3章6話 信じるべきは?
やっとランキングが落ち着いてきた…
喜んでいいのか悪いのか…ともかく完結までは必ず頑張ります!
翌日、昼にたくさん寝たせいかあまり眠れないまま夜を過ごした私は閉じそうになる瞼を必死に開けながらリュイの仲間の紹介を受けていた。
「こっちがミルラ、水属性の魔法使いだ。」
薄緑の長い髪に如何にも魔女っ娘な黒防止と黒ローブの装いをした若い女の子。見た目的に10代後半ぐらいだろうか。
「で、こっちがベグ、戦士だ。」
茶髪のガタイのいい青年。歳は少し堀が深いせいか老けて見えるがなんとなくリュイと同い年ぐらいな気がする。
「一応僕が魔法剣士…ってやつかな。火属性の魔法なら大体扱える。」
魔法剣士と聞いたナ―シャが驚いていた。後で調べたのだがこの世界において剣も魔法も高水準で扱える人は少ないらしい。
なんにせよたったの三人だが戦力になりうる逸材だらけだ。これならば私の計画は無事遂行できる…
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「とも限らないんですよねぇ…」
昨日アラキナが言っていたヴィンセントの魔力を感じたという話。今他の二人はどうなのか確かめてもらったがどうやら感じたのはリュイだけらしい。
「貴重なものだったから…あんまり使いたくないんだけど…仕方ないよね…」
私は荷袋から白色に発光している石を取り出した。これは奥の手…というよりかは計画で扱うための魔道具である。魔石とも呼ばれるのだが、専用の石に使用したい魔法の魔法印を刻んだものである。
「グランツェさん……本当に、本当にありがとうございます。」
その、専用の魔法印を見つめて協力してくれたかの人に礼を述べる。当然、届くことは無いのだが…
ともかく試してみようと拠点の方に行ってしまったリュイの背中を探す。何やら私の知らない人と話しているみたい。割って入るの、ちょっと緊張するな…
「リュイさん、少しいいですか?」
リュイを呼び、人気の少ない場所で二人きりになる。仮にリュイに掛かっているであろう魔法を無力化しても他の人もかかっていたなら…考えたくはないが可能性はある。そのため、誰にも見られないであろう倉庫まで来た。
「リン、何か問題でも…」
リュイが何か言う前に、魔石をリュイに握らせた。その、瞬間…何か、黒い何かがリュイの身体から溢れ…抜けていく。それは次第に少なく、小さくなりしばらくすると出てこなくなった。
リュイの様子を伺うと黒い何かが出ている最中は苦しそうだったが今は…なんというか、貯め込んでいたものから解放された顔をしている。
「……今…何が…」
「手短に聞きます。貴方は…ヴィンセントの仲間ですか?」
仮に…はいと答えたならどうしようか。情報源として生かす?でも…もうアラキナやクロウのおかげで大抵のことは知っている。…正直な話、リュイとはほとんど関わりが無かったし、これから先邪魔をされるのであれば…
「えっと……ヴィンセント様の仲間?っていうのは分からないけどヴィンセント様には昨日会って話したよ。何か…焦った表情をしていたけど。」
…少し、胸の内が軽くなった。好きで人を殺したことなんてない。…なんなら、この世界に来てからは一度も…この手は汚れていない。
そう考えたらもしかして私…この世界ならちゃんとした医者になれるんじゃ…
じゃなくて、今はヴィンセントのことだ。
「……ならば、構いません。貴方に何か魔法が掛けられていたのでそちらの魔石で解除しました。今日の出立は止めて明日にしようと思うので今日は休んでおいてください。」
「…また、助けられたね。」
「必要な事だから、です。」
……私はその場を去る。皆に伝えなければ。それと…これからは、安易に人に近付けなくなるかもしれない。だって、今回の件。リュイですら自身が魔法に掛かっていると気づけなかった。それはつまり…
ヴィンセントの魔法が完成しつつあるということなのだ。
「信じてる人達を利用されたら…私…」
どうすれば、いいんだろう?
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「昨日は悪かったよ。少し体調が優れなくってね。」
リュイの魔法を解いて1日経った後、ようやく目的地へと進むことが出来る。
私はと言うとまたも夜中考え事をしていたため少し眠たい。
「…今は目の前のことに集中しないと…」
私たちの目的地、というのが…魔物の発生源である『卵』と呼ばれるものだ。『卵』は魔力が集まり形を作ったものらしい。ものによって形は変わるが球体が多いから卵と呼ばれるようになったそうだ。
「ここからは徒歩で移動する。魔物があまり通らない道を知っているから僕が先頭を進むよ。離れないように気を付けて。」
ある程度馬車で荷物を乗せて進んだ後、リュイが言った。これ以上先は馬車の移動は目立ちすぎるらしい。
「この一本木が目印になる。もしはぐれたらここに向かって欲しい。」
こくりと頷くとリュイが進み始める。私達もそれに続いていく。
くねくね、くねくね、くねくね、…めっちゃ曲がるね?
1時間ほど変な道を通ったあと、急にリュイが立ち止まる。
「……見つかったか…」
突然、リュイが立ち止まり、呟く。見つかったって…もしかして…
「リン様!」
ナーシャが私に抱きつき、防御魔法を詠唱した。
次の瞬間、空から巨大な生き物が突撃してきて…
「『エンチャント・フラム・エッジ』」
リュイが即座に火属性の魔法を付与した剣で魔物を切りつける。
「はぁぁぁぁ!!!」
「『ファル・アクアレント!』」
次いで冒険者2人もそれぞれ動く。ミルラの水魔法により怯んだところを大剣によって攻める。しかし魔物も易々と喰らわず、交わしてベグを迎撃した。
「ギィィィィ!!!」
魔物は腹にかすり傷を負った。そのためかこちらを睨み…威嚇している…いや、これは…
「キィィィ!!」
「なっ…」
魔物の鳴き声により、更なる魔物が寄ってくる。
その数は10程。…それも最初のものよりも巨大な個体が何匹も。
「…ナーシャ、必ずリン様をお守りなさい。ここは私が…」
「アラキナ!」
フィオナが動くよりも先に、私が言うよりも先に、既にアラキナは動いている。
緊急時の対応は任せると事前に言ってあったから。
「『ノヴァ・マグナス』」
その手から放たれるは小さな球体。それが空を支配する魔物に向けて接近し……
一瞬の収縮の後、爆発する。
「直ぐにここを離れましょう。リュイさん、案内お願いします。」
皆が驚く中、私は口を開く。かなり派手にやったため恐らくはまた魔物が寄ってくることだろう。
「あ、あぁ!皆、こっちだ!」
動揺しながらも判断の速さは流石といったところか。リュイは自ら先を行く。その足取りはどこか…重く見える。
「……リュイさん、一度休憩しましょう。身を隠せる場所はありますか?」
私は何となく今起きていること察したため、提案した。
「っ……分かった。こっちだ。」
その顔は…また迷惑をかけてしまった、というのが見て取れた。
…皆には内緒にしておこうか?
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「………パサパサしてますね。」
「口が乾きます…」
フィオナから手渡された携帯食料を口に放りながら、呟く。それにしてもこれはなんなのだ…見た目はまるで粘土のようで味は見た目からも想像できる通り、味がしない。とにかく栄養が取れればいいとでも言いたげだ。
そのせいかナ―シャの顔が若干やつれている様に見える。…後で美味しいもの食べに行こうね…うん。
「これ…ヴィンセントもよく食べてた……あんまり美味しくないのに味の種類がたくさんあるんだよね。ニッチな人がいるみたい。」
「へぇ…ちなみにそれは?」
「確か……なんかの木の実の味だったと思う。…ほら、どう?」
「んむぅ!?」
半ば強制的にそれは口に放られた。これは…うん、これは…味、無いね。
「…おいしくない…」
「そんなに酷いかな?」
私達があまりにも言うのが気になったらしい、三人で話していたところを抜け出してきたリュイが口を挟む。なんでもこの携帯食料、野宿などの際に冒険者はよく食べるらしい。正気の沙汰じゃない。
「これを常食するなんてありえません。味覚を捨てるぐらいなら死んだ方がマシです。」
「味覚は捨ててないよ…食は旅の醍醐味だしね。ただこれしか無いから仕方なくさ。」
ははは、と笑いながらリュイがナ―シャの言葉に答える。
その様子を見ているとアラキナが耳元まで寄ってきた。その顔には少し汗が滲んでいる。
「リン……その、リュイは…」
「昨日使いました。アラキナの情報は正しかったみたいです。」
「…そう…」
少し表情が柔らかくなった。先に共有しておくべきだったかもしれない。でも昨日は私も色々と考えが纏まらなくて大変だったのだ。
「少なくとも今のリュイさんからは敵意を感じないので要観察…でしょうか。…あ、あと彼、足を怪我しているみたいなので治してあげてください。」
「え、そうなの?」
「はい…走るときの姿勢が少しおかしかったので。」
あの時…アラキナの放った魔法に皆気を取られていたから気付かなかっただろうが…間違いなくああいう重心をずらそうとする走り方は怪我をしている証拠だろう。
私が言ったからか、一応魔法が解けているからか、納得はしたようでアラキナはリュイの方へ寄って行った。
「…あとちょっと…」
今までも『卵』まで到達しようと考えた人はいた。ただ…もう歴史としては幾度目かの魔物の異常発生なのに誰も実行しないのか?それはかつての大英雄ヴォルガン・シルヴァーナやセレンディス・エーテリアなどの大魔法使いらが成し遂げてきた偉業なのだ。それが偉業と言われる所以…今回の件のために調べてきた…そう、それが…
「誰も生きて帰れたことが無い…か…」
至極単純…それは強大な魔物によるものなのか。それとも多大な魔力によるものなのか。将又…何者かによって憚られているのか。理由は誰も分からない。ただいつも、定期的に表れては一つの季節を超えると徐々に消えて行くらしい。
「…またこれも…あなたが関与しているのですか?ヴィンセント様。」
仮にも賢人なのだろう?私の考えぐらい、読み取って先回りしてくれなきゃ…でなきゃ…
「これでも私、誰かと競うことは嫌いじゃないんですよ。」
噛み応えが無い、というものだろう。
アラキナは基礎魔法の上級までならどの属性も扱うことが出来るとされます。しかし無闇矢鱈と使いたがる性分ではないのと単純に魔力消費が激しいのであまり使いません。
リンは争いごととまでは言いませんが誰かと競うことは成長において重要なことと認識しています。ただ、前世同世代とは差がありすぎてそもそも競うということすら出来ていませんでした。ある種ヴィンセントはいいライバルなのかもしれません。




