1章5話 資格試験と裏技
投稿を休日中に間に合わせたかったので今回は少し短めです。
まずは筆記試験。これは何事もなく終えた。あの金髪も何かしようと思っても出来るものではないだろうし、当然と言えば当然である。
そして、次の、実技試験。予定通り試験官が2人追加で入ってきた。2人とも見覚えのある人だった。1人は薄い紅色の長い髪の女の人。つまりガルディスの治療を担当していたもう1人。
そしてもう1人が今日の受付に立っていた金髪ウェーブの女性だ。
「さて、早速ですが説明いたします。」
入ってきて早々、金髪の女性が切り出した。どうやら実技試験はこの人が取り仕切るらしい。
「…大変心苦しいのですが、当治癒院には怪我をした罪人を留置しております。その方々の治療をお願いします。その出来によって我々が評価致しますので。」
なるほど、かなり実践を重視した試験というわけか。
私が納得し頷くと「では、参りましょう」とその部屋まで案内された。
部屋には5名程の負傷者が横たわっており、どれも致命傷では無さそうだ。
「並の治癒士ならば1時間程度でしょうし、それを目安とします。それでは、試験開始!」
私はまず、その容態を『診る』ことから始めた。
『患者は5名。いずれも男性。患者A,B,C,D,Eと呼称する。』
『患者A、右腕変色。肩に獣に噛み付かれたような跡あり。』
『患者B、発汗、発熱の症状あり。』
『患者C、左半身裂傷あり。』
『患者D、腹部に噛み付き痕あり。左脚打撲。』
『患者E、背中に裂傷。全身に打撲痕。』
ざっと見、そんなものだろうか。頭の中で整理しつつ次に取るべき行動を考える。
『優先度を確認。D,C,E,A,Bの順で処置を行う。止血、消毒から…開始。』
荷物を入れた革袋から手術道具を取り出した。そして…手術を始めた。
裂傷は止血した後、消毒し傷口を縫う。
変色した部位には切開手術を行い毒素を流水で流した後縫合する。
発熱には解熱の薬草を調合し飲ませた。
全ての処置を終えるのに30分程だろうか。それぐらい掛かって、汗を拭ってから試験官の方を向いた。
何故か、3人とも引き攣った顔をしていた。まるで…思っていたのと違う、と言いたげに。
規則には別に治療法は指定されていなかったわけだし、違反とか、そういう訳じゃないよね?
「…えっと、次に行きませんか?」
びびりながらも私の方から次の言葉を催促する。
すると慌てながらも金髪の女性が口を開いた。
「あ、あ、え、はい!分かりました!試験は終了です!後はお願いしますね。ヴィンセントさん。」
ヴィンセントと呼ばれた、眼鏡の男がため息をついて、肩を落とす。
すたすたと、部屋の入口まで歩いていく。着いてこい、ということだろう。
「では、最後の試験と参りましょうか。」
何はともあれ…私は、2つの試験を終えたのだ。
残りは、問題の魔力測定だけである。
-----------------
私はこの魔力測定自体、受かるとは思っちゃいない。だからこそ他二つで補えるように無駄なく、全力でやったのだ。実技は分からないが少なくとも筆記は満点を取れたと思う。その感覚がある。
ただ、いくら捨ててるとはいえ魔力ゼロであることをバレてはならないのだ。そこで私は唯一事情を知るミレーヌに相談していた。どうにか、誤魔化す方法は無いのかと。
…すると、なんと言ったと思う?
「魔物から魔石が採れるまで狩ってきな。出来たら…多分、何とかできる。」
そんな曖昧な返事だったのだ。半信半疑だったが他に頼るアテも無かったため言われた通り私は準備期間の2ヶ月の間に魔物をたくさん狩った。
…素材を売れば1年以上遊んで暮らせるぐらいには。
「魔石、持ってきました。後、ついでに素材も。」
丁度試験の2週間前だろうか。
中々魔石が落ちない上今の時期はそこまで魔物が居ないらしかった。だから、ほぼ毎晩探し回ってようやく見つけたのだ。
「…どんだけハズレ引いたんだい。」
机に広げた大量の皮や骨、牙…その中にポツンと一つだけある魔石。それらを見てミレーヌが引き気味に呟く。あのミレーヌが、である。
「30体を超えたあたりで数えるのやめました。」
遠い目で言うとミレーヌは同情したような顔になった。今回ばかりは私の勝ち(?)である。
「……そうかい。まぁ…採れたんならよかったさ。こいつで…どうにか出来ると思うよ。いいぐらいの大きさだしね。」
「なら……よかったです。それで、その魔石で何をするんですか?」
ミレーヌからはとにかく持ってこいとしか言われてない。どうするのだろうか、と不思議に思っているとミレーヌは机の上を整理しだした。
「見てりゃ分かるさ。」
机の上に魔石を置くと今度は何か取り出して…トンカチ、である。そしてそれを振りかぶり…
ドゴォ!!
という音と共に、魔石を砕いた。
「…え?」
「見てりゃ分かる。」
何か言いたいのは分かるが黙って見てろ、という意図で同じ言葉が吐かれる。
ミレーヌは砕け散った魔石の破片を集めるとすり鉢に入れ、今度はごりごりとすり潰していく。
そしてしばらくすると薬草を何種類か混ぜ、再びすり鉢で潰した。
「ほら、どうだい?」
出来たのは…少し粘り気のある、しかし透明の液体だ。
これは…もしかして…
「軟膏さね。魔力を含んだ、ね。上手くいってるか分からんが恐らくは、コイツを塗っておけば誤魔化せるんじゃないかね。」
瓶詰めされた軟膏を手渡される。
これが…
「…ありがとう、ございます!」
「いいってもんさね…じゃあ、お代替わりにこの素材貰うよ。」
ギロリと、目を光らせて言った。私的には寧ろ処分に困っていたので素直に渡した。
「これだけありゃ村の復興資金に十分足りるだろうからね。よくやったよ。リン。」
「え、えぇ!?」
…魔物の素材の価値を知らなかった私は、その価値を初めて知って驚いた。
-----------------
何はともあれ、私は今その軟膏を付けている。
魔力測定を、やり過ごすために。
「こちらの水晶に手をかざしなさい。」
案内されたのは、大広間。そこにポツンと水晶だけが置かれている。
水晶へと手をかざすと、水晶が光を放つ。微弱で、弱々しい。今にも消えてしまいそうな、光を。
それを見たヴィンセントは大きく顔を歪ませた。
何を言われるのか、不安になりつつも言葉を待った。
「ミル級で0.1程度の魔力。ほぼゼロじゃないですか。」
悪いに満ちた…攻撃を目的とした、物言い。だが…事実を前には何も言い返すことは出来ない。
「ゼロじゃないだけマシだったのか、はたまたゼロの方が良かったのか…私には分かりませんが、この試験における魔力測定の評価は地の底だと思っておきなさい。」
肩に手を置かれる。悪いに満ちた顔が近付けられる。
…しばらくすると、表情に変化があった。
その顔はまるで…まるで…
「…?」
「っ……」
ありえないものを見たような、そんな、歪んだ顔である。
「……試験は終わりです。合否の発表はルナリス光祭の終わる、1週間後です。それまでルナリスにいらっしゃいますか?」
すぐに切り替え元通りの顔で尋ねられる。
今のは…何だったんだろうか。
そんな疑問を抱きつつも私は宿へと戻るのだった。
書き溜め無くなったので少し投稿期間空きます!申し訳ないですm(_ _)m
追記 魔力評価のヴィンセントのセリフでミル級のところをファル級と書いていたので訂正しました。




