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1章2話 各最高点は定められてないので

お気付きだとは思いますがタイトル少し変更しました!内容は変わらず続けていきますのでよろしくお願いします!

 私とエレナがお風呂で溶けているうちに1時間近く経っていたらしく、勉強用の部屋に戻るとフィオナは不服そうな顔をしていた。


「……それで、1時間も出てこなかったわけですか……」


「「なんか、すみません」」


 呆れるようなフィオナの物言いに私とエレナの言葉が被った。


「いえ、構いません。……エレナ様には後でお話があるとして、リン様に非はありませんから。」


「えっ」


 エレナが何か言いたげな顔をしたがフィオナは無視して言葉を続ける。


「さて……丁度いいですし、一般教養にも含まれる魔法教科の……先程の現象について説明しましょう。」


 すると少し大きめの紙に図を書いた。4つ、何かを書いた。そしてそれを左から順番に。

 1つは人っぽい形に何かの流れを。

 1つはそれを操る人っぽい形。

 1つは操った何かを纏めて型どっている様子。

 1つはそれを放つ様子。

 多分……魔法を使う工程かな?


「リン様は魔法を使う段階についてどこまで知っていますか?」


「えぇと、魔力感知、魔力制御、発動ですか?」


「はい、確かにそうですが、それは少し古いですね。今は発動はさらに2分割されて生成、放出が一般的とされていますね。」


「はぁ…そうなんですね。」


 どのみちイメージできるものでない為言葉として記憶に留めておく。


「はい。生成により魔力で物体を作り上げ、放出という段階へ移るのです。さて、それでは先程何が起きたか……予想は出来ますか?外れても構いません。リン様の見解をどうぞ。」


 突然話を振られ驚いたが……いい機会だ。これは、理科の実験のようなものだ。自分では起こしえないことを想像で補う、それを予想するのだ。


「うーん……見た感じは、ですが生成までは上手く行っていたように見えました。ですがそこから放出するところを誤って逆流させた……とかですか?」


「……魔法が使えないにしては、及第点と言えるでしょう。お嬢様は分かっていらっしゃいますね?」


 にこりと私に笑いかけたあと、怖い顔でエレナを見つめた。鬼のようである。


「えっとぉ……その…」


 恥ずかしそうに頬を赤らめて視線を逸らす。フィオナの視線に険しさが増した。


「……魔力制御を誤りました。」


「はい。そうですね。ですがそれを間違えた理由は?」


「うぅ……その、リン様に、いい所を見せようと…」


 ギロリと、フィオナの目が動いたように見えた。明らかに怒ってるしエレナは縮こまって震えてる。


「はぁ……確かに魔法は便利で、祭事にも使われるので綺麗に見せようとするのは間違いではありません。」


 呆れたようにため息を着く。それだけで、今までも何度かあったことなのだろうと想像が着いた。


「……ですが!まず第一に扱い方を謝れば危険であると、何度も言いましたよね?ただでさえ魔力が多く、制御が下手なのですから。そこを弁えなければ旦那様のようにはなれませんよ?」


「……はい……」


 しゅんとして、エレナが返事をする。

 私は使えないから知らなかったが魔法とは危険でもある……らしい。でも確かに、さっき見せてもらったものが炎だったりしたら……大火事だ。


「あの、私がエレナ様に見せて欲しいとねだったので、これぐらいで……」


 流石に哀れだったのでフォローを入れたが……今度はその恐ろしい視線が私へ向いた。

 何を言われるのかと身構える。


「リン様は…………特に言うことがありませんね。いや、本当に何も無くて逆に困りますね……いけない、感情を剥き出しにしすぎました。失礼します。」


 困った顔をしたかと思えばそそくさと勉強部屋を出て行った。多分、落ち着くために化粧室にでも向かったんだろう。


「……っはぁぁ〜……怖かったぁ……」


 エレナはようやく新鮮な空気を吸えた、と言うふうな顔をしている。気持ちはわからなくも無い。

 でも、フィオナの気持ちはとても分かる。医術も、扱い方さえ変えれば人を殺すことだって出来るのだ。何事も、使い方と使い手が安全に繋がるということだ。


「寧ろ怒らせてしまったと、思った方がいいですよ。あそこまで叱ってくれるのはエレナ様のことを思ってのことでしょうし。」


 フィオナは怒り慣れていないと思う。ミレーヌと数週間暮らしていたから少し感覚が狂っているのかもしれないがそれでもフィオナはミレーヌほど普段から声を荒らげたりはしないように見える。


「うん……そうよね。後で謝るわ。」


 なんて言えばいいかしら……と隣で悩み出すエレナ。そんな彼女を遠目に私は、再び聖書を取り出した。


「ただの休憩だったはずなんだけど…」


 そう思いながら、フィオナが戻ってくるまで存分に本を読んだ。


 -----------------


 そんなひと騒動があってから、数日後。

 私がそろそろ夕食の時間だろうと部屋を出ようとしたところ、フィオナとばったり出くわした。まるで部屋を訪ねようとしていたみたいで…


「あっ、リン様。ちょうど良かった。」


 ひょこっと、フィオナの影からエレナが顔を覗かせた。


「今日でリン様が来て1週間になるのです。そろそろ、歓迎会をしようかと。」


「歓迎会……ですか?」


 あまりそういった類の食事会だったりは苦手である。お酒が入った時のノリとか……そもそもの、コミュニケーションとか。だが今のこの身体ならそこまで無茶な要求だったりはされない……よね?


「はい。と言ってもお父様が秋の領主会議から帰ってきたので家族皆で改めて、というだけですの。」


 そういえば私がこの館に来た当日、ガルディス様がどこかへ出かけていたような気はする。


「あ、えっと、分かりました。あ、あとガルディス様が宜しければ定期診察も……どうですかね?」


 忙しいならまだ今は大丈夫……なはず。ただ外出先で何を食べたか、気になるのだ。


「お伝えしておきます。歓迎会はいつも通りの食事処で。」


 一礼をすると扉が閉められた。どうやら診察に準備が必要だろう、と気を使ってくれたみたいだ。


「優しい人たち……だな。」


 そんな、1週間目の感想を呟きながら、私は準備をして部屋を出た。


 -----------------


 歓迎会、といってもいつもと違う点はガルディス様が居ること、それで食事の内容が豪華なだけだ。

 食卓は広い割に私と、エレナ様とガルディス様しか座っちゃいない。

 フィオナや他の従者は皆立っている。

 正直場違い感が否めないのだが2人が何も言わないのであれば私から申し出ることは出来ない。


「それじゃあ改めて……リン君の歓迎会をしよう。乾杯。」


 と、グラスを出した。私も手元のグラスを手に持って合わせた。

 1口飲んでみると葡萄のような甘酸っぱい味がした。アルコールは入って無さそう。

 ……ガルディス様のグラス、よく見たらあれ薬草の煮汁じゃん……ちゃんと言いつけ守ってて偉いね。


「……っ、はぁ、相変わらずの苦味とえぐみだなぁ。ははっ……ジャムや果実酒が恋しいよ。本当。」


「お父様、自分の尻拭いなんです。諦めてください。」


「分かってるよ。」


 親子の会話を聞いていたら少し気分が……なんというか、ほっこりした。

 いつもよりも2人とも砕けた喋り方な気がするし、なんだか、新鮮だった。


「リン様と私がいる間は目を光らせていますから。ね、リン様。」


「えっ、あ、えと。はい。光らせます?」


 突然話を振られて驚いた。あまりにも2人だけで喋っているのが自然すぎて。


「そういえば、リン殿は治癒士資格を取るんだったね?」


 ガルディスが話題を変えた。これ以上このことで詰められたくないんだろうな、と察して頷く。


「そうなると……2年ほどはうちにいることになるのかな?嬉しいねぇ……リン殿を見ているとエレナの小さい頃を思い出して…」


「あ、えっと……ご厚意は有難いんですが……一応、次の、年明けで受けるつもり、です。」


「…………?」


 訳が分からないと言った様子の顔をされた。それもそのはず。

 この世界におけるおける治癒士資格は王宮務めの者ですら何度か受けてようやく合格するようなもの、らしい。しかも最初の受験の時点で2年は勉強に費やすという。

 そして資格試験自体は年明け、領地ごとの本院にて行われる。今は冬入り。既に期間は2ヶ月もない。

 これだけ言えばリンがどれだけおかしなことを言っているか分かるだろう。


「旦那様、リン様は既に筆記は過去問全て合格点に到達しています。そして実技に関しては……恐らくは問題ないかと。懸念点があるとすれば魔力評価ですね。」


「ほ、ほぅ……」


 フィオナの言葉にガルディスは圧倒されている。


「……確かに魔力評価か……どうしたもんか……」


「あ、それなんですけど……」


 私は適当な雑紙にずらっと文字列を書いた。それは……


「これは……治癒士資格試験の、規定か?」


「はい。」


 頭の中で丸暗記している、真っ先に確認したルールだ。まずこの時点で突破できるかどうかを判断する訳だし、覚えていたのだ。


「そこの……ここです。『合格点は3科目合計250点。各最高点は定めず、試験官の判断によるものとする』。」


 これを聞いたガルディスはしばらく思考して……そして、気付いた。私の考えに。


「まさか……」


「はい。その、まさかです。」


 遅れてエレナも気付いたようで顔を引き攣らせた。

 ガルディスが念の為、と口に出して……確認する。


「筆記と、実技のみで合格点を超えるつもりか……?」


「はい。最高点が定められていないので」


 と即答する私に2人は言葉を失っていた。




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