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早起きは三文の得? 厩務員は森に見た! -欧州・馬術学校ものがたり-  作者: 雀のお宿


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17/22

月の砂漠をはるばると(旅行を中断して帰ってきました)

「げほげほげほっ」


ええと。


お願いですから、頭巾やらマントやらをここではたくのは、ちょっと。


ええ。


砂まみれ、埃まみれの姿で、ベルサイユ宮殿の庭に転送されてきた御仁。


面識はありますので存じておりますけどね。


その装いにお目にかかったことは。


つまり、砂漠を旅するための白一色の装束を身にまとっておられました。


で、げほげほやってる周囲もそうですが、本人もこりゃたまらんという顔です。


(あー、申し訳ございません…砂嵐とやらに襲われまして…)


聞けば、とんでもない砂塵の壁に襲われて往生しておったところ、転送の依頼が来てたよなぁと思い出したマリアリーゼ陛下が、救出を兼ねて馬ごとこのパリに転送してしまったんだとか。


で、私らは朝食のちょうど後だったのですが、砂嵐に襲われた場所の時間はだいたい午後4時ころ。


聞けば、お昼の間の日差しも気温も高い時をやり過ごそうと、丈の高めの木の下で馬と同行者を休ませておったところ、突然の熱風と共に砂埃の壁が吹きつけてきたそうなのです。


で、とにかく未経験の現象にびびりまくったこの御仁、同行者ともども本宮に助けを求めたところ…ええ。


で、げほげほぱたぱたとやっておられるこの人物と類似の姿のお方がもう2人、この場におられます。


1名は、案内役として同行しておったという、マルハレータ殿下。


昨今では南洋行政局の顧問の立場に戻っておられるようですが、相変わらずどこかを彷徨っておられる人物です。


もともとは球根詐欺(おらんだ)国の王女殿下でしたが、南洋島に滞在中に南洋王国の政変に巻き込まれ、ごたごたの後で痴女皇国の幹部として頭角を現された御仁。


もう1名は、どうやら過酷な地域を旅するためにと偽女種状態になっている、少年。


そして、全身砂まみれになっている3人目が、オクタヴィア・罰姦聖母教会枢機卿です。


では、一行の案内役であり、ラクダの体の砂をはたいてあげているマルハレータ殿下にお聞きしてみましょう。


「ええと、ラクダがおるとゆうことは、殿下…淫化でも行ってはったんでっか」


実はこのフラメンシア、元々はイスパニア…スペインの王女という立場です。


そして痴女皇国・南欧行政局スペイン支部、その南端から暗黒大陸の諸子宦官国までは船で1時間少々という距離にある関係もございまして、交易の荷物をラクダごと船積みしてくる商人もおったりするのです。


ですので、ラクダという生き物にはまったく面識がないわけでもないのですが、さすがにこのパリでは珍しい部類に入るでしょう。


「いや、流刑地大陸ですねん…ほれ、淫化やと確かに海岸沿いの俗地は砂漠も砂漠ですけどな、あっこの俗地の聖母教会、罰姦管轄でもちょっと特殊な部類でっしゃろ…息子さんに未来の教皇候補として名を売らすにはちょっと不向きみたいで流刑地の行脚を薦められはったそうなんですわ…」


で、綿花畑や麦畑などの開発開拓はもちろん、鉄鉱石が採れるという流刑地大陸ですけど、地理的には近い南洋行政局が面倒を見ております。


しかし、南洋慈母宗の本拠地でもある南洋行政局の管轄でありながら、なぜにか罰姦の管轄になっておりますねん、くだんの流刑地大陸…。


そしてこの大陸、大半が砂と岩の…ええ、暗黒大陸北部や預言半島も驚きの砂漠地帯なのです。


しかし、そんな過酷な大地を旅して教会行脚をすれば、ハクもつくのではないかとオクタヴィア枢機卿母子に薦められた話があった結果、当地に詳しいマルハレータ殿下がラクダを曳いての付き添いで同行案内の道中だったようなのですよ。


ただ、さすがに人どころか獣すら迷い込んだら死にかねない砂漠の旅路はまだしも、尋常ではない砂嵐には我慢は出来ても大変は大変ということで、一旦の旅程中断とパリへの帰還が認められた模様。


それと、オクタヴィア枢機卿もマルハレータ殿下も、そして旅の主役である偽女種状態の少年も、かうがーるすたいるとかいう、お尻剥き出しの姿なのです、白の防砂服の下の姿。


で、尼僧服に着替えるにしても、髪の毛や体にまで入り込んだ砂埃をどうしましょうかと思案しましたところ、マリアリーゼ陛下からの心話が参りましてね。


(仕方ないなぁ…もし砂埃が大変なら、ちょっと雨、降らそうか…)


え。


いきなり早朝のパリに降る、雨。


それも、痴女島のスコールの次元で。


ちょ、ちょっと待ってくださいよ…マリアリーゼ陛下!


ええ。


その場にいた全員が、ずぶ濡れになるくらいの雨です。


しかし、雨は2〜3分程度で止んでしまいます。


ついでに、雲の大きさからするに、ベルサイユの庭にだけ降った模様。


あと…この雨、例の女体化の雨と同じく駄洒落菌の雨じゃありませんでしょうね…。


(安心してくれ。鉄扇公女能力でそこだけ降らせた…それに、パリ市内に定期的に降らせてる雨の仕掛けを使っただけだから変なもんは混ざってないはずだよ)


ええと、この定期的な雨というものですが。


今のパリ、例の燃料不足を補うため、市内の交通に馬車を活用しております。


つまりは馬車てつどうとか、馬車ばすの部類。


んで、この大型馬車。


牽引役の馬は鬼細胞で強化された荷馬仕様の馬です。


ただ、鉄道馬車は道の溝に埋める形で嵌め込まれた鉄の道に車輪を載せて走りますし、乗り合い馬車ばすも、石畳や舗装の道のへこみに車輪をはめ込んで走る区間が多いのです。


そして、この強化された馬たちでも、時に出るものを出します。


むろん、私たちも無策ではありません。


連邦世界のパリや他の都市で馬の利用が廃れた理由の一つに、この馬の排泄物をどう処理するかという問題があったようなのですが、理由はこのわし、フラメンシアとてわかります。


馬は、牛と違って食べた草を長い間かけて消化しないのです。


というより、できません。


その代わりにしょっちゅうパクパク食べて飲んでとやるのです。


ただ、飲み食いの方はなんとかなるとしても、なんとかならんのは出す方。


で、鉄道馬車や馬車ばすにしとる理由もこれでして、途中に馬用のトイレを作ってるのですよ。


無論、綺麗好きな馬のために、出した後の体の一部を洗う設備付きで。


しかし、それでも我慢できん場合は、路肩で漏らすのです。


そうなると、昔の…人の落とし物で汚れに汚れておったパリもかくやの悪臭と不衛生を思わせることになってしまいますよね。


そこで用いられたのが、暑い地帯である痴女島のスコールを毎日決まった時間に降らせる技術の流用。


天竺半島系の鬼族であった鉄扇公女という魔物を退治た際に得たふぁんたじー系のわざ、らしいのですが。


これを使うと、精気を消費するものの狙った場所に正確に雨を降らせる事が出来るそうです。


そしてパリ市内の主要部では、洗濯物を干すのはこの時間を避けてくれとばかりに道路洗浄用の雨を降らせる時間が決まっております。


(ま、今や痴女皇国本国と同じ被服管理システムの恩恵に預かってる人の方が多いと思うから、洗濯物の被害は最小限度に留められるだろうってことで踏み切れたんだよね、雨による道路清掃…)


これによって排泄物はもちろん、土埃やら何やらを洗い流してしまいますので、同じように石畳の道も多いロンドンから来た旅行者はパリの街並みを見て驚くのも今や風物詩。


とにかく、異臭や悪臭というものを感じること、あの悪疫猖獗(あくえきしょうけつ)の地だったサン・ドニ地区の工場街ですらほぼ、皆無に等しいのです。


(娼婦街ですらその清潔さに驚かれるねんからな…)


(痴女種化されたら悪疫と無縁になるとはいえど…暗黒大陸や中東行政局の砂漠地帯から来たもんでも驚く街並みにしようというのは正解やったのう…)


ちなみに、ブローニュの森やサン・ドニなどの森林公園に馬の学校やら何やらを造っている理由もこれに近いもんがあるのです。


馬に食わすもんと、馬から出てくるもんの有効利用の一環なのです。


そして、私ども痴女皇国フランス支部が、作物や畑地によっては12毛作とか24毛作とか、狂った作付け高を叩き出している原動力である緑色や黄色の卑猥な外観と名前の肥料である、商品名チン○ネックス。


他ならぬマルハレータ殿下の管轄地だった南洋行政局の流刑地大陸はもちろん、淫化帝国でも投入されて農作物や木材の大量生産に威力を発揮しています。


で、ブローニュはもちろん、このベルサイユ宮殿の芝生の維持にも使われておるのです、件のチン○ネックス。


これを撒くと、蒸気を吸引した者が発情してしまうという困った欠点はあるにしても、ベルサイユで飼育している馬の餌を供給するためにも是非に必要なのです。


何せ、普通は刈り取るか、巻取り可能な栽培床を巻いて据え置いて発酵させた方が栄養価が高まる牧草、そのまま馬に食わせても同じ効果が得られるそうなのですよ、このチン○ネックスを撒いた後の牧草地。


「わしも馬の世話に関わるようになって知ったんやけど、馬ゆうもんは豚や羊も驚くほどに餌を食うんやな…」


これ、牛の臓物と馬のそれが違うのも理由らしいのですよねぇ。


牛は一度食べた牧草を、その体内の臓物の中で何度も往復させることで、腐敗発酵させて滋養を高めるのだそうです。


しかし、馬はそんな能力がない代わりに、のんびりもぐもぐしている最中に敵に襲われてもすぐ逃げられるように、早飯に向いた臓物になっておると。


「ただねぇ…その代わりに糞に未消化の草がようけ混ざってるんですわ。もっとも、その馬糞は淫化や北方帝国支部南部の彷徨湖地帯ですとか暗黒大陸の北の砂漠のような、燃料に事欠く場所では極めて貴重ですからな…糞を乾かせば薪の代わりの燃料になるんですわ」


この、マルハレータ殿下の話は真実です。


パリでもクスクスという、小麦の粉のそぼろを米の代わりにして出す店がありますけど、そこで使ってる調理器は砂漠の民が用いている二段重ねの蒸し器そのもの。


で、砂漠では馬糞や羊・ラクダの糞はすぐにからっからに乾いてしまいますから、その乾燥させた糞に火をつけて煮物汁を煮込むついでに、二段重ねの上の器で小麦粉を蒸して飯の代わりとするのですよ。


「しかしなんですな、その黄金の馬、砂漠には強いとは聞かされておりましたけど…」


「確かに尋常な馬ではありませんでしたわね…で、フラメンシア殿下…流刑地での旅路で判明したのですが、やはり我が子ジョヴァンニの馬術については新しい教皇はもちろんのこと、他の教皇候補同様に教えて頂きたいところ。ここで罰姦の力及ぶ地の行脚を一旦は中断して、このジョヴァンニにもそちらの馬の学校を体験させてやればと親心で考えるのですけど…」

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