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一話 Unforgettable memory

この世界に来て暫く経って、ノエラたちとの生活もだいぶ慣れてきた、と思う。

当初は前の世界と色々違うから迷ったものの、あいつらにはずいぶんと色々なことを教えてもらった。


余裕も出てきたし、夜に散歩に出かけることも増えた。


相変わらず、ここの空に光る星は綺麗だなと思う。

この星が綺麗だから夜の散歩はやめられない。


もっとも、俺が散歩をするのはそれ以外の理由もあるが。


人当たりが少ないところに出たところで辺りを素早く見回して、人がいないのを確認する。

そうしてから、出て来いと小さく呟く。


ばさぁ。

羽が開くような音がして、背中に龍の羽が現れる。

若干蝙蝠の羽にも似ているがそれとは違って俺のは髪や目と同じ赤。

数週に一回、こうして文字通り「羽を伸ばしている」。


そうして羽を伸ばして飛ぼう、というところで誰かに呼び止められた。


「緋炎」


「・・・誰だ?!」

うっかりポケットに入れていた飴を思いっきりそいつに向かって投げてしまったところで気がつく。


同居人であり仕事の上司である男、ノエラ=フレデリックだ。

身体能力が乏しいことに定評があるあいつが何故か俺の後ろに立っていた。


ノエラが慌てるのを余所にそれにしてもあいつの空間転移魔法はすごいな、といつもながら思う。

気配をまったく感じさせない、と感心させる。


「・・って聞いてるのか緋炎ッ、俺だ!」


「すまん・・・って、待てノエラ!今の見てたんじゃ・・・!?」


ああ、と頷くノエラ。

そんなことするより前にさっさと見たかいわないか言え、と思ったところで予想外に焦っていたことに気がつく。

自分としたことが、とんだ失態を犯した。


「そんなことより緋炎ッ、お前今のは何だあの羽っぽいアレは!」


ばっちり見られてた。

しかもある意味一番見られたくない奴に見られた。

思わず天を仰ぎたくなる。というか仰いだ。

溜息を付きつつ説明する。


「羽っぽいいうな、羽だ。

 今まで言ってなかったが・・・まぁ、お前になら言っても大丈夫だろう」


長くなってもいいな、と確認する。

勿論だと帰ってきたのを確認し、ゆっくりと口を開く。


「お前等には言っていなかったが―俺は人間ではない。

 人間の皮をかぶった、龍だ。

 そもそもこの世界に迷ったというのも嘘で、前の世界では俺は命を狙われる存在だったからな。

 だからこの世界に来た。まあ、友人が殺されたという話はしたよな?アレは本当だ」


「お前、龍って・・・まさかあの、」


「まさか、だ。

 この羽を見たらわかるだろう、お前なら」


疑うなら疑っていてもいいんだぞ、と釘を刺す。


相変わらず愕然とした表情でノエラは続ける。


「あの別世界のはるか東の方にある国にいる、少数民族だろ?!

 圧倒的戦闘力を誇る世界最強とよばれているあの龍なのか!?


 ・・・じゃあ何故お前はわざわざここにいるんだ、向こうでは神と崇められてるんだろう!?」


胸倉を掴まれ、一気に大声で捲くし立てるノエラ。

あいつがここまで声を荒げるのも珍しい。


とりあえずこのままじゃ息が苦しいから引き剥がしてから話を再開する。


「落ち着け、ノエラ。

 それは遥か昔の話だ、今ではもう俺しかいない・・・どの世界でも、な。

 ついでに俺のこの力を恐れて今じゃ命を狙われるか避けられる始末だ。

 俺は好きでこの力を持っているわけではない、むしろ嫌いなんだ、この力は」


「・・・すまなかった。

 お前の過去を探るようで申し訳ないが、お前の過去を聞かせて欲しい。

 何がお前を、そんな風に変えたのか」


俺の過去を聞きたがるなんて珍しい、と思った。

人と会話するのにはまだ慣れてないし、過去を話して少しでも楽になりたいと建前と弱音が頭の中を走る。


たまには弱音を吐くのもいいだろう。


そう自分に言い聞かせて、自分の中に燻っていた思いを吐き出す。


「大分長くなる―弱音も吐くが構わないな?」




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