表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泣き虫の羽化  作者: みりん
出逢い
3/21

席替え

自分にボキャブラリーが無さすぎて泣けてきます。


そして時間軸がよくわかりません。

泪が想いをはせすぎなんです、はい。

 「ただいま」



 小さく呟いて玄関をくぐる。

家にはまだ誰もいない。

リビングには向かわずに部屋に向かう。


「はぁーっ」


ドサッと荷物を放り投げて座り込む。

気がつけば少し、涙が滲んでいた。


「なんなの、こんなことで」


家に一人なのはいつものことなのに。

苦しさが軽いぶん、回数が増えているような気がする。

ちがうかな、今まで気が付いていなかっただけかもしれない。

不安になるから意識しすぎるのかもしれない。







 私は幼い頃から泣き虫だった。

でもどこかずれた泣き虫だったらしい。


以前母が教えてくれたことがあった。


私は夜泣きを全くしなかったらしい。

余りにも泣かなさすぎて心配になり、病院へ走ったことがあるとか。

お腹がすいても泣かなかったためうっかりお乳をあげ忘れて、ぐったりした私を抱えてこれまた病院に走ったこともあるとも言っていた。

歩けるようになってからは転んでも泣かず、母は私が怪我をしていることにも中々気づけずに苦労したとか。


なんか私、心配かけてばかりな気がする。


ところで一体いつ泣いていたかというと、どうも何も無いときだったらしい。

私が母や父の指を握ってにこにこと笑っていたと思えば突然苦しそうに泣き出したり、特になにもしていないのに泣いていたり。


気がするというか、心配と迷惑しかかけていないじゃないか……。


 小学生位までは父も母も私を心配してくれていたけれど、流石に小学生中学年を越えた辺りからは本当に迷惑そうで、急に泣き出す私を怒るようになった。


怒られたところで、泣かなくなることはなかったけれど。


 泣きたくて泣いているわけでもないのにそれを咎められるのが辛くて、泣く度に体調が崩れたことを親に知られたくなくて、私はいつの間にか家にいることが苦痛になっていた。

中学年になった頃には両親共に仕事を遅くまでするようになって私は2人に隠すことが楽になったけれど、それまでは本当に苦しかった。

本当のことに気づいて貰えないことが苦しかった。


そんなときに私を支えてくれたのが柚だった。



柚は長い幼馴染みと言うわけではない。

4年生の、私が一番苦しんでいたときに出会った。
















 私のこれ(・・)はどこにいても何時でも容赦なく起こる。

勿論学校でも。授業中でも。

柚と会うまでこれ(・・)が学校で起こったときは直ぐに保健室に行っていた。泣いていることを保健室の先生以外には見つからないように、酷くなる前に。

幸いこれ(・・)は毎日確実に起こる訳ではなく、症状が重いものが学校で起こるのは1ヶ月に多くて2回ほどだったため“さぼり”と呼ばれることは免れた。


 4年生になって新しいクラスになった私は昨年と一昨年同様に友達を作ろうとは思っていなかった。

これは1、2年のうちに出来た友達が突然泣きだす私を見て面倒くさそうにしたり気味悪がったりして離れていったたからだ。

幸いいじめられることはなかったけれど、私から離れていく友達を見るのが怖くて嫌だった。




私はもう友達はいらない。




そう思ってからは極力口を開かないようにしてじっと自分の席に座っていた。



 4年生になって1週間、若くて明るい男性の担任の先生の提案でくじ引きで席替えをすることになった。


「くじはしっかり38人分作ってきました。もう君たち皆の名前を覚えたから何時までも出席番号順はつまらなくてね」


先生(名前忘れた…)は紙を折って作ったらしい箱を教卓に取り出して言った。

先生の指示で出席番号順にくじを引きに行く。


私の番号は13。


窓側の一番後ろの席!


勿論私は周りにばれないように小さくガッツポーズしましたとも。



 席替えをしたところで一つ問題が発生した。

私は背が低いのだ。そして前の人の背の高いことといったら!

これでは黒板の端が見えない。

でもこの席を誰かに譲るわけにはいかない。


こんなときに友達がいたら「見せて!」とか頼めるんだろうな。


ふと思い浮かんだ考えに慌てて頭をふる。

友達が出来たところで最後は寂しいだけだ。

私はまぁ話をちゃんと聞いておけば何とか成るかと諦めることにした。


 問題が一つ解決した、というか、諦めがついたので本を読むことにした。

机の中から一冊の本を取り出す。

学校で借りた本だ。

クラスの人と関わるのを避けるようになってから暇をもて余した私は本を読むようになった。特にファンタジー小説。

一度読み始めてしまえば私は私じゃなくなる。その物語の登場人物になれる。そうしていれば周りのことなんか気にする暇もなくて楽だったし楽しかった。

周りに怯えるよりも登場人物の感情に振り回されていたかった。

 昨日栞を挟んだところから読み始める。







そして私は鳥になった。


*2014/6/9 修正

 (今では → 頃には)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ