇る。ああこの人が知り合いと言っていたお兄さん……ミクちゃんの家のお隣に住んでいるって。

「レイって奴に皆……? ミクも、やられたの!?」

 擦れも気にせず、吠えるようにリカルは聞いた。「ああ……街の奴らも俺も皆……妙な刀で斬られて。でも、ミクは……ミクだけは……」

「?」

 変な沈黙が おりた。サイガと呼ばれた男の人は続ける。

「ミクは……一回、斬られて重傷を負ったはずだったんだ。なのに……まるで、生 き 返 っ た みたいに……」

 変な事を言った。

 リカルは、ミクの服を前だけベロリと めくった。穴のような痕以外は、傷一つ ついていないと言う。

「斬られた傷なんて ないよ? サイガ兄ちゃん」

「確かに斬られたんだ……俺より先に、俺の目の前で……でも、そのレイとかいう奴は。また戻ってきてミクの胸ぐらを掴んだかと思ったら。何か、白い物を取り出したように見えた。ミクの体内から。アレは何だったんだ。巫女の女と……『シジンキョウの一枚が見つかった』とかどうとか……」


 私は立ち上がって下を見る。愕然と、地面を見下ろした。

「四神鏡が見つかった……」

 嫌な汗が背中を滑った。やがて全身を熱い血液が駆け巡る。

「あんた……救世主、か? 噂の……」

 私はハッとしてサイガを見た。ドキリと、心臓が鳴る……!

 サイガは私の動揺を見逃さなかった。確信したのか怒りを誰でもいいから ぶつけたかったのか……怒号を私に浴びせた。

「あんた……何で もっと早く来てくれなかった? レイとかいう奴らが言っていた……名ばかりの救世主だと。奴らの言う通りなのか……名ばかりの小ねずみ……いいや そんな事より。何で俺らが……何で あんな いい子を……俺が代わりたかった……なのに……」

 胸板の傷からは まだ血が止まりきらずに流れている。涙のように。

「なのになのになのに!」

 私は後ずさりした。しかし背後からは別の、苦しい叫び声が私を刺すように突き抜けた。

「お前の……お前のせいか! お前のせいでっ、ミクがっ!」リカルの声。


 …………!


 もう、何処へも行けない。

 逃げる場所は無い。



「勇気!」


 何処か遠くで、私の名前を呼ぶ声が する。

 私は勇気よ、救世主なんかじゃない。一体誰が。誰が救世主……?


 ……


 私は倒れた。

 闇の底へと。もう立ち上がれないと……知りながら。




《第19話へ続く》




【あとがき】

 タルを見た時の勇気のセリフでカットした一文。

「勇気は、『勇気』を出して話しかけ……」

 意味わからん。


※ブログ第18話(挿絵入り)

 http://ayumanjyuu.blog116.fc2.com/blog-entry-55.html


 ありがとうございました。



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