言葉と後悔と私 *Side 柚
累計PVとユニークアクセスを確認する方法初めて知りました。
読んでくださってる方、ありがとうございます!!
誰かが読んでくださったっていう事が嬉しすぎて投稿し忘れました(笑)
これから数話、柚サイドでお送りします~!
私は興奮していた。
一気に言って息を切らせている間に泪が何か呟いていたが私はそれを聞き取ることか出来なかった。
息が落ち着いてきてやっと聞き取ることができた。
「ごめん、なさい」
苦しそうに掠れた声。
その刹那、冷水を浴びせられたきがした。
自分が泪に言ったことに寒気がした。
一気に熱が覚めて冷静さを取り戻した私は泪を見た。
泪はすっかり俯いて私から顔を背けていてその表情を見ることが出来ない。
「ごめんなさい」
もう一度小さく泪が言った。
「あ、……るい…ご、ごめん!言い過ぎた…あの、ほんと、ごめん」
慌ててそう言っても泪は顔を背けたままで。
「…柚はわるくない。わたしのせい」
「る、泪、ちがうのっ!私、言いすぎてっ…」
私は私が不躾に吐き出した言葉をどうにかしてなかったことにしようと必死になった。
本当に自分が悪くて、集計を失敗した資料があって学校に行きたくなかった。
本当は泪が倒れたことで学校に行けなくなって安心した。
安心して気か抜けたところで自分が行かなかった理由を正当化しよう、誤魔化そうとして心にもないことを、泪が傷付くことを言ってしまったのだ。
謝ってその事を伝えようとした。
でも、
「…ひとりに、して……」
「泪、」
「看病してくれて、ありがとう」
突き放すようなくぐもった低い声で泪が言った。
そんな声を聞くのは初めてで、隠しきれない恐怖心が身体を硬直させた。
「帰るときは、気を付けてね」
「る、」
私に弁解の機会など与えられなかった。
言い訳なんて後付けのものは聞きたくないと言われた気がした。
『どうして、話を聞いて』と言おうとしたけれど“どうして”かなんて少し考えれば分かってしまった。
泪と友達になる前、泪は言っていた。
『今までみたいに、私のことを嫌になってみんなが離れていっちゃったみたいになるのがこわいの』
私はその言葉にこう答えた。
『私は泪のことを嫌ったりなんてしない。嫌なんて言わないよ。だってそうでしょう?私は泪の噂を聞いても泪が目の前で倒れても嫌だなんて少しも思わなかった。私は泪の力になりたいと思ったんだよ。私は泪と友達になって話したり遊んだりしたいと思ったんだから!』
なんということだ、私は。
私は私のために泪を否定してしまったんだ。
それが私の本心かそうでないかなんて彼女にわかるはずもないのに!
私はもう何も言うことが出来なかった。
何と言えば良いのか分からなかった。
「……わ、分かったよ。…帰るね」
ただ部屋を出る支度をすることしか出来なかった。
「……じゃあね…」
私は最後の期待を込めて声をかけた。
「……………ん」
けれど泪は顔をこちらに向けることもなく頷くように頭を下げて答えただけだった。
私は後ろ髪を引かれる思いで泪の部屋をそして家を後にした。
翌日、私は本気に学校を休もうかと悩んだ。
泪に会って何から話せば良いか分からなくて自分が蒔いた種を恐れた。
しかし結局学校に行った私はそこで何も悩む必要など無かったのだと知る。
泪は学校に来ていなかった。
「良かった」
ほっと息をついて出た言葉に自分でも驚く。
心配よりも先に出た思いに自分が恨めしい。
「野牧」
「はい、先生?」
朝のホームルームが終わると先生に声をかけられた。
「桐原の休みの理由知らないか?まだ連絡が来てなくてな」
「えっ」
「まあ何時もの熱か何かだろうがな」
先生の言葉に目線を漂わせてしまう。
「ん?」
先生はその事にめざとく気付いてしまう。
「なんだ、この土日に喧嘩でもしたか?」
先生はやはり先生で生徒の変化には敏感なんだろう。
昨日の自分の言葉を思い出して唇を噛んだ。
そんな私を見て何を思ったのか先生はハハッと笑った。
「笑い事じゃないんですが」
顔をしかめて言うと先生はまた笑った。
そして何処か嬉しそうな表情で言うのだ。
「なぁに、子供は喧嘩してこそだろう。仲が良いほど喧嘩するとか言うだろ?」
「………確かに言いますけど…。でも私、泪に酷いこと言っちゃって、ほんとに、もう……。どうしよう!?先生!」
そう口にするだけであの時に俯いたままだった泪の姿が思い出されて後悔に押し潰されそうになる。もう自分ではどうしたらいいのかがまるで分からなくて目の前にいる担任の先生にすがった。
流石に私の取り乱しぶりを見て事の深刻さに気付いてくれたのか先生は笑うことをやめた。
「そうだな」
低い真剣みを帯びた声に驚いて先生の顔を見るとその顔もまた真剣だった。
「…せんせ?」
突然の変化に首を傾げる。
どうかしましたか、と聞こうと口を開くと、
「野牧、放課後理科準備室に来なさい。場所は分かるか?北舎三階の理科講義室と実験室の間だそ」
「えっ?」
何か呼び出されるような悪いことをしたか、言ったかと焦る。
「あの、どうして、」
「桐原のことだ。野牧は桐原の一番の友達だろ?野牧があいつのことをどれくらい知っているかは知らないが、少し話したいことがあってな。野牧のためにも桐原のためにもそろそろ話しておかねばならんだろう。許可は得ているよ、時を見て伝えてほしいと」
「え、え?でも今は…」
「いいから来なさい。おお、時間だ!取り敢えず授業はしっかり受けろ。分かったな、来るんだぞ」
そう言って先生は駆けていった。
「は、はい…」
小さくなって階段へと消えた背中を見ながらぽかんとしたまま返事をした。
よく分からなかったが兎に角私は自分の席に戻って授業を受けた。
幸いどの教科でも当てられることもなく何とか1日を乗り切ることができた。
ただ、休みの時間になる度に泪のことが気になって仕方がなかった。