中学生の私
私は変だ。
訳もわからず泣いてしまう。
「嫌に思われちゃったかな…」
私と柚が一緒に会話していた他の3人は私が泣いたのを見て困った顔をしてた。
あれは迷惑だと思ったときにする顔だった。
「そうね、ちょっと困らせちゃったかな~」
あの後、泣き出した私に取り乱した3人を柚が適当に取り繕ってくれたおかげであの場はなんとかなった。
私の席の前の席の椅子を引っ張って向かいに座っている柚が自分の事のようにバツが悪そうに苦笑する。
「でも大丈夫。私は泪のことちゃんと知ってるし!ほら、鼻かみな」
そう言って何時も側にいてくれる。
私はなんだか嬉恥ずかしくて差し出されたティッシュが柚の手の中にあるまま鼻を噛む。
ぶちーんっ!
「うわっ!」
「ずびっ…えへへ。ありがと」
「も~うっ、泪ったら!」
「ところで、今回のは?」
柚から掛けられるこの言葉ももうずっと前からの習慣。
「みんなと話してるの聞いてて、なんかいいなぁ、幸せだなぁって思ったら」
私の応えがこんなに曖昧なのもいつものこと。
自分でもどうしてかよく分からない。
こればっかりはどうしようもないから。
「身体はもう大丈夫?まだ苦しかったりしない?」
この質問も。
何時も心配してくれる。
私はこう(・・)なった後よく体調を崩す。
泣き止んでも苦しさが治まらずにそのまま動けなくなってしまうこともある。熱が出たこともあった。
そのせいで去年は遠足に行けなかった。
「大丈夫だよ。やっぱり苦しくなるけど、その後のは最近落ち着いてるの」
そう、最近は大分調子がいい。
その時々で程度は変わるけど。
「本当!?良かったぁ。泪が苦しいのは私も辛いもん。無理してないよね、取り敢えず熱の確認だけでも…うん、大丈夫そうね」
柚の手の平が私の額に触れる。
あったかいなぁ…。
柚はすごいなぁ。
そばにいるだけでこんなにほっとする。
「うん。大丈夫。心配かけてごめんね」
心配かけるのは良くないと分かってはいるけれど心配してくれるのが嬉しくて、ついつい笑みを浮かべてしまう。
そんな私を柚は嬉そうに見ている。
「あっ、そろそろ授業始まるから席戻るね。じゃ」
「うん、ばいばい」
席を立つ柚を見送って私も教科書を取り出したり準備を始める。
私達は同じクラスでも席が離れていればこうやって挨拶する。
これは私がしたくてしているのだけれど、柚はそれに応えてくれる。
私はすっかり苦しさが治まった胸を押さえて幸せを噛み締める。
始業のチャイムが鳴り響いた。