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1章1話 資格勉強とゲリラ豪雨

「それでは、治癒士資格についてお答えください。」


 木札を見つめながら、フィオナが問いかけた。私は記憶の中の情報を引っ張り出す。


「はい…治癒士資格は治癒士が治癒活動を行う上で必要な特許で年に一度各領地の本院にて行われる試験に合格することで得られます。そしてその合格率は約5%。筆記、実技、魔力評価の三つの分野で合計点が250点を超えられれば合格。筆記は一般教養、薬草学、魔力理論、解剖学が主に、実技は実践治療、薬草、ポーション調合、そして魔力評価はそのまま、ですね。」


「よくできました。」


 フィオナが、にっこりと笑みを浮かべた。


「ありがとうございます。」


 今現在、シルヴァーナ伯爵家にて『治癒士資格』を取るための勉強中だった。

 伯爵家に着いて二日ほど経ったころに訊かれたのだ。


「そういえば、リン様は『治癒士資格』をお持ちですか?」


 私はそのもの自体分からなかったので首を傾げたが想定内だったようで早速教育の場を用意してくれたのだ。どうやら治癒士資格というものが無ければ本来は人に治療を施すことすらできない。前世で言う医師免許のようなものだ。

 教師はフィオナ。エレナも隣で見守ってくれている…?のだろうか。たまに唸ってちょっとうるさいのだが。


「うぎぎぎぎ…なんで一回聞いただけで覚えられるの…?」


 絶賛唸っているところだった。その問いに対し私は疑問を覚えた。なんで逆に覚えられないのだろうかと。

 …昔、前世でもそうだった。きっと私の頭脳は普通の人のそれとは違うのだと知ったのは小学生の頃。周りが同じ言語で話しているのか本当に疑問になったものだ。


「…記憶力には自信があるんです。」


 色々言い方を考えたがこれが一番無難だと判断して返した。


「うーん…若さもあるのかなぁ…」


 思いついたうちの一つを言われ少し笑いそうになった。口を押えつつ前を向く。多分、そろそろ…


「そこ、お喋りは禁止です。特にお嬢様。分からないなら私に聞いてください。」


「はーい」


 案の定フィオナが指摘した。もう何度も見た光景だ。


「ではリン様、お喋りしていたわけですしこれは答えられますよね?シルヴァーナ領含む四大領地の名前と領主の名は?」


 そしてこの私にまで飛び火するのも。でも…ちゃんと聞いていたのだから答えるのは容易だった。


「はい。王国南東部のシルヴァーナ領。北部のメルカント領。東部アーカナ領。西部のフォートレラ領。それぞれガルディス・シルヴァーナ様。ローレンス・ロザリオ様。アナリア・エーテリア様、バルド・ストームガード様。ガルディス様のみ伯爵でその他の方は侯爵。さらに言えばそれぞれの特産物が…」


「も、もう大丈夫です。聞いていたのは分かったので…」


「はい。」


 別にまだまだ言えるのだが止められては仕方ない。口を紡ぐとフィオナが一息ついた。


「お嬢様の集中力が切れてきたみたいですし、休憩にしましょうか。」


「っはぁ〜つっかれたぁ……」


 エレナは固くなった身体をグッと伸ばしている。私は休憩ということで書庫から持ってきた本を取り出した。


「リン様、まだ勉強するのですか?」


 ぐっと顔を覗かせ本の内容を見た。それはこの世界の治癒魔法についてのものだ。所謂聖書に近しいもの……だろうか?


「いいえ、ただ気になったので……私、治癒魔法は使えませんから。」


「あぁ……そうでしたね」


 私が魔力の無いことは秘密な為『魔法』が使えないということだけ伝えている。

 この世界にも一定数その類の人は居ていずれも魔力が少なかったり、流れがどこかおかしかったりするらしい。大抵はそういう人たちはスラム街だったり、孤児院などに放られるらしい。

 全くもって生きづらい世界と言える。


「……そういえば、エレナ様は魔法はどれぐらい扱えるのですか?」


 ふと気になったことを尋ねる。思えばこの世界にきてからまともに魔法を見たのはミレーヌが出した小さな炎だけだ。

 貴族はそのまま魔法の実力で地位が決まる。つまりはガルディス様は相当魔法のスペシャリストということだ。そして魔法の才能は遺伝しやすいらしいためエレナの実力がどれほどなのか気になったのだ。


「えっと…いいかしら?フィオナ。」


「そうですね…休憩に丁度いいと思います。一応話を通してからですかね。通るとは思うのでお嬢様とリン様はどうぞ、中庭の方へ移動しておいてください。」


「ありがとう。」


 フィオナが部屋を出ていく。軽い世間話程度のつもりがなにやら実際に見せてくれるようだ。

 少し…ワクワクする。使えない、出来ないという感覚がとても…何とも言えないのだがいいのだ。


「案内します。リン様。お手を。」


 手が差し伸べられる。貴族間における案内というのはここまでするのだろうか、とこの二日間で何度も疑問に思ったが…


「ありがとう、ございます。」


 …多分これ…私の見た目が明らかに子供だからなんだろうなぁ…

 そんなどうでもいいことにふけりながらエレナの後を着いていった。


 -----------------


 中庭に出る前、「少しお待ちください。」と言われエレナの私室へ寄った。

 数分ほど待っているとお嬢様らしい、フリフリしたドレスから運動に向いてそうな服に着替えていた。

 上は水色の長袖のシャツ…チュニック?かな。下は膝上丈のスカートにタイツを履いている。


「お待たせしました。行きましょうか。」


 再び手を取られ今度こそは中庭へ連れられた。思っていたよりもかなり広く、それはもう小学校とかの校庭ぐらいはあるんじゃないだろうか。


「お嬢様。許可を取り付けました。」


 丁度私達が入ったタイミングでフィオナも合流した。彼女もエレナに似たような服へ着替えている。

 魔法を使うときはそれほど服が汚れたりするんだろうか。などと考えているとフィオナが人型の的を運んできていた。それを設置するとそそくさと距離を取った。


「…準備完了です。お嬢様。まずは初級から行きましょう。いいですか?初級からですからね?」


 念押して初級から、とフィオナがエレナへ告げる。エレナも何やら不安そうに「初級…初級」って自分の手を握ってつぶやいている。

 …普通に魔法使って見せるだけだよね?


「…行きます。リン様。しっかり見ていてください。」


 ふぅ、と一呼吸した後、手のひらを的の方へ向けた。そして、その詠唱が為される。


「『ミル・アクアレント』!」


 詠唱を発した瞬間、小さい水球がエレナの手のひらに生成され…そして、的の方にと放出される…かに思えたのだが、なぜか放出された水球は途中で浮力を失いボテンボテンと何度か地面を転がった後ただの水として散った。


「…え?」


 疑問のまま、エレナとフィオナの方へ今の説明を促す。


「…」


「…」


 しかし二人とも黙ったまま俯いた。が、その数秒後、エレナが取り繕うように口を開いた。


「違うのですよリン様!本来ならばもっとすごいものが使えるのです!これは…その、少し制御しすぎたというか、その、本気ではないのです!いいですか!見ていてくださいね!」


 真っ赤な顔でまくし立てた後、再び手のひらを的に向けている。フィオナが何か諦めたように…私の手を引いた。行先は、屋根のある休憩所のようなところで…


「『ファル・アクアレント』!」


 その瞬間、エレナの威勢のいい詠唱が響く。先ほどよりも二回りほど大きい水球が生成され…そして、さらに周りの水を集めるように大きくなって…そして…そして…


「あっ…」


 エレナの素っ頓狂な声が発せられた瞬間、その水球は爆発し辺りに雨を降らせた。


 -----------------


 屋根を貫通してびしょびしょになった私達は半ば強制的に、脱衣所へ放り込まれた。それをやったフィオナはというと念の為に持っていた傘を挿して少しも濡れちゃいない。こうなることを知っていたなら教えて欲しい。

 でも……何気に初めて誰かとお風呂に入るかもしれない。

 少し緊張しながらも私は浴室に入った。一番に目に入ったのは大きな湯船。銭湯などでみるようなサイズだ。何度か入ったがやはり何度観ても迫力がある。


「へっくしっ!」


 急激に身体が冷えてきた。急いで身体を洗うべく桶に湯をすくう。


「大丈夫ですか……リン様。私のせいで……申し訳ないです……うぅ……」


 私に続いてエレナも入ってきた。振り向くと雨に濡れた金髪、そして……一糸まとわぬ、美しい身体が目に入った。


「でっ」


 か。と言いそうになった。いけない……普段から思っていたがやっぱり、良いスタイルをしていると思う。本当……自分の今を見ると余計に。


「まあ、動きづらくなるから良いんだけどね……それに、まだ成長期だし……」


 この身体はまだ10歳程度だ。むしろこれから期待していい。……いいよね?


「リン様の髪、藍色が少し混じっているのですね。珍しいです。」


 謝罪のつもりか私の髪を洗いながらエレナが言った。…というか今の状況、使用人に見られたら不味くない?


「珍しいのですか?」


「はい。少なくともヴェルディア王国で藍色混じりの黒髪と言えば……王家の方々とその分家ですね。リン様にはあまり関わりは無さそうですが。」


「へぇ……」


 そんな雑談を交わしているとエレナは私の髪を洗い終えたらしく自分の長い髪へ洗髪剤を付け始めている。


「リン様はお構いなく、どうぞお先に。」


「ありがとうございます。」


 そう言われたので遠慮なく私は湯船へ浸かった。この浸かる瞬間の、ジーンと熱が全身に伝わっていくこの瞬間が私は好きである。

 何より全身が綺麗になるので、私は前世でもお風呂は好きだった。


「ふぅ……」


 10分程落ち着いているとエレナが隣へ足を浸からせた。


「隣、失礼しますね。」


「どうぞ。」


 ゆっくりと浸かると彼女もほふぅ、と息を漏らした。


「……いいお湯ですねぇ……」


「これ、実は魔道具で稼働させてるんです……うちの領地の発明で……うちの領地は水属性の魔法使いが多いんですよぉ……」


「ほへぇ……」


 いい具合に説明してくれているが気持ち良すぎてあまり内容は入ってこなかった。


今回から1章のスタートです!よろしくお願いします!

※この世界における魔法は初級、中級、上級、最上級に分けられておりそれぞれ詠唱の際、等級をミル、ファル、ノヴァ、アストで表しその後に基本詠唱(属性ごとのもの)が続くようになっています。多分どこかで詳しく説明します。

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