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7/22

ご覧、あれがパリの灯り

「きたのはずれに〜サンドニ〜えきは〜まち〜のなか〜♪」


「ふらこ。マドリードでそういう場所はないんか…ないんか…」


ええ。


あほなことを言うておりますが、私とテレーズ、ベルサイユから見て北側となるサン・ドニ地区に来ております。


で、目下のパリの北側には「大人のフランス観光」にお越しになったガイジンの皆様から夜遊びで金を絞り取る施設を集中させておりまして、モンマルトルの丘の下に開いた高級キャバレー紅風車(むーらんるーじゅ)が正に、4頭立てから8頭立ての馬車で遊びに来てもおかしくない場所の象徴としております。


で、反対に旧来のパリ庶民の娼婦街でもあったサン・ドニ。


ここには、紅風車と対となるように、大衆向けの遊び場である狂い馬(くれいじーほーす)という、よりお下品で助平な見世物演し物が売りのきゃばくらを開いてもらいました。


巴里夜遊び施設・地域略図

----------------------------------------------

 ●=高級キャバレー紅風車

 ◎=米風キャバレー狂い馬

    ↑カレー・ロンドン・通路・球根詐欺

サン=ドニ||   モンマルトル地区

地区  ||   ●

 ◎  ||  ====>ストラスブール

    || ||

    ⬜︎⬜︎→サンラザール駅・北東駅

←ブローニュ分館   ヴァンセンヌ娯楽館→

ベルサイユ ティルリー宮

  ⬜︎⬜︎  ⬜︎ ⬜︎ バスティーユ→

  ⬜︎エリゼ宮 ルーブル宮

=====セーヌ川======

  ⬜︎廃兵院

----------------------------------------------


で、営業内容の監修は連邦世界のニホンはロッポンギで絶賛営業中という、妙齢の美女が乳をほりだして接客するお店の店長として分体を出しておられる乳上ことアルテローゼ・イシュトヴァーン東方行政局長様。


(はよドァンナ・イヌカイとハラダに東京支部の経営を渡して楽したいのですけど…)


Alterose (Alterose Istvan, Alterose Tadokoro) アルテローゼ Million Suction(Limited Ten million)百万卒(限定一千万卒) Slut Visual 痴女外観 Red Rosy knights, Imperial of Temptress. 赤薔薇騎士団 Principatus Transsilvaniae, East Euro Branch,Tokyo Branch.Imperial of Temptress. 痴女皇国東欧行政局長・暫定東京支部長


ただ、この方は単身で東京支部の所在するイケジリオオハシから痴女皇国・伊香保保養所までの道のりをご自身でくるまを運転して単身向かうことが許されておるほどに、向こうにも慣れておられるのです。


(マサミ・タドコロ…田所正巳社長の養子扱いで日本国籍も取得させて頂きましたからね、私…)


このタドコロなる人物、以前の仕事の関係で連邦世界の日本の演劇女優の世界には異様に顔が広い上に、向こうの裏社会や賭博の胴元の界隈にも人脈を持つ人物として、痴女皇国の貴重な協力者である男性だと乳上からは聞かされております。


そして重要な事ですが、乳上ご自身も、初代聖母様がかつてオキナワにいらした際、無理な仕送りを実家に強要されたがために生計に困った時に紹介でお始めになられたあるばいと先のお店でも、急な応援で入って働けるほどに助平踊りの部類のお仕事には精通しておられるのです。


(ママの店改めクラブジュネス沖縄店はもちろん、NY支店や淋の森店での勤務も制覇しとるからな…乳上は…)


しかし、その経験のお陰で紅風車や狂い馬の経営が順調なのも事実というもの。


で、競馬の件でも馬の調達や騎手・厩務員の育成の場を母国ハンガリーや現在のお住まいがあるルーマニアまでの一帯に場所はいくらでもあると豪語なさっておいでです。


(ま、これは東京の府中や中山や大井競馬場を知っておるからこそ言えるのですが、馬を競わせる場所と、騎手や馬を育てる場所は完全に分けることを最終的にマリアリーゼ陛下から言われるとは思いますよ…日本のみならず、連邦世界の競馬では騎手を買収したり着順の不正強要を防止するための対策、何らかの形で取っていますからね…)


どうも、向こうの大臣やら財界の大物を接待するために、そうした大きな競馬場の貴賓席で観戦しながら賭けるような事も経験なされたご様子ですね。


(で、逆にそういうヤオチョウが成立しやすいセレンジェアティーク(ばくち)にお金を賭けてお小遣いをですねげほげほげほぉっ!)


(乳上…内緒じゃないの…裏カジノの賭場荒らしとか美人局の逆ゆすりとか反社関係の裏資産ボッシュートとかと並ぶあたしたちのお小遣い稼ぎのネタなんだからさ…)


(そうですわよ乳上…雅美さんは時々面子に入ってくれますし、うるさそうなベラちゃんも買収してますけど、リーゼ姉にはあまり大っぴらにやるなって言われて見て見ぬふりしてるだけですし…)


で、ここで私どもの心話に乱入なさる、どなたかの気配がするのですが…実は今の心話制限の状態からすると、かなりの幹部でないと許されないはずのですけど…。


しかし、乳上がさりげなく、乱入して来られたのはどこのどなたかを教えて下さいました。


(マリアンヌ様、スザンヌ様…日本の皇帝の一族や貴族子女も通う学校の生徒にあるまじき行状の暴露は…ええとね、フラメンシア殿下…今の、聞かなかった事にしておいてくださいね)


(もちろんでございますとも、局長…マリアンヌ様とスザンヌ様といえば、ご母堂こそ違えど、お二方ともにマリアリーゼ陛下の実の妹君…)


Marienne Takagi 高木マリアンヌ Single Suction(Limited Billion)一人卒(限定十億卒) Variable female Visual 可変型女性外観 Our Marie 3rd. Imperial of Temptress and Holy Temple. 第三代聖母候補(痴女皇国・聖院) White Rosy knights, Imperial of Temptress. 白薔薇騎士団 Setagaya tokyo Branch, Tochigi Media Survice Co., Ltd. . 高木企画池尻大橋寮長


Suzanne Takagi 高木スザンヌ Single Suction(Limited Billion)一人卒(限定十億卒) Slut Visual 痴女外観 Our Saint 3rd. Imperial of Temptress and Holy Temple. 第三代聖女候補(痴女皇国・聖院) Imperial lineage of holy temple. 金衣皇統 White Rosy knights, Imperial of Temptress. 白薔薇騎士団 Setagaya tokyo Branch, Imperial of Temptress. 痴女皇国東京支部施設管理部


(いやー、昨年のロンシャン競馬場のレースは美味しかったわよねースザンヌー)


(ほほほほほほ、それより、ありま記念で若様のところのお馬から順に流しで買っといた分のほーがもうかりましたわよマリアンヌっ)


(ですから日本の競馬は未成年が勝馬投票券を買えない建前なんですってば!…マリアリーゼ陛下からも一言お願いします…)


(あいあい…あのさぁお前ら…場外だと目立つからって中山まで行って馬券買うか…どこに声優ヲタが潜んでるかわからねぇんだからよ…)


(あらあらリーゼ姉、ちゃんとおかね渡して乳上に買ってもらいましたわよっ)


(そーよそーよ、リーゼ姉も乳上に予想聞いて時々稼いでるじゃん…)


(あのー、財務局の田野瀬ですけどね、乳上もマリアンヌちゃんもスザンヌちゃんも、馬券購入の証拠とか領収書とかちゃんと保管しといて下さいよ…あまり高額の賞金払い戻しがあると、3人とも私の古巣がどこか(たのきちはもとまるさ)わかってると思いますけど、あのうるさい役所が脱税してないかどうかの探りを入れて来ますからね…)


(田野瀬さん、それくらい揉み消してよ…)


(そうですわよ、たかだか10億くらいで)


(だからスザンヌちゃん、10億って最低でも普通の勤め人の生涯賃金5人分くらいは賄える金額だって…)


(ちなみにマドモアゼル・スザンヌのいう金額ですと、かつてアラブ某国に売りつけたトロピック・ルクレール戦車1両分ですね…戦争には金がかかりますもので)


(あの青いVAB装甲車15両分くらいというところですかしら、ジョスリン…)


(まぁ、探りを入れてきた役人を行方不明にする仕事を必要とするのであればご用命を…)


ええと、のっけから物騒な心話がぼんぼんと飛び交っておりますけど、田野瀬財務副局長、よろしいのですか…。


(ピンキーローズの競合店や銀座のヴィオレットローズ付近の店の脱税情報を流してもらうことで帳尻を合わせさせます…)


(高木企画関係者がザギンで飲むためだけに店開かせたのよね、ヴィオレットローズ…犬飼さんが泣いてたわよ、リーゼ姉…)


(マリアンヌ…それをいうならジュリーさん、ピンキーローズのふく店長にされてなげいてましたわよ…)


(スザンヌ。ベラちゃんも重罪よ。アユさんと、それからたまに瞳さん、ヴィオレットローズでホステスさせてるわよ…)


(マリアンヌちゃん。痴女皇国の幹部たるもの銀座での客あしらいくらいはしてもらいます。でないとジュネスのニューヨーク支店で各国首脳級の超大物を接待できんではないですか…)


(あのねベラちゃん。そういうのこそ、リーゼ姉とか乳上とかあんたとか、あとクレーゼおばさまやるっきー…あんたのもう1人のおかーさんの仕事と思うわよ…)


(そうですわねぇマリアンヌ、クレーゼ母様なんて、まさしくそういう荒場向きのじんざいですわねぇ)


--


(で…言い争いの最中にあれですけど、テレーズちゃん、フラメンシアちゃん…なんでまたサン・ドニに…)


と、今度はベラ子陛下からご質問が参ります。


(六本木の話題が出てましたけど、今のサン・ドニは東京で言えばよく言って新宿か上野ですからねぇ…預けているものもそれなりの貴重品ですから警備に神経質になるのもわかるんですけど…)


(例の象牙のあれの完成を聞きまして、引き取りにと。本来なれば使いの馬車なりを差し向けるのですが、モノがモノだけに警戒怠りなきように考えますと、わしがぐらんえすぱすを運転するほーが早いとなりまして…それに、サン・ドニの偽女種演芸場や映画館は私の管轄でもありますからねぇ…)


それに、マドリードを軍事独裁国家の首都として整備してしまったわし、ちょっとだけ悔やんでおるのです。


あそこのマンサナレス川の河原の一部や、その西のかんぽ公園を一種の悪所にして河原者を集めたのも、都市には一種の悪所があった方が経営上うまく行くという考え、中南米の担当幹部から聞かされたからでもあるのですよ。


そして、悪疫猖獗(あくえきしょうけつ)の地ではなくしましたが、ちょっとばかりお行儀の悪い大衆向けの店が並ぶ方が楽な者も多いんや、とテレーズたちに力説したんですよねぇ…。


そして、サン・ドニを民衆のための娯楽の街にしたかった理由、この一帯がかつて悪疫猖獗(あくえきしょうけつ)の地だった件と密接に関係しとるのです。


なぜかと申しますと、このサン・ドニの北から西にかけての一帯が目下、織物やら皮革やガラスに軽金属類の加工工場が集中しとるからです。


いわば、下町の工場街。


んでまぁ、テレーズに言わせると、従来の貴族階級は「絶対にこんな場所には足を踏み入れすらしなかった」くらいに不衛生かつ怪しげな場所だったらしいのですけど。


(いや、水銀やら酸やら硫黄やら何やらを使うたり、あるいは火を使うにしてもあまり人体によろしくないもんを燃やして細工に使うわけやんけ…そら、サン・ドニに住んだら寿命半分になるとか市民連中が言いよるわけやで…)


で。


わしらはそんな下町であるサン・ドニに来るに当たって、変装を試みております。


と言っても、わたくしフラメンシアであれば黒薔薇騎士団の通称・がんつ服を着込んで認識阻害機能や変装機能を用いてしまえば堂々と隠密活動ができますけど、てれこにこの、黒薔薇騎士団専用戦闘服を着せることはできません。


この服を着るといくさに出ても物怖じしないように、精神を高揚させる機能…あからさまに申し上げますと、サカる機能が勝手に働きよるのです。


うぬぬぬぬ。


むろん、こんな服、支給許可が仮に降りたとしても、黒薔薇騎士団に入団するためには絶対必須である試練を受けていないてれこに着せてしまえば、一種の自殺行為となってしまいます。


で、サン・ドニに来た理由。


象牙職人からの連絡を受けたからです。


ブツが仕上がった、と。


で、仕上がったものを受け取るのと、職人に報酬を渡すためにサン・ドニに足を運んだのです。


(あのー…フラメンシア殿下…イスパニアではこのような下賤の場に王族が足を…)


(オスカー団長。お言葉ですが、南欧支部当時に婦人騎士団が発足してからこっち、イスパニアの女は例えおなごであろうと、男以上に勇敢に戦う必要が生じましてな…ほら、闘牛騎士団なんてもん、うちの国でやっとるあのいかがわしい闘牛のせいで設立しよった件もありますし…)


ええ、私の後ろでオスカー団長とエルネスティーヌ嬢の二人が鼻白む顔になってるのがわかります。


で、わしがサン・ドニに来てる理由はもう一つ。


先ほど、ベラ子陛下にお応えした通りでして、わしらが乗って来ておるこのルノー・グランエスパスとかいう馬なし馬車を動かせるの、わしか娯楽館支配人であるポワカール閣下の娘御お二人…つまりは連邦世界から持ち込まれたこの大きなくるまを作ったフランス共和国の方々に限られるのです。


これが痴女皇国全体を見渡すのであれば、ベラ子陛下はもちろん、球根詐欺国のマルハレータ王女殿下とか東欧行政局のアルテローゼ殿下などと、このくるまを動かせる人間が増えるんですけどね。


理由はこのくるま、遥か未来かつ異世界とやらの連邦世界のフランスでこしらえたために、向こうで動かすのに必要な機械仕掛けがあほみたいに盛り込まれておって、マリアリーゼ陛下から預かっておる元来の王家専用じどうしゃと別物に近いうんてん操作が必要だからなのです。


(いや、いっそ、前はキュラソーに置いてたゆう、るくれるくとかいくいくゆうくるまの方がええか思うたんやけど)


(あれはもっとだめでしょう…音もうるさいですし…それに象牙職人をどこに乗せるのですか…3人しか乗れませんよ、あれ…)


あががががが。


ええ、そのルクレールとかゆうくるま、車輪でなく帯を回して走るのです。


それをキュラソーで乗っておったマルハレータ殿下からは、普通の道で走らす時はそれ用の帯に変えるか、護謨(ごむ)のクッションを帯の表側に取り付けて走ることをジョスリーヌ団長に厳命されたことを伝えられております。


(あれ、キュラソー島の北側の砂浜に2人乗りの屋根なし車で遊びに行く連中が万一砂にハマった際の救出車両としてなんかないかとジョスリーヌ団長に尋ねたらソレ貰いましてな…で、当時のキュラソーは政情不安定やった事もあって、まあええかともろといたんですわ。んで、そのあとは別のブツも来たしゆうことで返還したものの、なんだかんだでそっちにあることはワイも聞いてますからな…)


で、マルハレータ殿下がそのルクレールを手放した理由ですけど。


(道を痛めますねん…ほら、キュラソーはセントアンナ湾を巡る路面でんしゃを走らせてますやんか…あれの線路を敷いてる道路、ぶっ壊す可能性があったんで通せる場所が限られてたんですわ…それに燃費もかなり洒落にならん悪さでしたしな)


キュラソー島ウィレムスタット市街略図

-----------------------------------------------


 ↑島北側カンポ・アレグロ方面

  ○一般売春受付所・車両・自転車貸出所

||

||  造船所・貨物専用船・高速船埠頭他

ロ| -------------------

|||///////////////////|

ズ||(湾奥側は通称スコッテガト:第二の岸)|

ベ||///////////////////|

ル| -----       -------

ト|      |セント  |漁港・小船桟橋

通|      |アンナ湾 |-------

り|      |//////ワーエガト入江|

||男子または |/////|-------

||偽女種寮街 |/////|ホバークラフト

||      |/////|駐機場

||      |/////| プンダ地区

||      |/////|  スカロー地区→

||      |/////|ピーテマーイ地区→

オトロバンダ地区|/////|(一帯は女子寮街

  ----- |エマ女王橋| --------

 |リフ要塞 ||=====||アムス

 |修道院在中||/////||テルダム要塞

  ----- |/////||フォート教会在中

 水上機用坂道= /////| --------

西側大型船桟橋 |/////| 東側大型高速船桟橋

--------       ---------

////////////////////////

///////カ リ ブ 海 南 部//////

←↓ 約100km南側または西側は南米ベネズエラちほー

////////////////////////

-----------------------------------------------


確かに、マルハレータ殿下が言われる通りで、あのくるま、通る道を壊す可能性があります。


我がフランス王国支部に編入された旧・中仏支部の支配地で組立が始まっておるシトロエンの大衆用のくるま…あの単純なしろもの60台分になるという重さのせいで、荒地用の帯で走ると石畳だろうが舗装路だろうがばっきばきのガタガタになってしまうくらいの跡を残してゆくと聞かされては。


まぁ、そのルクレールとかいうくるま、車体の上にぐるんぐるん回る物見塔がついている上に、物干し竿まがいに見える長い大砲が突き出た代物です。


つまり、れんぽう世界の戦車であるそうです。


ええと、わしの脳内にある戦車とは、馬が曳くしろものに思えるのですが。


しかし、ジョスリーヌ団長からもこのルクレールは製造当時のフランスの技術の粋を尽くして作られたブツであり、いくさの主力がもっと別の何かに移った今でもアフリカ辺りやフランス共和国内での暴徒鎮圧くらいなら使い道がいくらでもあるから、保管してある余りから程度のいいものを持ってきたとか言われましては。


確かに、わしもうんてんを習いましたが、まぁ見た目よりははるかに楽…まわりを見渡すのに黒薔薇能力を使うほどに窓が小さいのを除けば、こういう代物で騎馬を蹴散らし砲兵の陣地を吹き飛ばすようないくさはおとこ衆には面白いんやろなぁと思えます。


実際に、えんじんをかけた時の勇ましい音たるや、おなごのわしでも血が騒ぎ無敵になったような気分。


このルクレールの主な使い道ですけどね。


フランス王国として何か祝い事があった時の祝賀列で持ち出して、礼砲をぶっ放したりする時に使うとります。


で、市民からも王国の力の象徴として認識されておるようでして、わしがうんてんしてテレーズやソフィーちゃんが砲台の側の席に立って上半身を出して、沿道の民衆相手に手を振っておることも多いのですよ。


もちろん、その時は国旗をたなびかせたりその大砲に国旗を巻いたりなど、装飾を施してから走らせております。


で、そんな慶事の際の王族の振る舞い、普通ならマリアリーゼ陛下から預かってる屋根のあらへん高級車を使うもんだと言われた事もあるのですが、ジョスリーヌ団長いわく「この戦車の方が新車の時ならはるかに高価である。そしてファセル・ヴェガやビュシアリはもちろん、ビュガッティも走る芸術品かつ貴重品なので、あまり乱暴に扱わない方がいい」とか助言ももろうておりますし…。


ただ、このルクレールとかゆう、せんしゃ。


くるま60台分という重さで道をぶっ壊しかねないのはもちろん、燃料をあほみたいに食うのが欠点なのです。


我がフランスの学者が提案した水の容積を計る単位に「リットル」というものがございますが、そのリットルの単位で申しますとですね。


布屋根の安普請しとろえんの二馬力とかゆうものが、燃料1リットルで20キロ、てれこが私用車として使うておる角張ったしとろえんや、このルノーの箱で10キロ走るとしましょう。


そのルクレール戦車、なんと燃料1Lで400メートルしか走らんと聞かされては、絶句するしかありません。


(燃料タンク容量は1,300Lで公称航続距離550キロなんだよ…)


(ええとその、コマンダン…燃料だけで安普請のしとろえんの二倍くらいの重さになってまへんか…)


(そりゃ全備重量60トンの、当時の主力戦車だからな…)


そりゃまぁ、空いた口も塞がりません。


そんなわけで、サン・ドニの狭い部類の道にさすがにルクレールせんしゃを持ち出すのはまずい、と判断したわしらは別のくるまで職人のおうち兼工房にやってきたわけです。


何せ、貴重な象牙や、組み込み見本の大きなダイヤモンドの模造品を渡しておりますが、この模造品とて本物と寸分違わぬ材質と価値がある、正真正銘の複製品なのですよ。


ただし…複製品は結局のところ、2種類かつ合計4つを預かっております。


うち2つは、象牙に嵌め込む細工のため、職人の家に来ております。


そしてもう2つは…ベルサイユ宮殿の中の、グラン・アパルトマン…すなわち、わしのフランスでの宿舎となっておる王妃の隠し部屋めいた私室区画の中なのです…。


------------------------------------------------


ふらこ「なんでそこにした」


てれこ「呪いのダイヤモンドにされとるからに決まっとるやないけ」


ふらこ「わしの部屋を片付けたり掃除に来る女官が呪われたらどないするんじゃあっ」


てれこ「手に持って、あることに使わんと呪われへんて注意受けたやないけ、引き渡し時に…」


あふろ「ナルシスの呪いがかかった青い方は、特に。で、呪いを外したい場合はテレーズ王女の持つ透明な方のアダマス…ダイヤにはめ替えることで呪いを打ち消せますよ」


えろす「ただ、呪いを打ち消すっていうよりは…僕がアフロディーテ様のしもべ状態の時に使える力で透明な方を呪ったから、呪いで呪いを上書きするような作用になっちゃうんだよ。だから、僕が呪った方じゃなくて青いアダマス、こっちについては呪いの効果を試すようなこと、絶対にしないで欲しいんだ…」


あふろ「そう言われると試したくなるのが人の性というものですよ、エロス…」


まさみ(ちなみにアフロはあたしの娘として体を貰ってますけど、実際にはギリシャ神話のアフロディーテそのものです。そして、痴女宮の地位としては文教局長のエロスさんの方が厚労局で女官長やってるうちの娘より上なんですけどね)


えろす「そういえば、その呪いのアダマスを使わせたい女の娘、学生らしいですね…」


ふらこ「ええとてれこ、6区やったかな、カルチェ・ラタンのサント=ジュヌヴィエーヴ修道院。あそこ中高一貫校(リセ)としてアンリ4世記念高校を併設して神学部と一般高等学部を設けてたとこ」


てれこ「あー、カサール未亡人の娘のフランソワーズね…」


ふらこ「そそ。あの娘、確か本来は経営学を志向しとらんかったか…それと同じ6区の学校でもルイ大王学院リセの方がびみょーーーーに、学校としての格式は上やで」


てれこ「あのなぁふらこ、それ以前に、リセと聞いてわし、あんたも無縁ではない恐怖の事件を思い出すんやけどな…あのシモーヌ・エドワルダとあんたの父親のバタイユが共謀してマルセル・マンディアルグをそそのかして起こした、いわゆるランス中高等寄宿学校事件の大惨事(すきゃんだる)を…」


ふらこ「ゆうな!それをゆわんでくれぇえええええ」


まさみ「流石にこの事件は大人じゃない人には全貌を説明できないわね…恐らく次で話が出ると思うけど、バタイユ伯爵の学友だったマルセルって女の子を痴女種女官に変えた上で暴れさせたのよ、シモーヌちゃん…で、その結果としてランス高等寄宿学校の女生徒全員の妊娠が発覚したの…」


ふらこ「あんぎゃああああああ」


てれこ「つまりですな、駄洒落菌の変種を使って生徒連中を不純な異性交友に耽らせた結果がそれですねんわ…別に国民全員を女に変えんでも、こういう使い方するだけで十分に世間を揺さぶれるとお考えを(汗)」


まさみ「あと、フランソワーズ・カサールについては聖院学院シリーズの大人版であるアルトくんの枠で顛末が語られることになるでしょう…良い子はまぁ、そういうとんでもない女性がいた程度の認識で清く正しく過ごしてね」


りええ「と、不純な日々を送り続けて痴女皇国厚労局への請願提出件数ワースト2をベラちゃんと争っていると噂の内務局長がお説教を」


まさみ「理恵ちゃん、あたしのお墓の前か滝壺」


べらこ(あたしも加勢します…あと、雅美さんが言ってる場所は「学校の体育館裏か屋上」の意味がある場所です…)


ふらこ(で、次回は学校の話になると思いますが、フランスの学校制度がややっこしいのも、馬術や体育をこの制度から切り離して運営しようとした理由なのですわ…)


てれこ(わしやパパンがきめたんやなしに、もっと前から色々とありまして…では次回でその辺を…)

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