表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/30

18


「いらっしゃいませ、二名様ですか?どうぞ、こちらへ」


カフェのバイトも3ヶ月が過ぎて、だいぶ慣れてきた。

初めはわからないことだらけで、ものすごく大変だった。りんに心配をかけないため、平然としたり細かくは話さなかった。人と接する事や、客をもてなすマナーは思ったより大変だった。

むかつく奴がいたからといって攻撃していいはずはなく、冷静にかつ口角を上げて·····あいつ、いつか絶対噛み付いてやろう!今でも思い出すとムカつく客数人·····

でもりんを思い出すと落ち着く。


俺の女神だ。


「わーっ。どうしよ·····アイ キャント スピーク·····」


料理を運んで戻る途中、テーブル席で注文を取っている同僚の女子が、拙い英語で話すが困っている。

客は全く日本語できないのか。

いつもは一人か二人は英語のわかるクルーがいるのに、今日はどちらも都合つかず休みだった。

「仕方ないな」


名前何だったか·····名札見てみたら、早川って書いてある。


「早川さん、大丈夫ですか?」

「澤井くん!大丈夫じゃない·····どうしよう、何言ってるかわかんない。多分料理のこと聞いてる」


二人組の男女だ。

困った顔してるな。


「May I help you?」

「Oh yeah! Does this plate have wheat in it?」

「このハンバーグのプレートランチ、小麦入ってるかって」

「えっ!わかるの?·····確か、入ってないよ。ソースも大丈夫」

「This dish doesn’t contain it」

「I am relieved. Please do this」

「Thank you! I’ll prepare it, so please wait a moment─」


·····アレルギーを起こしたら大変だから、不安だったんだと続けて話してきて、理解してもらえたことで安心して表情も柔らかくなった。


「このハンバーグプレート注文するって。小麦アレルギー持ってるみたいだから、不安だったみたいだ」

「そうなの·····ありがとう、よかった。すごいね·····澤井くん、英語できるの」

「できるってほどではないよ。簡単なのしかわからない」


早川さんは今までも割と話しかけてきていたけど、助けたことと英語を話せるとわかると、一層近く寄ってきた。でもバーカウンターのスタッフのいるところに戻ると、他のみんなもびっくりしていた。


「すごいな!」

「お前もしかしてエリート?」

口々に驚きを表してくる。


「いや、でも読み書きは無理だし」

「え·····やっぱ、英語もなの?脳の場所が話すのと違うのか?」

「いや、そんなこと別にいいんじゃね?会話できるの強いし。すげえよ!」

「そうよ!すごいなぁ、教えて欲しい」

「早川狙ってんのか?」

「·····違うし」


カウンターがちょっとした騒ぎになっていた。

そんなにかと思ったけど、自分の仕事に集中だ。

担当エリアに気を配る·····りんに褒められるために。

·····今のは褒めてもらえるのか?めちゃくちゃ。


「お客様いること忘れてない?」


ふいに声のする方を向けば、東条芹香オーナーが立っていた。

今日は遅出の出勤だったから、今来たようだ。


「お疲れ様です」

「お疲れ様。あなただけは落ち着いているよね·····」

「はい·····そうみたいです」


俺のことで騒いでるからな。

どうでもいい。

·····でもそんなすごいのか?

りんも喜んでくれるのか?


「いや!オーナー!遊んでるわけじゃないですよ。澤井すごいんですよ。英語でお客さんと会話できるんですよ!そんなこと全く言ってなかったのに」

「そうなんです、助けてもらって」

「まぁ·····そうなの?喋れるの?」


オーナーも驚いてる。そうなのか。


「簡単な会話だけですよ。読み書きは無理です」

「そう·····ちょっと、どれくらい話せるか知りたいわ。付き合ってくれる?」


そういうと、東条オーナーは英語で話し始めた。

どうやってここまで通勤してるか、好きなことは何か、将来の夢や芸能、時事のことを話し合った。芸能のことは、ほとんど知らないから、そのことは伝えた。どうして知らないか聞かれ、テレビはほとんど見ないし、興味がない、それにりんがテレビに映っているイケメンと言われる男達に、惹かれてるのも嫌だとも伝えた。

そうしたら、オーナーは悲しそうに


「That’s too bad,Rin. Too possessive. Rin and I are same situation.」

かわいそうに、りん。独占欲強すぎよ。りんと私は同じね·····


「I can’t help it because I love her.」

愛してるから、仕方ない。


「あははっ!四人目だわ、その言葉。あなたにもそっちの類だったってことね·····」

「そっちの類?」


何のことだか分からないが、俺のような愛し方をするのが身近にいるってことか·····。なら、俺は特別でもなんでもないんだな。


「すごいわね。“類は友を呼ぶ”よね。まぁ、いいわ。りんちゃんから苦情はないようだし」


·····なんで苦情が出るんだ。しかも、あんたに。

むっとした顔を隠すことはできなかった。

ふと、周りを見ると、クルーのみんながびっくりしていた。

英語喋れるって、そんなにか·····


「読み書きもできた方が絶対いいわ。話せるだけでもいいだろうけど、普通の会話はできるんだから、読み書きもできたら、あなたのキャリアアップにも繋がる。仕事としてできるようになれば、かなり今より稼げるわ。りんちゃんを楽にさせてあげることもできるわ」


「りんを幸せに·····」


そうなのか。こんなの何でもないと思ってたけど、結構武器になるのか。

りんを幸せに、たくさん稼げる、色々買ってやれる。服とかアクセサリーとか·····指輪も·····


「本屋に売ってますか?字のわかるやつ」

「あるわよ。アルファベットからね、まずは」

「アルファベット?」

「あなたが話す単語ひとつひとつの字のことよ。26文字が英語の文字を作ってる。

あなたの脳は独特な感じがするわ。部分的に記憶がないだけじゃないような·····」

「··········」

「まぁでも無理しすぎないようにね。りんちゃん一番大切なのは、あなたの体だって言ってたようだから。

じゃ私この後、仕入れ先と打ち合わせあるから、個室使わせてもらうわね。20分後ぐらいに来られるから、ランチすぐ出せるようにお願いね」

「はい。分かりました」


りんに心配をかけたくないけど、やっぱり早く覚えたいという気持ちが強くなった。


「あの·····私、本屋に付き合うわよ。さっきのお礼も兼ねて」

「近づきたいだけだろー」

「うるさい。彼女に内緒でできるようになって、驚かせたら?女の子は、サプライズ好きだし。感動してくれるんじゃない?」


彼女のいうサプライズ。

·····確かにここから帰りにたまたま見つけた、りんの好きなおまんじゅう買って帰ったら、すごい喜んでくれてた。ウルウルさせて·····

前は何もしなかったからな。好きなら何か買ってくるぐらいしてやればよかったのに。


「 とりあえず買いに行こう?私も苦手だったから、オススメのわかるし」

「じゃあ、よろしく」


早く見つけて取り掛かりたいから、早川さんに見繕ってもらえばいいかと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ