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2章5話 医者が風邪引いたらダメじゃん…

 朝、それは一日の始まりだ。私はいつものように早起きし、優雅にコーヒーを用意する……ことが出来なかった。


「……眠い。」


 鏡を見れば目の下にクマが出来ていた。昨夜は眠れなかったのだ。主に昨日ルアンに言ったことを気にし過ぎて。


「リン様、おはようございます。朝ごはんが……」


 ガチャりと、ドアを静かに開けてナーシャが入ってくる。

 こんなに気色の悪い顔を見せて申し訳ないがもう少し寝させて欲しい。


「……少々体調が優れないのではないですか?」


 ジッと、私の顔を見つめてナーシャが問う。言われてみれば確かに、少し体がだるい気はする。


「……そうかも、です……」


 なんという恥か。医者が体調を崩してどうするのだ。


「昨夜は冷えましたし、旅の疲れもあるのでしょう。お薬は何処にありますか?」


「私の、荷袋に。」


「かしこまりました。朝食は食べられそうですか?」


「暖かいものが欲しいです……」


「芋のスープがあるので、後で持ってきますね。今日はどうかごゆっくり、後は私にお任せを。」


 慌ただしく部屋を出ていった。本当に申し訳ない限りだ。

 でも……最近はゆっくり出来なかったし、その上昨日の騒動もある。この身体なら体調を崩してもおかしくは無い。


「考えてると頭痛くなってきた……寝よ……」


 自覚するとよりキツくなるのはよく聞く話だ。

 例え医者だろうと既に掛かったものには対処療法しか無いのだ。


「ぁ……ねむ……」


 少し欠伸をしたあと、私は目を閉じ眠りについた。


 -----------------


 懐かしい夢を見た。


 昔も昔、まだ両親が生きていた時に……今みたいに私が熱を出した時のこと。


「苦しいよぉ……お母さん……」


 私は幼い時から頭は良かったのだがどうにも体調が優れない時期があったらしい。


「大丈夫よ。凛。お母さんがずっと見てますからね。」


 ギュッと、私の手を握ってそう言ってくれた。

 側にいて、触れ合ってくれるだけで私は……とても、満たされたのを覚えている。


 -----------------


 熱の暑苦しさと、汗の気持ち悪さで急に目が覚めた。最悪の目覚めである。


「う……んん……ん?」


 喉がカラカラだ。そういえば寝る前に何も飲んでいなかったことを思い出す。


「……あれ?」


 私の寝ていた寝台のすぐ側のテーブルに、スープが置かれている。これはナーシャさんが持ってきてくれたのだろう。

 そして……何故か私の手を椅子に座ったまま寝ているルアンが握っている。


「ふふ……」


 思わず、笑みが零れた。まるで夢で見た光景と同じなこともそうだし……ルアンがきっと私を心配してやってくれたことであるというのも。


「ちょっと元気になったかも……ありがとね。」


 寝ている彼には聞こえないだろうが感謝の意は伝えておく。多分、起きてたら言えない気がするし。


「このベルを鳴らせばいいのかな……?」


 スープの近くにベルが置かれてある。何か用がある時は鳴らせということだろう。

 少し名残惜しいが、ルアンの手を解き、私は卓上のベルを鳴らした。


 -----------------


 翌日には、随分と体調も良くなった。多分ポーションの影響が大きいんだと思う。

 何はともあれ昨日は迷惑をかけたし……まずは謝ろう。そう思い階段を降りていく。


「おはようございます。リン様。お加減はどうですか?」


 ナーシャが一番に挨拶してくる。返事をし、ダイニングの方へ進む。


「あ……そっか。」


 ダイニングには見知らぬ男の子が5人、大人しく座っていた。なんだか落ち着かないようで視線を彷徨わせている。


「えっと、一昨日の子達、だよね?」


「はい。」


 5人は私とナーシャの存在に気付くとビクビクと震え始めた。

 ……昨日のうちに何かあったのだろうか。


「どうにも昨日……騒がしかったので、少し躾を。えぇ……そうですね?」


 ほぼほぼ脅しだったがその事実確認に5人はコクコクと頷く。

 やっぱり思うけど、シルヴァーナ家の従者ってなんで皆こうなんだろうか。


「大人しくリン様の話を聞けますね?」


 コクリと頷いたのを見てナーシャは「よろしい」と笑顔で言った。笑顔なはずなのに笑顔に見えないのは何故だろうか


「じゃあリン様、お願いします。」


「えっ、あっ、はい。」


 ……流されるまま返事をしたが何の話をするんだっけ……あぁ、確か昨日、具合が良くなった頃にこの子達について聞いたんだっけ。それで私は…


「今日は、貴方たちの健診を行います。」


「ケンシン?」


 あの子達も纏めて健康診断すると、言ったはずだ。……合ってるよね?合ってるぽい。ナーシャさん頷いたし。


「貴方方が元気かを診ます。仮に元気だと思っていても病気などは急にくるものです。」


「そうなのか?」


「さあ?」


「とにかく、11時頃に空き部屋に来てくださいね。」


「はーい。」


 分かっている様子ではないがともかく来てもらえればそれでいい。私はそれまでに準備だ。

 

 -----------------


 準備は5人と先に見つけた3人の情報をまとめるところから始まった。


「名前がカルア、イグマ、レイ、ライオット、ケニー。年はそれぞれ大体だけど14、15、13、18、17。ライオットが性格的にも、年齢的にも5人をまとめるリーダーってところかな。」


 紙にさらさらとナーシャから聞いた内容を纏めていく。ついでに名前も覚えられるように復唱する。


「で、こっちがルアン、フェナ、ニア。7歳、8歳、12歳でニアだけ少し痩せ気味のニアとフェナが姉妹……どちらかと言えばルアンが2人を引っ張ってる、のかな?」


 私から見た印象だがどうもニアとフェナは私と同じ気がする。気のせいじゃないと思う。

 それに、ビルグレイはニアとフェナのことを知っていた。多分あの二人は元より孤児院に居た、ということじゃないか?


「……これからお話するわけだし、考察はこれぐらいにしようかな。」


 健診、と言えば雑談も含む。理由は気軽に来て欲しいとか、緊張をほぐす為だとか。私は外科が主だったからあまり無かったわけだけど……

 私自身が緊張している。


「とりあえず、ナーシャさんには冷水を用意してもらおう…いつ気絶してもいいように。」


 流石にそこまででは無い、と思いたいが念の為である。

 そんな少し物騒な方法を考えているとガチャりと空き部屋のドアが少し開かれた。その隙間から褐色の顔が覗いてくる。ルアンである。

 まだ診察には早い時間なのだが何か用だろうか。


「どうしたの?」


「あ……えっと……」


 珍しく、いつものようなハキハキと言う風ではなく少し恥ずかしそうに、身体をくねらせて何か言いたげである。

 私は大人しく彼の言葉を待つ。私も……その気持ち、分かるからね。


「な、何か困ってることは無いか?ほら、ねーちゃん病み上がり?ってやつなんだろ?」


 覚えたての言葉なんだろう。自分の言葉に疑問符を浮かべながら心配の言葉が掛けられた。

 驚きで、しばらく動けなかった。経ったの一晩…正しくは二晩でここまで人との距離を詰められるようになったということに。


(私、成長したよ!お母さん!)


 私が自身の成長を噛みしめているとルアンが落ち着きのない様子で視線を彷徨わせている。

 あ…危ない危ない。完全に浸るところだった。


「大丈夫だよ。昨日はしっかり休ませてもらったからね。それに…」


 昨日の寝起きのことを思い出して…口に出そうになったところで口を抑えた。

 わざわざ寝ているときのことなのだ。あまり掘り返す必要もないと思う。うん。


「それに?」


「なっ、なんでもないよ。うん。とにかく体調は大丈夫だから!」


「?そっか…なんかあったら言えよな!なんでも手伝うぜ!」


 不思議そうな顔をした後二パッと微笑みながらなんでもすると言って去っていく。

 …優しい子だ。初対面でボウガンを向けてきたのが懐かしいなぁ…

 そんな風に初日のことを懐かしみながら私は作業を続けるのだった。


 -----------------


「うぅー…緊張する…」


 今は指定した時刻の5分前。既にルアンに頼んでここにいる全員を呼んで指定した空き部屋に来るように言ったのだ。

 ただ、やはり直前になって緊張感が込み上げてきた。やっぱり知らない子と喋るの怖い!

 …待てよ、喋るのが怖いなら…そうだ、相手をただの患者だと思えば…

 前世、人と話すことが絶望的にできなかった私は相手が患者であるなら会話の主導権を握れることに気付きそれ以来一方的な対話のみですべてを済ませてきた。…当然反感もよく買ったが。


「背に腹は代えられない…」


「何覚悟決めた顔をされているのですか?」


 桶に魔法で張った水に氷を入れながらナ―シャが問う。

 ぜひともその用意が必要にならないよう頑張ろうと思う。

 そんなやり取りをしながら書類を整理しているとドアがコンコンとノックされた。どうやらおでましのようだ。


「えっと、どうぞ、お入りください。」


 どこかの病院で働いていた時の診察時他の人がやっていたのを思い出しながら言った。

 上手く言えたかな?ちゃんと聞こえたかな?


「入っていいのか?」


 ドアが開かれ、橙色をした鬣のような髪をした男が顔を覗かせる。彼がライオット。ちゃんと年齢が上の人から…だね。

 頑張るぞ、と心の中で唱えながらライオットを見つめる。


「座って構いませんよ。」


「あ、あぁ。」


 私の座る椅子の前に用意された椅子へ進める。恐る恐るといった様子だが座り、ライオットもこちらを見つめてくる。

 …まずは…


「なぁ、ほんとにあんたみたいなのが医者なのか?」


 私が何かを言い出すよりも先に、ライオットが口を開いた。あれ、どうしよう。何か言われたときは……

 黙らす…じゃなくて笑顔で応える!


「はい。気になるならどうぞ。これが資格です。」


 治癒士資格を渡しながら笑顔で応対する。危うく物騒な手が出そうになるところだった。


「…文字が分からねぇ。」


 頭を掻きながら資格を睨みつける。…確かに、文字が読めなかったら疑いたくもなる…か。


「それも後々教えましょう。今は診断が先です。服を捲ってもらえますか?」


「分かった。」


 まだ完全には信じていないだろうが、それも追々証明すればいいのだ。

 今はこの子達に病気が無いかを確認しておきたい。これまで不衛生な場所で不衛生な生活をしていたのだ。何かあってもおかしくないのだ。


「失礼します。」


 断りを入れ、胸部に耳を立てる。聴診器などという便利なものは無いため大体はリズムが変で無ければよしとする。

 …ちゃんお風呂に入ってもらったみたいだね。ナ―シャさんナイス。


「戻していただいて構いません。」


「おう…」


 何だったんだ今のは、とでも言いたげである。

 次は…


「私の質問に答えてください。まずは…ここ最近、体調が優れなかったり、何かおかしいなと思うことはありましたか?どんなに些細なものでも構いません。」


「ねぇな。」


 きっぱりと即答する。まぁ、ぱっと見た感じから少し不衛生なだけで健康であることは分かる。


「最近の寝る時間は?」


「決まってねぇけど大体日が昇ったらだ。じゃないと下手に動けないからな。」


 夜中は活動時間、ということだろう。それだけでどれほどの境遇だったかが分かってしまう。


「…そうですか。なら次は─────」


 その後、特にこれといったことも無く、ライオットの診断を終えた。


 残り、7人。正直胃が痛い…


文字数いつも4000ぐらいでまとめようとしているのですが中々想定通りにいかず…

リンちゃんとっても成長してます!

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