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2章4話 まだ子供。

 件のならず者、というのはどうにも5人ほどの…子供の集団らしい。

 子供、といっても彼らよりも年は上で聞いた話によれば多分高校生か、中学生ぐらいの年齢だと思う。

 そしてその子たちはスラム街の中心になっていた人物で子供達だけで移転されたこの建物は都合のいいもので、奪ったという話のようだ。

 ともかくいつ帰ってくるか分からないため私はナ―シャとルアンを連れて罠の設置をしていた。


「あまりいい気の話ではありませんね。」


 作業をしながらナ―シャが呟く。私もそれには同感である。

 せっかく助け合えるだけの人がいるというのに…なぜ争い、奪い合ってしまうのか。


「子供だから、仕方ないんです。きっと彼らも『知らなかった』んです。そうする以外の方法があるということを。」


 私も作業の手は止めずに呟きに対して自身の見解を述べる。

 …よし、罠の設置はこれぐらいでいいかな。


「なので、教えてあげましょう。ですがその前に…仲直りの話し合いが必要ですから。」


 私がそう言って汗を拭っているとナ―シャが手を止め何やら考え込んでいる。


「どうかしましたか?」


「いえ…ただ、いつも思いますけど、リン様ってなんかとても10歳児には見えませんよね。」


 …自覚はあるよ。だって私一応中身は18だもん。


 -----------------


 ~2時間後~


 部屋の掃除をしたり、浴室が使い物になるようにしていたら日は完全に暮れ辺りは暗闇に包まれていた。

 静かな夜。真っ暗な街。しかしその中でたった一軒。私達のいる屋敷は光を放っている。


「来ましたね。」


「はい。作戦通りに。」


 私達は正面玄関の左右の茂みに別れる。ルアンは屋敷の二階からランタンを振るってもらっている。


「なぁ、また奪われたのか?」


「懲りないガキ共だよ。どうせ。」


「見ろよ。なんか灯りを灯してやがる。なんだ?あれ。」


「つーかいい匂いしないか?もしかして飯でも食ってんじゃねえのか?」


「はぁ?ここいらに食べるものなんざねえだろ。夢見てんじゃねえよ。」


 5人が、会話をしながら入ってくる。私はその5人を観察し……無力化する。


『1人目……背は低く痩せている。足に傷がある。』


 その傷目掛け、糸をしなるように振るった。柔らかくも鋭い糸はその傷を容赦なく抉った。


「ってぇぇ!!!」


「なんだぁ!?」


「遅いです。」


 すぐに振り向いた1人はナーシャにより組み伏せられる。男と女、されど相手は痩せた子供。負けるどおりがない。


「待ち伏せだ!」


「1、2、3……今。」


 相手の歩数に合わせて仕掛けた罠を起動させる。私がその糸を引くと叫んだもう1人の足が結んだ草によって引っ掛けられそのまま落とし穴に。

 古典的な罠だが、この世界における戦いというのは魔法が主で……こういったものは寧ろよく効くはずだ。


「くそ!どこだ!」


 私たちの姿は暗闇に紛れて見えない。それは私達も同じ。だから物音と声だけで位置を割り出している。

 そんな……暗闇の中。明かりが1つでもあったら?

 ───────視線が一瞬でも誘導される。


「見ましたね。」


「なっ!」


「上出来です。」


「ぐぅ!?」


 ナーシャが一人、腹を殴り気絶させ私が最後の一人を後ろから肩に飛び乗って首を絞め気絶させた。

 これにて……無力化完了である。


「上手く行きましたね。」


「はい。流石リン様の作戦です。」


「ナーシャさんが居たから上手くいったんですよ。」


 これは謙遜でもなんでもない。本当に……あまりにもパワープレイが過ぎるのだ。ナーシャは。

 作戦を建てる際彼女はこう言ったのだ。


「小童ごとき3人ぐらいなら素手で無力化出来ると思います。」


 である。

 実際発言通り。私が設置した罠は全く使わず闇討ちだけで気絶させていったのだ。腹パンで。

 あの子たちも後で健診してあげなきゃ……


「早く中へ運びましょう。……くちゅん!……夜は冷えますから。」


「そうですね。」


 クスッと笑いながらナーシャが少年達を拾い上げる。相も変わらずすごい力である。

 ……うぅ、寒い。


 -----------------


 屋敷に戻り、少年達をダイニングへと運んだ。

 ダイニングではビルグレイとニアとフェナが居たがニアとフェナはビルグレイに引っ付いて眠っている。


「おぉ、リンちゃん。戻ったのかい……って、なんかいっぱいいるネ?どしたの?その子達。」


「例のならず者、ですよ。ナーシャさんが一掃しました。」


「はい。息はしてるので死んでは無いはずです。」


 ドサッと、雑に広いスペースに並べられる。

 少し可哀想だが人数が多いのだ。仕方あるまい。


「そっかぁ〜この子達忘れてたみたいだから助かったヨぉ〜。で、その子達どうするの?」


「起きてから決めますよ。……後これは決定事項なので言っておきますが明日はここで簡単な健康診断を行うのでそこの2人にも言っておいてください。」


「りょーかい。じゃあ僕はこの2人を部屋に運んだら寝るねぇ。おやすみぃ。」


 ニアとフェナを抱っこして上の階へと登って行った。

 私達も寝ようかな……いや……まだやってない事があるではないか。


「お風呂入ります。」


「リン様?」


「入りたいんです!もう3日も入れてないです!そろそろ限界です!」


 せっかく掃除したのにお預けのまま寝てたまるか。

 それにこの街に来るまで馬車での移動だったのだ。正直水の魔法石で体を洗うだけじゃ我慢ならない。お湯に、お湯に浸かりたい。


「なんだよ、そのオフロ?っての。」


 なんということだ。ここに一人、お風呂の大切さを知らない子羊が居るではないか。


「ナーシャさん、お湯の準備をお願いします。私がルアンを連れて入ってきますので!」


「え、えっと、良いんですか?」


「良いので早く!」


「はぁ……分かりました。リン様が良いのであれば…」


 私の剣幕に押されナーシャは浴室の方へ向かっていった。


「やっと綺麗に洗える!行くよ!着替えはある?」


「なぁ、オフロって」


「無いなら貸すから!」


「なぁ聞け」


「ほら!」


 私は強引にルアンの手を引き浴室へと向かった。

 多分興奮のあまり冷静じゃなかったと思う。


 -----------------


 私は、なんと愚かなことをしたんだろうか。


「…………」


 心を無にして、ルアンの髪を洗う。

 ここまで来てようやく私は自分のミスに気付いた。


「これなんだよ〜目が染みて痛い!」


「……あっ、ごめん。ちゃんと目瞑っててね。」


 大丈夫。大丈夫だ。私は10歳前後の子供の容姿だし相手は7歳……なんなら5歳児くらいにしか見えない。うん。何も問題は……

 私の中身が18ってことぐらいか。ギリセーフ?いや一応成人だしアウトな気も……


「今度はなんだよこのぬるぬるするやつ。くすぐったい!」


 「暴れないで。転けたら痛いよ。」


 浴室は石造りになっている。そのため当たり所が悪ければ危ないのだ。


 「よし……こんなもんかな。」


 何、1回自分のやったことに戸惑ってたけど……結局のところ相手は子供なのだ。そう、年の離れた弟だとでも思えばなんとかなる、はず。


 「先に浸かってていいよ。ゆっくり入るようにね。」


 首を傾げるルアンに浴槽を指す。

 ルアンは慎重に、慎重に浸かっていき……


 「あっっづ!」


 肩まで浸かる前に飛び跳ねた。その衝撃でお湯が飛び散る。


 「俺を茹でるつもりか!そうはさせないぞ!」


 狭い浴室の隅で私の方を威嚇しながら睨んでくる。

 ……どうやらこの世界でも私の温度に合う人は居ないみたい。


 「分かった。じゃあ冷水を混ぜて…………これぐらいならどう?まずは腕を浸けてみて。」


 一応用意してあった冷水を少し入れて自身の手で混ぜる。しばらくすれば多少お湯の温度は下がるはずだ。


 「……まだあつい。」


 「そう……じゃ、これならどう?」


 「ん……」


 2回ほど追加で冷水を入れようやく適温らしい。

 今度からはもう少し低めにしないと、だね。


 「……ふぅ……あったか…いけど、やっぱりちょっと物足りないなぁ……」


 「お前正気か……?」


 ようやくゆっくりと湯船に浸かる。ここまでで謎に疲労を重ねている気がする。


 「どう?いい気分でしょ。」


 「分かんねえよ。……でも、なんかお前の髪からいい匂いがする理由は分かったぜ。」


 「あ、うん。そうでしょ。わざわざエレナ様に頼み込んだからね。」


 これだけは譲れないと思い直談判したのはいい思い出だ。まぁ、随分あっさりと請け負ってくれたのだが。


 「……なんだよ。なんで、お前は俺たちのことを気にするんだ?」


 「?」


 質問の意図が分からず首を傾げるとルアンは恥ずかしそうにもじもじした。

 そしてしばらくの沈黙の後、口を開く。


 「だって、お前いいとこのお嬢様なんだろ?お前が気にかける理由なんか無いじゃんか。」


 「……え?」


 なんか色々と誤解が生まれている気がする。まぁたしかに、常に従者を連れていたりするけども。


 「違うよ。私は能力を買われただけの貴方たちと同じ、孤児だよ。たまたま優しい人たちが気にかけてくれてるだけ。」


 「たまたま……?」


 「うん。」


 ミレーヌだってそう。エレナや、ガルディス様も。皆が居たから私は今日まで生きてこられた。


 「ここに来たのだって偶然だよ。治癒士になったと思えば急にここに左遷されて、ここでも遊びじゃないんだ、孤児院のガキ共の相手でもしてろ、なんて言われて……」


 「苦労してんだな……お前も」


 「でも、そんな偶然があってビルグレイさんや君達とも出会えたんだよ。これって……なんか、とってもよくない?」


 最後の最後、ちょっぴり恥ずかしくなって語彙力が消えた。でも、それでも伝わったみたいでルアンを頬を赤らめている。


 「例えきっかけは仕事だったとしても、人との繋がりは別だし、私はこれからも君たちに優しくするし、気にかけるつもり。だから……遠慮なく、頼って欲しい。本当はまだ強くある必要は無いんだよ。」


これは、私の本心の言葉であり……かつての優しかった叔父や、父や母から常々言われたことだ。

私は強かった訳では無いが天才だった。そんな境遇で、冷めた目で現実を見る私に対して両親はよく言って聞かせたのだ。


 「なんだよ……お前、なんでそんな……母ちゃんみたいなこと……」


 気付けばルアンは大粒の涙を流していた。

 私は自分自身に驚いた。自身の成長に……自分の言葉で、人に何かを訴えられるようになったってことに。


 「ほら、辛気臭いのはやめにしよっか。私、先に出てるから何か困ったことがあったら、呼んでね。」


 正直いたたまれなくなった、というのが理由の半分以上で、私はそそくさとその場を後にした。

 自分のことながら、よくここまで喋ったな、と少し関心する。


 「変わってきてるんだ。私も…」


 あの優しい人たちに感化されて─────

正直ボキャブラリー無さすぎて困ってる!もっとお風呂のルアンとの対話シーンはいい感じの会話にしたかったんだけど私の限界はこれでした……


疑問になると思うのでここに書いておきます。

Q.なんかやけにリンちゃん喋ってない?

A.お風呂ハイです。実際リンちゃんは前世でコミュ障こじらせていた時にお風呂で一人で会話のイメトレをしていたのでそれがようやく実を結びました。

後は内なる庇護欲が働いた感じです。

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