8話「解放、フレアフォーム」
先程の状況とは打って変わり、俺は奴の姿を捉えられず斬撃でどんどん削られていく。
すると奴はまた不敵な笑みを浮かべながら姿を現す。
「どうだ?これが俺の能力、透明化だ」
「ハッ、文字通り透明化か。厄介な能力持ってんな」
クソ、何度も斬られたせいで全身が痛ぇ。速くこれの打開策を見つけないと失血で死ぬか、そのままケバブ方式で斬り殺されるかだけだ。
「今すぐに逃げるなら、お前だけは助けてやるよ」
また奴は透明化の能力を使い姿を消した。
奴の氣力を読んで位置を特定しようと試すが、全くと言っていい程読めない。畜生、コイツ気配消すのも一流かよ。ダメもとで広範囲に炎を放つが、これも効果が無い様に見える。空中に逃げるか?いや、いくらあの氣力の投擲ナイフを見切ったからと言って、空中じゃ咄嗟の身動きが出来ねぇから一瞬で迎撃されるのがオチだ。
アレを使うか、どうする…
「いくらやっても無駄だ。お前じゃ俺を倒せない」
背後から斬撃が迫ると予想して前に回避したが、予想を大きく外し腹に衝撃が来た。その衝撃で、「オゴッ」と情けない声を出しながら後ろに吹き飛び、倒れこんだ。
ええい、どうせ幾らやってもこの状態じゃ奴の能力を見切ることは不可能だ。やはりアレを使うしかない。
頭の中で最適解を導き出すと、不意に奴が透明化を解く。
「お前、何で栄田何かを守ってる?お前のその剣技、剣圧、剣速なら、俺の入っている組織でも十分に通用するぞ」
「お前の組織?」
「俺の入っている組織、「リベリオンズ」っつーんだが、まあ簡単に言えば反政府組織みてぇなモンだ。今の政府や世の中に不満を持つ奴等が集まり、反旗を翻す為に動いている」
奴が構えていたロングナイフを下ろす。
「お前、ゲートの人間じゃないんだろ?だったら俺達の組織に来いよ。知らない奴でも気が合うし、報酬も高ぇし。何よりお前みたいな強ぇ奴が味方になれば心強いからな」
笑いながら言う奴の言葉を聞きながら、刀を地面に突き刺し、それを支えに起き上がる。
「残念だが、俺は今の職で満足してるんだ。給料も良いしな」
まあ給料つっても、依頼者から貰う報酬だけどな。
すると奴は訝しげな表情を浮かべ後頭部をかく。
「分かんねぇな。何故そこまでして他人を守ろうとする?何の利益がある?その過程で死ぬかもしれねぇのにか?」
死ぬ…か、確かに死ぬかもしれないし死んだら何も残らないもんな…
沈黙する俺に対し、再び不敵な笑みを浮かべる。
「ほら見ろ、何も言えない。だったら俺たちの組織に入って「だがな!」
空気を裂きながら、刀の切先を奴に勢いよく向ける。
「俺はな、俺だけの力で皆を守りたい!誰も辛い思いをせずに俺だけが全てを背負って皆を助けたいんだ!だから、くだらない理由の為に皆の幸せを壊すお前等には負る訳には行かねぇんだよ!」
この信念こそ、俺がゲートに入らず討伐屋になった最大の理由だ。
奴は怒りの表情を見せると同時に即座にナイフを構える。
「チッ、そうかよ、じゃあこのまま殺してやるよ!」
見せてやるよ、俺の本気をな!
「ハァッ!」
全身に力を入れた直後、空気が揺れ俺の全身から赤く燃え上がる炎と氣力が吹き上がり、周囲に激しい風圧が起こる。それと同時に俺の髪の色も段々と赤色へ変化する。
俺が起こした風圧に飛ばされないよう耐える奴が荒い声で問う。
「クッ…何だその姿はッ!?」
「そうだな、名付けるなら、フレアフォームだ!」
視線を下ろし、3回程右の拳を閉じたり開いたりして今の状態を確かめる。
この形態は炎の熱で全身の筋肉を活性化させ、爆発的に身体能力を上昇させた戦闘形態だ。何年か前に使ったときは体内での炎の操作がムズくて何度か火傷じゃすまない負傷をしたことがあったからちょいと心配したんだが、もう大丈夫だ、高度な氣力の操作と並行してずっと炎の操作も練習したおかげで完璧にこの状態を維持できるようになったぜ。
「ハッ、だが無駄だ!どんな姿になったところで俺の透明化を見切れなければ意味がねぇ!」
再度透明化を発動し、また奴が完全に姿を消す。
確かに奴の言う通りだ。透明化されちまえばこの状態になったところで奴の姿が見える訳じゃねぇし、傷が全回復する訳でもない。だがな、確かに身体能力が上昇するとは言ったが強化されるのはそれだけじゃないんだぜ?
俺は刀を両手に持ち、ゆっくりと構える。
辺りが静寂に包まれると同時に、俺の意識は極限の集中状態へと入る。
まだだ、まだ遠い、近づいてこい、そうだ、もっとだ、来い、来い!
…ここだ
「炎紅の一槍ーッ!」
左足を軸に全身から溢れ出る炎の推進力を利用し、高速で左回転をしながら後ろの上空に目掛けて全身全霊の突きを放つ。その衝撃は足元の地面を抉り壊れかけていた屋敷の窓ガラスも全て割り、最後にその衝撃は空に広がる雲すらもかき消した。
「馬鹿…な…!」
姿を現した奴の右肩は出血しており、突きを放った刀が根本深くまで刺さっていた。
「どうして…俺の居場所が分かった…」
「俺は確かに身体能力を上昇させると言った。だがこの形態はそれだけじゃない、動体視力や反射神経、五感全ても同じように強化させることが出来る。だからお前が透明化を使っていても動いた時の僅かな空気の揺らぎでどこにいるかを感じ取り、捉えることが出来た」
「クソ…が…」
奴の体から一気に力が抜け落ち、そのまま空中で気絶した。
フレアフォームを解除して体を地面に固定する為に刀を地面に突き刺そうとした瞬間、高速で迫る人影が横から現れ俺の顔面に向けて何かを近づけてきた。
これ…ナイフじゃねぇか!
咄嗟に奴の右肩から刀を抜きその斬撃を防ぐが、その斬撃はまるで新幹線にでも突っ込まれたかと錯覚するほど重く防御に出した刀が簡単に折られた。
その衝撃で吹っ飛ばされるが両足を使い地面を土埃を上げながら減速していく。
「クッ…誰だお前?」
その人物はツイストパーマのかかった灰色の髪をしており身長が180はある20代後半程の男だった。
口を開けたかと思うと男が発したその声は栄田会長並みに低く、上から潰されるかのような強い圧が体にかかった。
「お前か?コイツやったの?」
__現在の時間 12時29分




