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夕日

作者: 佐藤 まわ

多分さ、思ってる以上だよ。




~夕日~




放課後の教室は眩しい。

オレンジ色の夕日が窓から射し込んで机に反射する。

そんな教室に残っているのは二人。

何でもないただの高校生、何ともない普通の学ランを着て、なんとなくそこに居る俺。それから何ともない普通のセーラー服を着た神田。


頬杖を突いて眺める彼女の目線の先には、何が写っているのだろうか。

彼女の目線の先に俺も顔を向けた。


綺麗な列を作った野球部が走っている。



「なぁに、見てんの。」


なんだか少しつまらないのは、神田が俺の親友をまっすぐに見ていたから。


「んー?」


「んー?、じゃなしに。」



二人してグラウンドに顔を向けながら話を進める。

机に正面に座る神田。神田の方を向くために椅子を反対向きに跨ぐ形の俺。


神田が俺の親友の泰輔を見ているのは、やっぱり気に入らない。

神田は、俺の、だから。彼女だから。



「神田さーん。俺、そろそろ妬いちゃう。」



俺は机に体を突っ伏せながらそう項垂れた。



「おかしいおかしい。」



神田は笑いながら手を左右に振りそう返してきた。

なんだよ、笑うなよバカ。



「違うんだよ、羨ましいなって、思っただけ。」



くすくすと笑う神田は、俺の顔を覗きこみそんなことを言ってきた。


俺は頭に疑問符を浮かべつつ、親友泰輔を頭に思い浮かべる。



「泰輔くんは、私の知らない木佐を知ってるんだろうなぁって。」



目を細めて、再びグラウンドに目を向ける神田の顔が夕日で赤に染まる。



「けど、神田しか知らない俺も、いる…し!」



外を向く神田の顔を両手で挟んで、強制的にこっちを向かせる。何で俺がこんなに恥ずかしいのかは分からないが。



驚いて目を真ん丸にしているのが可愛くて頬が弛緩する。その後、はっと思い出した様に口を開く。



「でもでも!私も泰輔くんになりたい!」



それはもう、意味がよく分からんぞ。

心で呟き首を傾がせて見せた。



「そしたら、もっと木佐のこと知れるじゃん。」



拗ねたみたいに小さく尖らされた唇。すぐにでも口付けたいのを堪える。付き合っているのに俺のことを木佐と名字で呼んでくる。俺だって神田と呼ぶ。特に理由はないけど、今さらな感じがする。




「知ってどーすんのさ。」



照れて目線を反らした俺は、照れ隠しのように小さい声でそう問う。



「もっと好きになるんだよ?」




へへへとはにかみながらそんな答えをくれた。


もうだめ。神田、可愛い。




「ばーか。可愛いこと言ってくんな。」




手を伸ばし、黒い艶やかな彼女の頭を少し乱暴に撫でた。



「あのさ、」



君ははかり違えているのかもしれない。



「俺は、この先何回生まれ変わっても、」



俺が君のこと、どれだけ好きか。



「他の誰でもなく神田を、好きになる。から、そんなん気にしなくたっていい。」



涼しい風がそよぐ。カーテンが大きく膨らむ。



「だって、そしたら時間ならいくらでもあんだろ。」




神田は俺の言葉を聞き、なにを隠す訳でもなく頬を緩めにやにやとしだした。



「くさぁー!」



かなり嬉しそうにそんな悪口言われてもなあ。

照れ隠しで悪口を言い合うのは、お互い様。



「は?!俺マジ真面目に言ったんだけど!」



「はいはい、ごめんね!」



神田の顔が赤いのが、夕日のせいじゃなけりゃいい。



「だってさ、ドラマみたいだったじゃん!」



「っせーよ、バカ!」



「バカって言うほうがバカなんだよー」



「小学生かよ。」



俺らの言い合いのように突然ざわっと鳴った音と共に、大きな風がカーテンに空気を含ませる。

盛り上がったカーテンは俺と神田を覆った。





俺は少し身を乗り出して、また何かくだらないことを言い出しそうなお口を、塞いでやった。




ちゅ、なんていう気恥ずかしい音。


名残惜しさをのこして、「帰るぞー、バカ」と切り出した。












end

























最後まで読んでくださりありがとうございました。初投稿なもので、更に持っている言葉も少なく伝わりにくいこともあったと思われます。名前を名字で呼び合うカップルって何か可愛いなと思ったことから出来上がりました。これから少しずつ上手く書けるようになればなと思っている次第でございます。拙い文を失礼致しました。

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