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1章3話 さらば家族団欒。

ぜひ、感想等を頂けると作者のモチベが爆上がりします。後投稿時間、1話の長さについてどれぐらいがいいのか迷っているので良ければご意見頂きたいです。

 歓迎会から大体1ヶ月が経った。私も随分この家に慣れてきたように思える。


「はい。それではここ一週間で食べたものと運動量を教えてください。」


「えっと……毎食の薬草の煮汁。週に3回エレナと庭を散歩している。」


「ふむ……まぁ、適量ですかね……」


 もう何度目かの診察。向こうの答え方にも慣れを感じる。


「月末ということで最後に、血を採りましょう。念の為、疑う訳ではありませんが……容態を確実に確認したいので。」


「血……血を、採る?」


 あ、慣れたような顔から青ざめた顔に変わった。

 そういえばガルディス様は麻酔で眠ってて貰ったんだっけ。


「局部用の麻酔薬と、注射器を持ってきて貰えますか?」


 すぐ近くにいた従者の方へ言うとドタバタと部屋を出ていった。


「ガルディス様、ご安心を。痛みなく採るので。」


 にこりと、笑って見せた。自分自身に自信はなくとも自分の医療関係の腕だけは私自身も信じられるから。

 励ましの意味だったのだが……何故か、ガルディスは余計に震え出した。


「これで合っていますか?ご確認を。」


「はい。」


 部屋を出ていった従者が先端に針の着いた竹筒とポーションを持ってきた。


「それじゃあ採るので……あの、動かないでください。」


 がっちりと、脇で腕を固定する。そして採る局所へポーションをかけた。


「ひぃぃぃぃ!」


 なんでこんなに怖がっているのだろうか?

 やっぱり私じゃ不安なのかもしれない……


「ミレーヌさん呼びます?」


「……」


 泡吹いて気絶した。……ま、やりやすくなったし、いっか。


 血を採り終えるとガルディスのことは従者へ任せ私は分析を開始した。


「血の色も、粘度も、前よりも酷くはなってないし、良かった。」


 結果を紙に書き込み、従者に渡した。これがいつもの診察の流れである。


 まあ、ガルディス様が倒れたのは初めてなんだけども。


 -----------------


 1週間ごとの定期検診以外、私は全ての時間を勉強に費やした。たまにエレナやフィオナに魔法について教えて貰ったりはしたが……やはり、言葉で覚えることしか出来なかった。

 そんな生活の中、あっという間に2ヶ月など過ぎ、年末となった。

 この世界でも年末というのは家族団欒で〆るというのが普通らしい。


「私も混ぜてもらってよかったんですか?」


 今は夕食も済ませた後のティータイム。普段は勉強があるため断ることが多いのだが、今日は家族団欒を邪魔しないようにと先に断りを入れていた。

 だがエレナの方から参加して欲しいと懇願され今に至る。


「もちろんです。寧ろ私達はリン様のこと、家族のようだと思っていますのよ?」


 うんうん、とガルディスも頷く。


「そうとも……どうせなら養子になったっていい。」


「えっとぉ……」


 悪くはない誘いである。今でも庇護下に置かれているというのはヒシヒシと伝わってくるが養子になればそれはもう確実になることだろう。

 でも、そこまで決断出来ていなかった。ほんの少し……ほんの少し、まだ、疑ってしまっている。

 これはもう、抜けない癖なのかもしれない。


「お父様、リン様が困っていますわ。……とは言っても、私も妹が欲しかった……とは思うんですよね。」


 ……どうやら2人とも同意見らしい。いつ貴方は今日から養子です、と言われてもいいように心の方を鍛えておいた方がいいかもしれない。


「その話はこの辺で……」


 と、とりあえず流そうとしていた、その時。

 フィオナが血相を変えた顔色で部屋に慌ただしく入ってきた。


「ルナリス治癒院より伝令です!治癒士資格の日程を早めるとのことです!」


「えっ」


「なっ」


 あまりにも突然の報告だった。

 私も正直声には出なかったがかなり驚いた。


「前例のあることですか?」


「いや……無いな。フィオナ。早めると言ったが……いつだ?」


 ガルディスが当然の問いを掛けた。

 フィオナは1度呼吸を整えて、返す。


「……明日の午後、とのことです。」


「は……?」


 今、3人の考えは間違いなく同じ方向を向いた。


「……嘘でしょ?」


「残念ながら。」


 首を横に振るフィオナ。あのフィオナが場を和ませるために冗談を言ったとは考えづらく…つまり、つまりだ。


「今から試験会場まで行かないといけないって、ことですか?」


 そんな悲惨な事実確認に、2人は青ざめた顔で頷いた。

 斯くして、平和な家族団欒は唐突に終わりを迎えたのだった。


 -----------------


 本来であれば推薦者であるガルディス共々行くはずだったが可能な限り身軽にすべきということで受験者の私と馬を操れるフィオナで受験会場であるルナリスへ向かっていた。


「後、どれくらいですかぁ!?うぷっ!?」


「……あと……3時間以内には……着くはずです……!」


 ものすごい速度で揺れる馬車にしがみついた。もうこれが試験なんじゃないかと思うほどに。

 フィオナさんは髪が荒れるのも気にせずに馬を走らせ続けてくれている。


「ほんとうにっ……すみ、ませ……ん」


「こちらこそっ!このような悪路をまた辿ることになって!……申し訳ないっ……こういうこともあると……考えていればっ……」


 お互いに謝罪をしながら馬車に揺られ続ける。本当に、なんでこんなことになっているんだろうか。


 -----------------


「……死ぬ……」


 3時間と言っていたはずだがかなり飛ばしたため2時間近くで着いたようで、ようやく私は落ち着けることが出来た。とはいっても、気分は最悪な訳だが。


「荒い運転ですみませんでした……今ならまだ仮眠程度なら取れるでしょうし、門を通ったら宿へ向かいましょう。貸切にしているはずです。」


 フィオナの顔も少しやつれている。試験前なのに疲労がとんでもない。


「ガルディス様の使いの方ですか。どのようなご要件で?」


 門衛に話しかけられる。馬車の印でどこの馬車か分かるようになっているらしい。


「ガルディス様の客人が治癒士資格を受けられるのですが、試験日が早まったため付き添いである私がここまで馬車を飛ばして参りました。」


 お見苦しい姿で申し訳ありません、と非常に申し訳なさそうな顔をするフィオナ。何故だろうか、物凄く含みのある気がする。

 門衛はさっきフィオナが言っていた内容の載った書状を受け取ると、通るように指示を出した。


「わぁ……綺麗……」


 ルナリスの門をくぐると辺り一帯、黄色い光の塊がふよふよと浮かんでいた。それがとても綺麗に街を彩っている。


「ここ、ルナリスにはかつての大英雄、ヴォルガン・シルヴァーナの墓があります。彼は精霊と契約していたそうで毎年、この時期になると彼の死を慈しむ精霊達が訪れてこのような情景になるのです。ルナリス光祭や精霊祭と呼ばれていますね。」


「ヴォルガン・シルヴァーナ…」


 そういえば、この土地の……いや、この国の歴史について調べていた時に見た記憶はある。


「確か、この地に現れた『厄災(やくさい)』を払い除けた英雄……ですよね?」


「よく勉強していますね。」


 にこりと笑った。よく見ればなんだか顔色が良くなっている気がする。


「……気のせいかもしれませんが、少しずつ元気になっている気が、します。これって……」


「えぇ。精霊達が放つ魔力によるものです。特にこの街を訪れるのは光属性の精霊が多いので治癒魔法をじわじわと受け続けているようなものですね。」


 これは凄いことだ。どうやら精霊というのは魔力を放っているらしい。


「と、着きましたね……旦那様、かなり張り切ってるみたいですね。」


「わ……あ……」


 かなり豪華な……前世で言うホテルのような高さの装飾がなされた建物だ。ここに、泊まることになるらしい。


「私がチェックインしてくるので荷台から出ないようにお願いします。」


 先んじてフィオナが宿へ入っていく。

 多分、出ないように……というのはここいらの治安を心配してだろうか?


「それも分からないし、出ないのが正解ではあるよね……っと、あったあった。」


 暇を潰すべく、紙の束を取り出した。2ヶ月そこらで纏めた治癒士資格の勉強用のものだ。……まあ、主にエレナが内容を理解したいと言ったから作ったわけで大体内容は頭に入っているのだが。


「やっぱり魔法理論は難しいな。イメージが出来ないし……暗記科目と思うしかないんだよねぇ…」


 独り言で思考を整理しながら資格試験のイメトレを開始する。


 -----------------


「リン様。行きますよ。」


「─────っ……あれ?どれぐらい時間経ちました?」


「30分程です。何やら集中していたようなので先に馬車を移動させました。行きましょう。」


「は、はいっ!」


 しまった。待たせたみたいだ。いつも思うが集中した時にそれ以外が見えなくなるのは何とかした方がいいかもしれない。

 でも……これがあるから手術や戦闘が上手くいっているのも間違いではないんだよね。


「こちらです。既に寝台は整えております。希望があれば浴室も使えるそうです。」


 反省していたらいつの間にか部屋まで着いていた。フィオナが扉を開き、私が入るように促す。

 ふと思ったがこの人はどこまでメイドなんだろう。私は主じゃないと思うんだけど……


「お風呂、入りたいです。」


「お伝えしてきますね。」


 そんなことは置いておいて、今は疲労でいっぱいの身体を労うのが先だろう。寝台に寝転がるとかなりフカフカで、身体が沈んでいく。


「ぁ……やば……寝ちゃう……」


 ……お風呂に入る前に力尽きて寝落ちしていたらしく、フィオナの声で目を覚ますと朝だったとさ。



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