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「やっと帰ってこれた―」


1ヶ月入院していたけど、実際感としては数ヶ月もいたように思えた。


「もう病院は懲り懲りだ」

「ふふ、本当にもうこれで終わりにしてね。神経持たない。あっ!でも今回私のせいだよね。ごめんね、ありがとう」


リビングに入った時、りんが振り返ってバツが悪そうに言った。


「りんのせいじゃないだろう。あいつが問題だ」


りんの腕を引き寄せて、抱きしめた。

りんの肩に口を当て、りんの肌の柔らかさと香りを感じる。ずっと触れたくて、欲しかった温もり。

りんも抱きしめ返してくれた。そして、トントンと背中を叩いて·····昔から昼寝の時よく膝の上でしてくれてたやつだ。


「りん·····俺な」


もう言うべき時が来たと覚悟を決めていた。

どんな結果になろうとも、りんを信じてるから·····

そして、次の言葉を口に出しかけた時、そっと柔らかなりんの唇が俺の言葉を遮った。

─そっと優しいキスの後、ゆっくり顔が見えるように離れた。その後もう一度ゆっくり唇が触り合うくらいのキスを落として、俺の顔見る。その顔は悲しげに笑みを浮かべて·····


「言ったでしょう。私はどんな乃地も受け入れるって。今の乃地が乃地なら、それでいいの。今の乃地がいいから·····」


抱きしめた。強く、強く抱きしめた。

りんに愛してもらえるのか。許されるのか···りんの愛する男でいることを·····

涙が流れた。

よく鳴いてはいたが、泣いたのは……泣くことができるようになったのは、りんのそばにいられるようになってから·····

色んな感情を知る。

りんが向けてくれる、笑顔に対する喜び。

りんが他の男と話したりしてる時に感じるイライラ。

りんと一緒に過ごす楽しさ。

いつかは離れてしまうかもしれないという不安。

りんを失うかもしれないという恐怖。

早く色んなことに慣れて学んでという焦り。

疲れきった俺をゆっくり体をさすって安らぎをくれる安心。

りんを愛おしい、自分のものにしたいという独占欲。

りんを想うと胸が苦しくなったり、 温かくなったり切なくなったり·····

愛するという見返りを求めない愛と、返して欲しいと求めてしまう愛。

人は·····こんなにも、いや、もっともっと複雑なまだ知らない感情がある。

なんと忙しく、難しい。それでいて、美しい生き物だろう。

もう随分と前に知っていたはずの”感情“というものを忘れてしまっていた。

いや、今こうしてやっとりんと向き合いあって知ったのかもしれない、本当の感情を·····


りんは美しい。まっすぐで一生懸命で。

不意にりんは俺から体を離し、潤んだ瞳で見上げてきた。


「どうした?」

「約束して」

「うん。何を?」

「絶対私のそばから離れないって、ずっといてくれるって·····」

「する。約束する。絶対離れるつもりはない。むしろ、俺のセリフだ」


そういうとりんは、また俺に抱きついて頬を胸に押し当てる。

鼻をすする音が小さく聞こえる。


「でも·····でも、もしどうしてもいられなくなったら、急に消えないで·····ちゃんと言ってから。お別れをしてからにして·····お願い·····っく」


この言葉の意味がわかるから·····だから、余計愛しく切なかった。

わかってる。

そんな日が来ないとは言えない。

俺が俺でいられるのもあり得ないことだから·····

何も言えず、ただ抱きしめる。

でも何か言ってやりたかった。


「必ずそばにいる」

どんな形でも─

おそらく命に関わることが、あんな風にない限りいられるはずだ。


もう俺のりんだと、愛する人だと堂々と言っていいんだと、りんから許しをもらった気持ちになってしまった。

そうなれば、もう俺は止められないし、止める必要もない。

りんの唇を奪い口付ける。そして、深く──りんの体が少し動く。

一度体を離してみて、りんの顔を見る。赤い顔で俺を見上げ、少しの微笑みを肯定と捉える。もう一度口付け、りんに入り込む。口づけを堪能して、りんの耳、首筋に移る。どこも甘い香りがして、柔らかい。




乃地にキスされる。

本気のキス。その先があるとわかるキス。

今までキス以上進めようとはしなかった。でも、お互いの気持ちを伝えて、受け入れた今、乃地はもう止めないとわかる。

深く甘く優しいキスは、耳、首筋へと移る。

乃地のキスに心地よくなっていると、不意に抱き上げられた。


「ちゃんと向こうで」

「はい·····」


お姫様抱っこされた私は、優しく、でも男の顔になっている乃地に見下ろされ、恥ずかしくて、ドキドキして嬉しくて、はいと答えるのが精一杯だった。

乃地の首に腕を回し、頭を肩に預けていつも見慣れているはずの乃地の部屋へと運んでもらい、初めての夜をこんなにも幸せな思いで過ごした──

彼はこれ以上ない優しさと甘い笑みと、男性だと感じずにはいられない筋肉が綺麗についた体とともに色気を放ち、長い長い愛を与えてくれた。

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