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早起きは三文の得? 厩務員は森に見た! -欧州・馬術学校ものがたり-  作者: 雀のお宿


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18/22

映画もわしの仕事です…プロデューサー・ふらこの憂鬱

そうなんですよ。


フランス王立芸術院とかゆう組織のてっぺん、今の所はこのフラメンシア・デ・ヴァロワでしてね。


で…なぁんでいきなり、映画の話になるのか。


実は、八百比丘尼国(じゃぽん)とフランス王国…ひいては、南欧行政局との関係密接化政策に関連しとるのです。


ぶっちゃけ、英国主導で横浜租界の開発と、貿易拠点化によって対日進出に大きく遅れを取っていたフランス王国の行政に関わっとるわしとしては、比丘尼国から送られる綿織物や絹製品っちゅうのは是非にも輸入したい物件です。


特に、痴女皇国本国に近い南洋行政局管内の茸島に存在する女官向けの衣料品工場の分工場、欧州のどっかに建設する話が持ち上がっていると聞けば、その誘致に力を入れるためにも、フランス国内の縫製や紡績関連の事業にも注力して地力をつけ、フランスかイスパニアのどっちかに工場建設、というふうに持って行きたいのです。


そして、わしのもともとの立場であるイスパニアの王女ならばイスパニアへの利益誘導を図るべきなのでしょうけど、黒薔薇騎士団員資格者にまで任じられておるほどの地位を授かった痴女皇国幹部女官でもありますし、何より南欧行政局フランス支部の興隆を図れという命題を貰うてフランスに赴任しとる立場です。


で。


なんで映画の話と、ウマの話や比丘尼国の件が関係あるねん、と言い出しそうなフランス王国の王女でありルイ王家の長女であるテレーズことてれこが文句を言わない件。


(逆じゃ逆。わしの本名はふらこ以上の長さなんを知ってるやろがぃっ)


ええ、あのアマの本名、やたらとくそ長いのはよう存じてます。


なんせ、Marie Thérèse Charlotte de Francise(マリー・テレーズ・シャルロット・デ・フランシーズ)となるんですから。


(ふらこが本名を言わない件〜♪)


他の話でも散々に出ておりますが、正直、このアマとワシの仲は元来、あまりよろしくありません。


しかし、もっと潜在的な仲良しが他にいるからなのと、互いの利害が一応は一致しとるから手を結んでおるだけなのですぅっ。


んで、わしとてれこ双方にとって、仲良しさんで、出来れば現地を侵略征服させて黙らせるか、ドーバー海峡の向こうに引きこもって下さるならば本当はとぉおおおおおおおおおってもありがたい国と王朝、この世に存在します。


そしてその国は、わしの祖国のイスパニアとも大変に仲がよろしいのです。


なんせ、ちょっと前までガチに帆船揃えて艦隊組んでガチの海戦とか、果てはドーバーを越えて向こうを攻めようとか、逆に向こうから上陸して攻め込もうとしていたかというくらいに仲良しさんなのでして、今でもドーバー海峡の漁業権を巡って毎月1回はなんか言い合いをしているくらいに昵懇(じっこん)な間柄。


ですが、英国は英国で南欧行政局、わけてもフランスにはあまり強く出られない事情が存在します。


それは、大人の事情。


ぶっちゃけ昨今の痴女皇国全体の政策としては女尊男卑の傾向なのですが、こと英国に関しては英国人の国民性を慮っておりまして、痴女皇国もあまり強く介入はしておりません、表向きは。


しかし、奴らの性質上、どうしてもどうしてもどうしても苦手っちゃ苦手な分野が存在するんですよ。


そのうちの一つが、食事…じゃなくて文化です。


この面だけはもともと、王族貴族がこぞって浪費傾向に走っていた反面、お洒落だの進んでるだのといった称賛を得るために邁進していたフランスに一朝の利があります。


そしてそのフランスや、あるいはイタリア系の文化に触れていたマルハレータ殿下が、南洋行政局や淫化帝国での出来事もあって「普通の恋愛を相応に尊重する文化文明も育てておくべきでは」という持論に至っており、マリアリーゼ陛下や田中雅美・痴女皇国内務局長もマルハレータ殿下の姿勢に賛同しておいでだからです。


で、色恋に関する物語の小説化戯曲化はもちろん、痴女皇国からもたらされた活動写真技術…つまりは映画について、フランス人にその活動の主軸を置いて南欧行政局全体で面倒を見るという方針が打ち出されております。


わしが映画「タンゴ・アルヘンティーノ」や鉄道娼婦シリーズといった活動写真に関わっておるのもこれが理由でございまして…そして、競馬を流行らせたいマリアリーゼ陛下の意向はともかく、馬を活用して燃料節約の一助としようという痴女皇国全体の政策について、文化面での乗馬の推進についても指示を受けておる立場なのです。


でまぁ、現在の比丘尼国大使であるムッシュ・支倉常長(はせくらつねなが)の後任として、現在は北方帝国はモスクワに駐在する武官であるムッシュ・西徳二郎(にしとくじろう)の名前も挙がっておりますが、とりあえずは比丘尼国の大使館はパレ・ド・トウキョウつまり東京宮という宮城造りの邸宅がセーヌ川沿いに存在します。


パリ市内に移築されて異様に長細いその威容を誇っておるベルサイユ宮殿からですと、まぁ歩いて5分くらいの距離ですかね。


そして、東京宮の南側のセーヌ川沿いの道はアベニュー・ド・トウキョウ…東京通りとされておりますが、これは比丘尼国との国交が成ったことを記念して名付けられたもの。


この東京通りを更に西へ進みますと、現在は比丘尼国への大使として派遣しているエミール・ギメという実業家の提案で開かれた東洋美術館という建物にも向かうことが可能。


だいたいの略図で示すと、こうなるそうです。


----------------------------------------------

グラン・パレ エリゼ宮 ベルサイユ宮殿→

          高等映画学院◯

        東京通り↓ 東京宮◯

   東洋美術館◯ ========

 トロカデロ広場◯    セーヌ川

オートゥイユ   / -------

⬜︎競馬場  //◯エッフェル塔


----------------------------------------------


「しかしのぅ、騎乗員養成学校のえいがを撮ること自体にはわしも賛同するけどよ…」


こう、申すのは「とりあえずフランス王家としてはフラメンシアの案には反対である」と言い出しかねない女であるテレーズですが。


「テレーズねーさま。どうせねーさまとしてはまたぞろ、フラメンシア義姉さまがすけべいな映画をうんぬんと言い出したいのでしょうけど、これは本国やマルハレータ殿下のあとおしもあってのこと。それにギメが横濱(ヨコハメ)から送ってくるじょうほうにも、こちらでの馬術がっこうのはなしをうけて、比丘尼こくでも洋式ばじゅつを教えるがっこうをつくろうかという気運もでておるとされております。ここいらで、むこうでもながしてもらえる映画をとるひつようをかんじますわ…」


ええ、テレーズの妹であるソフィー王女。


このソフィーちゃんはテレーズよりも更に年下ですが、考え方はめっちゃしっかりしてます。


「そして、たけいちくんが留学しているないようでさつえいすれば、おのずとあちらさまにもわかりやすいものがとれるはず…」


うーん、ソフィーちゃん、正論ですね。


さしものてれこも、この発言には合意せざるを得ない模様。


「まあ、ほんとうにやっていることをさつえいしてあげればよいのですから、何もないところからはなしをでっちあげるよりははるかに簡単なことだとおもいますの…フラメンシアおねえさま、えいがの題名も決めておられましたわよね…」


ええ、これまた、ソフィーちゃんの言うとおりなのです。


マダム・田中雅美からの入れ知恵もあって、題名だけは決めております。


Lads & Jockeys…騎手と少年たち、という題名を。

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