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早起きは三文の得? 厩務員は森に見た! -欧州・馬術学校ものがたり-  作者: 雀のお宿


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14/22

私はただの素人ですが…新婚さんいらっしゃい!

「ほほぅ、これがエリニュス号とイキートス号…」


騸馬(せんば)の必要性、痴女皇国世界だとないらしいですね、マリアさん…」


「それどころか優秀な種馬として頑張って欲しいくらいだから…」


騸馬とは何なのでしょうか。


「一言で言えば去勢。元々はカウボーイの間で始まったことでさ、牛なら牡牛の肉を美味しくするために有効なんだけど、馬の場合は暴れすぎたり発情期にえらいことになったり繁殖しすぎるんだよ。競走馬にも悪い影響があって、特に障害物競走用の馬にする時は致命的に危ない事故の原因になるからね、暴走…」


「ただし、痴女皇国世界で繁殖させた馬だと話は変わります…よね、マリアさん」


「そそ、高知能化できるから。あと発情しててもドレインして大人しくさせることも可能だし」


で。


私ら、何をしとるのか。


「しかし、ドイツ馬といえばシュレンダーハン牧場と思ったんですが、思わぬ拾い物があったようですねぇ…」


と、マリアリーゼ陛下と話をしておられる、連邦世界の乗馬服姿の日本人青年。


この方を紹介頂いた時のわしの反応ですが、「あーこれが噂の」としか思いようがございませんでした。


フランス語でPetit amiとかスペイン語でNovioと言うと彼氏という意味合いに受け取られますので、ぼーいふれんどっちゅう言い回しが一番しっくりくるのだそうです、マリアリーゼ陛下との関係。


(そういう助平な関係は全くないんだけど、政治的なこととか色々あって日本政府じゃ処理できない問題の仲裁や仲介役をやってもらってるんだよ。その代わりにあたしらも色々と皇室の手助けをしてるけどさ)


(ちなみに僕、既婚者です…ただその、妻がちょっと特殊な人物でして…はっはっはっはっはっ)


(るるる〜なぜか智秋姓じゃない〜あたしらの世界じゃ日本は男女別姓制度になってないのに苗字がない〜♪)


そう、ムッシュ智秋の奥様、名前が名だけ…仮にわしがその奥様の立場ですと、わしの名前はフラメンシア・バタイユ・ド・ヴァロワではなくて単なるフラメンシアだけになってしまいます。


そしてジャポンの命名規則では、そんな名前が許されるのはエンペラトゥールの御一家のみなのだそうですね…ほほほほほ。


そ、ムッシュ・智秋敬(ちあきたかし)


連邦世界の日本の皇帝(インペラトゥール)一家の密命を受けて、内々の支援者から選ばれたお方で、後期中高生(リセ)に該当する学校の時代からの仲だそうですが、聖院や痴女皇国と連携して諸々を(はか)るお立場だともお伺いしております。


つまりは、日本から遣わされた痴女皇国への大使のような存在。


ではなぜ、このブローニュの森の中の草原のような場所で、馬を検分しておられるのか。


それは、ムッシュ・智秋のご実家の家業の1つに由来します。


ムッシュのご実家経営の会社で所有するという牧場、元々は御料牧場と申す皇帝の持ち物だったそうです。


しかし、日本が戦争に負けた後で皇帝所有ではなくなったその牧場を譲り受けたばかりでなく、そこで優秀な競走馬を育てているとあっては、そんな生業のお家の生まれのムッシュ自身も馬を扱い慣れておる模様。


「じゃまぁ、ちょっとこの2頭、試乗してみてよ…」


つまり、馬小僧の愛馬であり、イキートスという名前が付けられた都々逸原産の馬と、イタリアから来た後でニシ・タケイチが乗馬を担当することになったエリニュスの2頭、今からムッシュ・チアキとその奥様が乗って品評されるようです。


で、念のため、安全の担保にマリアリーゼ陛下がついておられると。


「連邦世界だとさ、皇族は乗馬、させてもらえないらしいんだよ…万一の落馬が怖いからって…」


「で、他の国の王族の方々からしますと、日本の皇室は過保護だとも言われているんですよ」


つまり、王家の者の行動に箔をつけるためにも、乗馬を覚えておこうということらしいです、ムッシュ・チアキの奥様のご同行。


そしてムッシュの奥様というのが…ええ、連邦世界の日本の皇帝ご一族の出身であり、正真正銘のオカミサマの子孫に当たる血統のお方であると伺っては、そりゃあマリアリーゼ陛下からすると「遠縁のご親戚で本家筋の娘さん」となってしまうでしょう。


マリアリーゼ陛下が気を遣っておられるのは読心以前に、傍目からもよくわかりますから。


「では…イキートス号に妻、エリニュス号に僕が乗ってみましょう」


そして、旦那様同様に乗馬服でお越しの通称・若妻様。


何かあったらと旦那様とマリアリーゼ陛下がすぐ横に待機する中、台を使わずに、すっとイキートス号…つまり、馬小僧が虐待されていた一家から逃げ出す時以来ずっと連れ添ってくれていた馬に乗られるのです。


結構、慣れておられますね…。


(痴女島の山の中の牧場で練習させて頂いたことが数度…)


それと、この光景を見て仰天している者が2人、いえ3人。


まず、ロンシャン上級馬術学校の厩務員兼教務員です。


そして、馬小僧と西竹一(ニシ・タケイチ)


なぜならばエリニュス号もイキートス号も、馬術学校の中ではかなり気難しい馬として知られていたからなのです。


しかし、見ておりますと…。


「はいトロット…よし、キャンター!」


常歩から始めて、速歩そして駈歩までのペースが早い早い。


そして、ムッシュ智秋が乗るエリニュス号の先導で走るのについて行く、イキートス号と奥様。


本気の走りでも腰を浮かせて、巧みに操っておられるじゃないですか。


「奥様もわりと負けず嫌いだから…」


ええ、マリアリーゼ陛下も冷や冷やしながら見守っておられますよ…。


私も一応、なんかあった時の為に、お二方が馬に跨る直前、瞬間更衣で黒薔薇騎士団の制服に着替えましたけど…。


で、暫くその辺を走ってから戻って来られたムッシュ智秋と奥様。


どうも、途中で乗馬を交代しながら色々と走らせて確かめられたようなのですけどね、馬から降りられると開口一番、にですね。


「マリアさん…この二頭…調教の必要って…あります?」

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