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「送るよ、車だし。津山と村瀬も来るから、葉山もどうぞ」

「えっ、うーん。いいよ、大丈夫」

「遠慮しなくていいって。先に葉山送ってこいつらんとこ行くし。乗りなよ。こうやってみんなで会えるのも、だんだん減ってきてるし」

「あ·····う、ん。そうだけど·····」


牧野くんが私を送るから、車に乗ってと誘ってくれてる。

遠慮ではなく、乃地があんまりよく思ってないし、もし、そんなことでまた仲違いすることになったら嫌だしと思っていたけれど、涼子も一緒ならいいかと思えば、教授に呼ばれてるとかで別れてしまった。


「牧野、葉山さんは電車で帰りたいんじゃない?無理には·····」

「 俺の車じゃあ、いや?」


村瀬くんが、せっかく言ってくれたけれど、牧野君の一言で乗せてもらった方がいいのかな、と思ってOkした。

まだ大学生活も残ってるし、親しくしてきた友達だし、村瀬くんたちもいるから大丈夫だと思った。

牧野くんが悪い人というのも違うかもしれないと思ったし、思いたかった。


車内で今日のジョセフ氏の赤い糸の話は、本当かどうかの話になり、ジョセフ氏のような人が話せば、どんな話も信じてしまうなぁとカリスマ性の凄さにみんなの意見は一致した。


またみんなでバーベキューをしようという話にもなった。

色んな話が次々に出てあっという間だった。

止められた場所を見れば見慣れない場所だった。


「あれ·····」

「着いたぞ。あっ!しまった!先、葉山って言ってたのに、村瀬んとこ来た。ごめん!葉山、時間大丈夫?」

「えっ、う、うん。でも私ここで降りても大丈夫」

「何言ってんの。ちゃんと送るよ。1時間ぐらい許して」

「いや·····ごめんね、逆に」


どうしよう·····

村瀬くんは一人暮らしで大学から15分ほど。

私の家は車だと30分ぐらいだから、後に私を送ると、結構面倒になるはず。

それでもどうぞと言ってくれたから、先に送ってくれるなら、わたし的に電車より早くなるし、何より1人じゃないと思ったんだけど·····仕方ない。


「津山も近いよな。さき津山んとこ行くわ。じゃあな、村瀬」

「·····うん。葉山さん、またね」

「うん、またね、村瀬くん」


村瀬くんのいなくなった車内は、空気が少し変わった。津山くんとは元々二人で話すことはなく、みんなといる時に話の中にいる、お互いっていう感じだった。

牧野くんも、なんだか急に黙ってしまった·····気まずい。何か話そうかと考えていたら、


「牧野、悪いけど電池買わないといけなかったからソーシンまでいい?」

「ソーシン?あー、いいよ。葉山ん家の近くだな」

「サンキュー」


津山くんが私の家の近くのソーシンまで一緒だと思うと、少しほっとした。ほっとした?私の中でやっぱり何か、引っかかってるのかとも思った。


「津山くん一人暮らしだったよね。電池とか日用品も切れる前に、ストックしとかないといけないし、忘れると大変だね」


·····特にする必要のない話をしてしまった。


「あー、まあでも実家でも俺やってたから。母親がすぐ忘れるから。ないと困るのは俺らだから。

なら、初めから自分で気にしとけばいいかと思って」

「はぁーすごいね。お母さんの苦手なとこは、自分が補えばいいって思えるなんて」

「いや、そんな大層じゃないし」


スマホを操作しながら、少し笑って答えてくれた。

意外に手助けしてくれたりするのは、彼の分かりにくい優しさでもあるんだろうな。普段あまり笑顔もないし、話しかけてくれたりもないから、冷たいのか嫌われてるのかと話しかけにくかったけど、こうして話してみると、私が勝手にそうイメージしてただけかもと、彼への認識を改めた。


「ここだな」


津山くんの行くソーシンについてしまった


「ああ、サンキュー。何かいるやつある?」

「いやないよ、また明日な」

「·····ん、葉山もない?」

「え?あ、うん。電化製品は今のマンションについてるやつばっかりで、新しいから大丈夫かな」

「いや、ははっ。そんなでかいもんじゃなくて」


笑った!!!


「あ、うーん。でも大丈夫」


不思議だった。わざわざお伺い立ててくれるなんて、今まで一度もないし、しかも、私だし。


「来たな」


津山くんがぼそっと後ろで、一緒に座っている私にしか聞こえないぐらいの声で呟いた。


「?」


何だろうと思うと同時に、後ろの車のドアが勢いよく開いた。


「わっ!何だ!?」

「きゃ!?」


何が起こったのか分からず、ドアが開いた事と牧野くんの驚いた声に、私も驚いてしまった。


「りん!!!」


ドアの向こうにいたのは·····ドアを勢いよく開けたのは乃地だった。


「えっ!どうして!なんで!?」


びっくりした。


「──なんだかすごいね。あー俺行くわ。よかったな、彼氏がこんなとこにいて─びっくりだけど。じゃあな、牧野」

「··········」


牧野くんも呆気に取られていたけれど、我に返ったようだった。


「なんであんたいんの?」

「乃地どうしてわかったの?ここにいるって」

「いや·····たまたま·····」

「たまたま?」


牧野くんが少しイラつき気味に聞き返す。


「たまたまバイトの店の電球買うの頼まれて、来たら見つけたんだ·····」

「あ·····そう·····なんだ。すごい偶然だね?」

「··········」

「ああ、ほんと偶然だな。·····直帰していいって言われてたから、帰ろうか」

「あっそうなの?じゃあ、そうしよう」


何かなんだかよく分からないけれど、ほんとすごい偶然だなと思った。ただ、すごい息きれてる·····

牧野くん·····きっと睨んでいるといった方が当てはまる感じの表情。このままは良くないと思い車から降りた。


「ありがとう、牧野くん。ここで降りるわ、また明日」「ああ·····じゃあ」


牧野くんは、今までの楽しげだったのが嘘なくらい冷たい感じで返事して、そのまま去って行った。


車を見送ったらふと思った。

·····そんな偶然ってある?

そっと乃地を見ると、すごい汗だくだ。しかも、カフェからここまで結構あるし、カフェの近くの大型スーパーで買えるのでは、と冷静になるとそうすぐ思えた。

そんな謎で乃地を見ていたら、私の心の内に気づいたのか汗をせっせと拭き始めた。


「待って、タオルあるし」

「そんなに·····何かあったの?」

「いや·····いや、·····あった」


一度は否定して、それをさらに否定した。

つまりは何か理由がある。


「カフェに電話が来たんだ」

「電話?誰から?」

「村瀬って人」

「村瀬?え·····村瀬くん?」

「あーやっぱそうだよな。かかってきて、できれば早く行ってくれって。ソーシンっていう電気屋に行くはずだからって·····」


ソーシンに行くことを伝えてくれた。わざわざ·····?なんで?

でも、ソーシンに津山くんが行くって言い出したのは、村瀬くんと別れてからだから、知ってるってどうして?

わからないことだらけで·····でも伝えてくれたから、ここにこうして一緒にいられた。

牧野くんがどうして私を最後に送るようにしたかは、自惚れている者の考えだから、違う違うと勝手に否定していたけれど·····


「お礼、ちゃんとしとかないとね」

「ああ、よかった、ほんと間に合って·····村瀬って人が牧野は何考えてるか分からない時があるって。で、今良くない気がするからって、早口で言ってた」

「村瀬くんが。牧野くんを·····」


一緒にいるからこそ、他の人には分からない何かがわかるんだろう。


「あいつ·····牧野って、二重人格なのか?俺に言ってきた時と、この前カフェでみんなでいた時とは、すごい違った」

「うーん、気配というか·····乃地からそのことを聞いてから、色眼鏡的に見てしまっているのかもしれないけど、笑ってても、本当の笑顔じゃないように思えることもよくあって。

だから、車で送ってくれるって言われて、初めは断ったの。でも津山くんたちも一緒で、私を最初におろすって言ってくれたから断るのも悪いように思って、お願いしたんだけど、いつの間にか私が最後になってしまってて·····ちょっと不安だったから、乃地が来てくれて、すごく安心したし嬉しかった」

「りん·····」

「ありがとう。私のために走ってきてくれて」

「!」

「ふふっ」


びっくりしてる乃地。求められる前になでなでをしてあげた。

ソーシンのエスカレーターで乃地が低く私が高くなっていたからしやすくて、私達の近くに人はいなかったし、後ろの方の人はスマホを見ていた。

嬉しそうだけど、顔赤くしてうつむいてる。なんだか尻尾が見えるよう。


「ふふ」

と、また笑ってしまった。

余裕ぶいていたら、私の一段上のステップに上がり、不意に後頭部に手を回され、ぐいっと引き寄せられて、キスをされた·····


「んっ·····」


チュとリップ音を立てて上目遣いで、してやったりという顔で微笑んでいる。·····乃地·····悪い。

今度は私が真っ赤になってしまった。

乃地よりも何倍も動揺してしまって·····


「な、な、な·····」

’「好きだよ。りん」


そう言って、私と同じ段の上にきて、手を繋ぎ頬にもう一度キスしてきた。

もうめちゃくちゃ恥ずかしい。誰も見てないのに·····そして、めちゃくちゃ嬉しかったりもする。その幸せを噛み締めて、少ししてから乃地に告げる。


「私も好きよ」

「!!」

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