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2章8話 信頼できるあんたに

ちょっとここからテンポが早く感じるかもしれません!

 最初の授業から数日間、授業し、休憩におやつだったりのご褒美を与える。つまりはよく学びよく食べるという健康のための第一歩を繰り返していた。

 ライオット達はするすると学んでいきあっという間にニアやフェナの学ぶ内容を追い越していた。

 若いからかとても呑み込みが早いし何故か意欲がすごいのだ。授業の時間外でも私に質問したりしてくるのだ。

 ニアは…多分、普通ぐらいのペースだと思う。フェナのやる気が無さ過ぎるのが…ちょっと問題かも。ルアンはとてもよく頑張ってくれていてライオット達と競っているのか最近はよく一緒にいるのを見かける。


 何事も無く…平和で、とてもいい日常である………


「あれ?」


 何か忘れている。えっと…私は、ここに来て…いやそもそもここに来たの事態偶然で、最初は…


「そうだ。ヴィンセントを調べるんだ。」


 当初の目的を忘れているではないか。あまりにもここに来て事が起こり過ぎていたのだから、仕方ないと言えば仕方ないが…


「この孤児院はヴィンセントの管轄だったって話だし…書庫になら何かあるかも?…後、グランツェさんにも何か聞けるかも…いや、あの人のことまだ何も分からないし…うーん」


 どこから手を付けようか。教育も落ち着いてきたし、そろそろ何か動きたいところだ。

 私が唸っているとコツコツ、とドアをノックする音がした。


「ねーちゃん、ちょっと頼みがあるんだけど…いいか?」


 ドアの前にいるのはどうやら以前と違いノックという方法を覚えたルアンだった。

 特に断る理由も無いため私は入るよう促す。


「うん。どうぞ。」


「失礼、します。」


 部屋へ入ってきたのはルアン…と、橙色の鬣を今日は後ろで結んで纏めているらしいライオットだ。

 なんというか、並んでいると随分とライオットがでかく見えるね…

 ちなみに今丁寧語で挨拶したのはライオットである。


「ライオが話があるから取り次いでくれって言ってたんだよ。聞いてやってほしい。」


「分かった。教えてくれてありがとうね。」


「おうよ!」


 どうやら本当に用があったのはライオットの方らしくルアンは部屋を出ていった。

 ライオットは気まずいのかしばらく立ったまま俯くので私はひとまず座ることを勧めた。するとのそのそと動き出し、ぎこちない動きで座ると意を決したようで口を開いた。


「その…まずは、謝らせてくれ。あの日、あんたを疑って、悪かった。」


 何を言われるか少し緊張していたので最初が謝罪で少し驚いた。別に気にしてないがそれで彼の気が済むのならいくらでも聞こう。


「全然、寧ろ疑いを忘れないのはいいことだと思いますよ。それは学びたいという欲に繋がりますから。」


 私の言葉に安心したのか胸を撫でおろし、緊張している顔が崩れた…のは一瞬で、また険しい顔になった。


「…ありがとな。…ここからが本題なんだ。あんたなら、信じられると思って…話す。」


 信じられる、と思ってくれたことがうれしかった。いけない、話を聞かなきゃ。


「あんたに…この孤児院に、入れてやってほしい奴がいるんだ。」


「入れてやってほしい…?」


 絶賛空き部屋だらけなので入居者は構わない。ただ偶の散歩でここいらを練り歩いても孤児は見当たらないのだ。警戒されているからか、単純にいないだけか。理由は定かではないが…


「あぁ。そいつは…俺の、いや、俺たちの妹分なんだ。」


「妹分、ですか。」


「そうだ…ただ、そいつ…ラフィって言うんだが、ラフィは身体が弱くてな。今はあっち側の街の親切な医者に診てもらってるんだ。…ちなみに、ちょうど医者に見せに行くときにルアン達にここを占拠されたんだよ。」


「なるほど…」


 あっち側、というのは中央よりの、アルカナリス内の町医者ということだ。

 なんで留守にしていたのか分からなかったがようやく理由が分かって少し納得した。ここまで用心深い子達がそう簡単に屋敷を留守にするとは思えなかったから。ただ彼らの境遇では人一人を運ぶのにも苦労しただろう。


「その医者の名を教えてもらえますか?すぐにでも向かいましょう。私だけでは話が通じないかもしれないのでライオットさんと……ケニーさんも着いてきてもらえますか?」


「…!分かった!すぐに準備してくる!」


 その目が、輝いていた。ようやく会える妹のことを思ってか。

 …なんとなく…嫌な予感がするんだよね。一応ナ―シャさんにも動いてもらおうかな。

 あ、それとついでに…治癒院にも顔見せに行こうっと。なんというか、グランツェさんって放っておくと倒れてる気がするんだよね…



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「なぁ、俺たちが言っていいことじゃないのは分かるんだが…なんで馬車を使わないんだ?」


 険しい階段を昇りながらライオットに尋ねられる。どうやら彼は…息が上がっていない。かなり余裕らしい。流石元スラムで生きていただけはある。


「そうだよ。無理して渡ること無いんじゃないのか?」


 そしてもう片方、私を挟むように隣にいるケニーも同様に私を心配している。

 彼は少し疲れているみたいだね。やっぱりどっかの誰かさんに突かれた傷があって最近動けてなかったみたいだからね仕方ないね。


「いえ…多少疲れますが運動になるので…後、馬車は勘弁です。」


「あ~…確かに無理な人は、本当に無理だからな。」


 ライオットがまるで乗ったことがあるみたいに言った。私は全力でその言葉に同意する。


「そう、ですよね!分かりますか?」


「いや…前乗ったのは商人の護衛だったからな…かなりいい馬車だったからあんまり揺れなかったんだよな…」


 なんと、この世界でのいい馬車は揺れないらしい。今すぐにそれを孤児院で使えるようにすべきかもしれない。主に私とナ―シャさんのために。


 そんな雑談を交わしながら階段を昇っていくと所謂中級区、普通の平民が住む所に入った。そこでようやく住宅街へと歩みだす。

 ぐっばい階段…!帰りはボコボコだぜ…


「なんというか…結構薄暗いところにあるんですね。」


「あぁ、個人店だからな。」


 …出る前に感じていた嫌な予感が当たりそうな気がしてならない。個人のものというのは大抵信頼出来るか怪しいもので、この世界では特に、日本のように治安がいいわけではないのだから余計に…である。


「ついた。ここだ。」


 何回か路地をくねくね曲がって、ようやく着いたのはポツンと佇む、黒い外壁の如何にもな所だ。一体どうやってここを見つけたというのだ。


「おい、じいさん!いるか!」


 ゴンゴン、という勢いでドアをノックするライオット。近所迷惑…を気にすることもない、か。

 しばらくするとゆっくりとドアが開かれ…本当にそれっぽい、なんというか魔術師みたいなローブを被った怪しい老人がのっそり出てきた。


「アンタ、誰よ。」


「一週間ぐらい前にうちの妹を預けたと思うんだが…」


「名前名乗りんさいよ。契約書探してくるわ。」


 さっさとせい、とでも言いたげである。少し…イメージとは違ったがやはり怪しさがとんでもない。


「ライオットです。」


「……うーん、覚えとらんねぇ…」


「はぁ!?」


 今にも掴みかかろうとしたため私はそれを右手を上げ静止した。そして…懐に仕舞っておいた金貨をするっと老人の手に滑り込ませる。


「…あぁ、なんか思い出してきたわい。あの橙色の髪のガキね。魔力欠乏症だったからポーション飲ませて寝かせとるよ。」


 はいこれ治療代、とさっきのは情報量とでも言いたげに契約書を持ってきた。中々、中へ入れてもらうだけでも苦労するなぁ…


「容体を見せていただけますか?」


 私が口を挟むと老人は不満げな顔になった。…やっぱり、侮られているのか?


「儂は客としか話すつもりはないのでな。」


「そうですか。…一応、私は正式な治癒士です。知っていますか?この国における治癒の規定を。」


「っ…」


 これは揺さぶりだったわけだが…案の定、この老人は違法な医者、闇医者というわけだ。これに反応しちゃ分かるよそりゃ…


「さっさと引き取って帰っておくれ。」


 この交渉は私の勝ちだ。今回は見逃してやるからさっさと通せ、という半分脅しだったわけだが。

 ともあれようやく店の中に案内された。中には魔道具らしきものや、魔法式が書かれたスクロールが売ってあった。本当に医者というよりは魔術師みたいだ。


「ここさ。」


 奥の方の部屋に案内され、中に入ると確かに橙色の髪をした少女が簡易な寝台で寝かされている。

 …ライオットに似てるね。少し。


「らfむぐぐぐ?」


「静かにしろ!寝てんだから…」


 叫びそうになったケニーをライオットが抑えた。判断の速さが素晴らしい。


「…魔力欠乏症、ですか。」


 名前と症状は知っている。本来体内に流れ溜まっていく魔力が使っていなくても勝手に排出され、排出量が溜まる量を越えた状態のことだ。原因は分かっていないらしい。


「ポーションは飲ませたんですね?」


 この病気の対処法はポーションによって魔力をいっぺんに溜めることしかない。しかもそれでも一時的にしか対処できない。いずれはまた魔力が欠けていく。


「高いの使ってやったんだ。そこの坊主がどうしてもって言ったからな。」


「そうですか。ではお代は…これで構いませんか?」


 金貨を二枚。今度はしっかり手渡しする。老人はそれを見ていやらしく笑った。

 ようやく見知らぬガキから金払いのいい良客に認識が変わったらしい。


「毎度。もう行って構わんよ。」


 上機嫌に言ってさっさと店の別の部屋へと消えて行った。


「なんなんだ…あの爺さん…」


 ケニーは唖然としていた。ただ…ライオットは、違った。驚愕、している。

 あー…そういえば、最近はお金の勉強させてたっけ。


「いいのかよ…」


「お金で救える命ならば何も問題はありません。」


 時にお金があっても命が救えないこともあるのだから。お金などまた稼げばいいし…


「ラフィさんをお願いできますか?この後少し行くところがあるので着いてきて貰いたいのですが…」


 無理ならまた帰りにここによるだけだがライオットは眠っているラフィを軽々とおぶった。

 そしてグットポーズを見せつけてくる。余裕の表しだろう。


「では、行きましょうか。」


 ひとまず回収は済んだ。…私の今月のお小遣い消えちゃったけど、ね




リンのお金は約2ヶ月シルヴァーナ領で働いた分から切り崩しています。

金貨は日本円にすると1枚10万円。大体リンの1ヶ月の給与は金貨5枚です。月に使っていいと思ってるお小遣いは銀貨4枚(1枚1万)らしいです。

当分リンちゃんはお小遣い無しということですね。

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