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泣き虫の羽化  作者: みりん
変わりゆくもの
13/21

あなたとの距離

泪サイドに戻ります!



打ち込むのが間に合わない!!

パソコンないからスマホでメモ帳に打ち込んでいるんですけど、指が、指が………


紙派なので全然慣れないのです。


ということで投稿ちょくちょく遅れるかもしれません。

がんばります。

 あの日から3日。

涙はとまっても悩みすぎたせいか知恵熱が出てしまったりして学校に行けなかった。

母にも迷惑をかけてしまった。

何時もは体調が悪くても隠す努力をしていたが、今回ばかりはそれも上手く出来ず朝いつもどおりに起きることさえ出来なかった。

病院に連れていかれたときはお医者様から知恵熱だと言われた母は目を真ん丸にしていた。


母はいつになく話しかけてきた。

病院も予防接種を除けば5年近く行っていなかったのに。

急にどうしたのかと聞こうと思ったけれど悩むのに忙しくて結局聞けず仕舞いになってしまった。

多分、聞くまでもなく具合が悪いのを隠せていなかったからだろう。


 朝食を食べる私をキッチンからちらちらと見てくる母の視線がむずかゆい。

取り敢えず熱は下がったし、柚にも会いたかったので今日は学校に行くことにした。



 あの時柚にとっさにあのように言ってしまったけれど、あれで良かったのだと思う。

柚は私のせいで沢山のことを我慢している。

私が余りにも柚に依存してしまっているから駄目なんだと思う。

私は柚と少し距離を置くべきなんだ。

勿論仲直りだってしたいし必要だと思うから少しでも早く仲直りしたい。

本当は今すぐにでもどうにかしてまた笑えるようになりたい。

でもきっとそれでは駄目なんだと思う。

このまま元に戻ってまた同じようなことが起こったらまた柚を苦しめることになる。

柚は凄くしっかりしていて強いけれど、でも弱いところだってあることを私は知っている。

柚は人を傷つけたと気づいたときに柚自身が同じくらいか、それ以上に傷ついていることを私は知っている。

柚にあんな悲しそうな顔を二度とさせたくない。

そう、だから、今日は柚に会いたくて登校するけれど、挨拶が出来たらいいなとだけ思うことにした。


きっと挨拶をすれば、私は大丈夫だと思って柚の心が少しは軽くなるかもしれないから。


これが私がひたすら悩んで見つけた答え。



「うさぎ、行くよ、学校」



 制服を着て鞄を持って、ぬいぐるみを抱きしめる。

靴を履き終えてドアに手をかけたところで足を止めた。

先程からずっと母の視線を感じている。

折角私が今まで必死に関わらないようにしてきたというのに、こっそり覗こうとしてばればれな母が可笑しくて面白くて、我慢出来なかった。

私はくるっと振り返って目が会った母にぬいぐるみを向けてその手を振ってみた。


ぽかん、とする母。


なんだか嬉しくて少し自分の表情が和んだのが感じられた。


「………いってきます…」


ぽそりと言って今度こそドアを開けて外に出る。

柚に会うのがやっぱり怖くて沈んでいた心に光が差した気がした。



母にちゃんと(・・・・)“いってきます”を言ったのは実に3年振りだった。
























 「っつ!?」


 教室に一歩踏み出した刹那、柚の背中が目に入る。


柚は既に席に座っていて机に方肘を立て頬杖をついている。

私が立っているのとは反対側、窓の外を眺めている柚の表情は見ることが出来ない。


そのことが不安を煽る。

会いたいとあれほど思っていたのにいざその姿を見るとすっかり怖じ気づいてしまった。


私は柚に拒絶された身で

そして私自身彼女のためにと思ったとはいえ柚を拒絶した身で

そんな私が果たして柚と言葉を交わして良いのだろうか。


確かに柚が私に向けて発した言葉で傷ついたと私は知っているけれど

そもそも私が大丈夫だという姿をして見せたところで柚の心がどうにかなるというのはただの私の思い上がりではないだろうか。

私の声すら聞きたくないと思っていたら?

いやむしろ、私を拒絶したのだからそれは当然ではないのか?




そんなことが思い浮かんで、私は教室に右足を踏み入れたまま動けなくなってしまった。


「あれ?泪ちゃん?」


突然後ろから声をかけられて慌てて振り向く。

後ろにいたのは学級委員長の渡部さんだった。


「どうしたの、立ち止まって。もしかしてまだ体調良くないの?ここ3日休みだったよね」

「えっ、あ、う…」


柚のことで頭が一杯だった私はいつもより上手く話すことが出来ないで戸惑う。


「辛かったら保健室行く?ついていこうか?あ、それとも柚のこと呼ぶ?」


その名前を聞いた瞬間私は思い出したようにぶんぶんと首を横に振った。

多少くらくらしたが今はそんなことはどうでもいい。


「だいじょうぶ。だよ、渡部さん。いっぱいねたから!あ、ありがとう。声かけてくれて」

「そっか。なら教室入ろう。もうすぐで時間だよ」


私の言葉を聞いてそう言うと先に席へと向かっていった。


これ以上迷惑をかけないと決めたそばから柚を呼ばれてしまったら元も子もない。


何とか呼ばれずに済んだことにほっとしつつ顔をあげると驚いた表情で柚がこっちを見ていた。



必然的に目が会ってしまう。

怖くて目を逸らそうと思っても出来ない。


思い上がりかもしれないけれど、目を逸らしたらきっと柚は傷ついてしまうから。

これ以上傷つけたいんじゃない。


大丈夫 大丈夫

私は大丈夫


自分に何度も何度も言い聞かせる。

私はついに足を踏み出した。

なるべく自然に、

目を会わせ過ぎても不自然だからいつものようにぬいぐるみで少し顔を隠したりして。


側まで行くと柚は困惑した表情で私を見た。


焦り、不安、戸惑い、後悔そしてちらりと期待が姿を見せた気がした。


それは本当かは分からないけれどやはり後悔しているのだと思うと、今日登校した目的を果たす決心がついた。


私は大丈夫

柚は私を拒絶していいんだよ

柚にはその権利があるんだから

後悔なんてしなくていい


そう想いを込めて。


「おはよう」


いつもと同じ声の大きさで、同じように小さく笑って。


そんな私を柚は呆然と見つめていた。

そしてぽかんと開けていた口をきゅっと閉じて私から目を逸らした。




うん、大丈夫。

挨拶くらいでまた一緒にいられるようになるなんて思ってない。

私は返事を貰うために挨拶をしたんじゃない。





これで柚とはお別れ。



別に一生の別れってことじゃない。

仲直りするまでただのクラスメイトに戻るだけ。


目を逸らしたままの柚に一つ頷いて自分の席に向かう。



早速体がじんじんと痺れて胸が苦しくなってくる。

だけど大丈夫。私は大丈夫。

涙なんて知らない。


席に座って誰にも気づかれないようにゆっくりと深呼吸する。


すって


はいて


すって


はいて



暫く続けていると体の痺れが次第に治まって涙も溢さずにすんだ。


「やれば出来るじゃんか、わたし」


今までも出来たら良かったのに。

でも感覚的にそう何度も今みたいなことは出来ないだろうなと分かってしまう。


「変わらないな、わたし……かわりたいなぁ…」






 授業が始まる前から2日分くらいの体力をごっそり使い果たしてしまった気がして、これ以上疲れないようにゆっくりと一時間目の準備を始めた。



最近この苦しい感じが落ち着いているのがせめてもの救いだと切実に感じながら。

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