援助の代償はフランス料理? 鴨の恨みは怖いで…
この、マドモアゼル・タノキチの言葉に仰天しかけるわたくしフラメンシア。
(でね、まずは競馬にお金を賭ける事を認めて頂けたとしてもよ、次は勝馬投票券を購入してくれる人口と、その平均投資額をある程度見積もるべきだと思わない?)
え。
(でないと、競馬だけだと絶対に予算オーバーになるか、どんなに楽観的に見積もっても大赤字確定になるわよ…ただ、今回は単純に競馬用の馬や人を揃える話だけじゃなくて、欧州を中心として家畜の利用を見直す話の一環としてまりり…上皇から案を貰っているし、牧畜事業自体が内務局発令の通商局主導事業かつ、文教局も厚労局も国土局も協力しているから競馬事業の単独赤字の話にならないとは思うんだけど…)
ひぃいいいいい。
これには皆が顔を蒼白にしました。
むろん、真っ青になる理由は明白です。
誰も、赤字を追求されたくはないでしょう。
それも、フランス…特に旧王家の関係者は。
(ですから、私の提案する競馬関連の福祉事業化は必須だと思って下さい。赤字を減らして可能なら売上と利益を出して欲しいのはやまやまですが、次善の策として慈善事業化することで、聖院規範の「禁止する方」ではなく「実施する方」に該当する行いとして認定頂けるように努力願います)
ほう。
(マイレーネ…言われてみればその通りだな…聖院規範のうち、女官が行うべき義務の項目の中にな、田野瀬さんの主張に該当させる項目はあるか…)
(少々お待ちを)
で、またも取り出された紙には、なんと書かれておったのか。
一、生くるはこれを生かすべし
一、死ぬるはこれを看取るべし
一、助けを求める者にはこれを助くるべし
一、施しを求める者にはこれに施すべし
一、然してその代償を必ず求むるべし
一、人の利の天秤は傾きを直すべし
(ええと、これ、解釈が必要だな。つまり…聖院規範では助けるし施すが、それが特定の国や人の一方的な利益となるものであれば是正する、ということだ。あと、聖院を騙して戦争に勝ったり他者を著しく害する部類の支援依頼を受けるのはもちろん、そういう人間社会の利害で単純に一方だけを利する援助を行う事も禁止するという内容なのだよ)
つまりは、聖院の時代であれば人の国の統治には直接は関与しないが助けてくれと言われたら助けるし、困っていると言われれば援助や支援も行うということだそうです。
ただし、戦争に勝つ事に類する部類の支援は…。
(そうした聖院を謀る部類の行為をした時点で、最悪は滅ぼす事も有り得たよ。まぁ、殺すのではなく首謀者を女官や罪人にしてしまう程度だが…)
(あと、助けますし施しますが、その代償は必ず求める事。これも聖院開闢以来の規範ですね)
そうです…支援や援助の代償は必ず、きっちりと貰うのも教えられました…フランスもイスパニアも、助けられた代償に、痴女皇国の行政介入を受け入れておりますが、これがまさにその代償なのですよねぇ。
で、アレーゼ本部長のお言葉。
(どうかね田野瀬さん…あなたは既に、これを満たす対策も考えついているようだが…)
(はい、ある事例が参考になると思いますが…その前にまず、競馬での売上や経費支出の予測について、実施の必要性をお話しさせて頂ければと)
つまりは、マドモアゼルはまず、競馬開催に必要な経費と、そして馬券の売上に関する数字をある程度きちんと出すべきであるとのご主張です。
しかし、必要性は理解できますが、実際にそんな数値の算出は可能なのか。
(出来ます。というか痴女皇国の支配地域だと、収入や税収予測は私の元いた国よりも遥かに簡単なのよ…)
(フラメンシアちゃん…たのきちの言葉にうそはないのです…今やスペインに続いて、フランス王国でも聖環決済が普通になってしまいましたよね…)
確かに、ベラ子陛下の言われる通りでございます。
(その聖環の持ち主の預金額はもちろん、収入支出も財務局では完璧に把握できます。よしんば貨幣による決済を行っていたとしても、その額は今や僅少になっているはずですよ…現金を持っておくよりも、今は聖環口座に入れておく方が盗難の危険がありませんからね…)
むむむ。
言われてみればその通り。
(で、これは聖院金衣銀衣家族会の皆様が懸念しておられることでもあると思いますけどね…連邦世界の日本で馬券を買うような人は、必ずしも所得が高い訳じゃないんですよ。むしろ、低所得者の方が一発逆転を夢見てギャンブルに手を染める傾向があります)
はっきりと言い切る、マドモアゼル・田野瀬。
この方が主体となって痴女皇国の財務部門を一大組織に押し上げた経緯は伺っておりますが、こと、おゼゼの話に関してはタノキチ様に話をしておく方が良いとまで支部幹部が口を揃えて言われとる理由もわかります。
(で、聖院規範で女官や罪人の賭博を禁じている理由がまさに、この一発逆転を夢見る傾向を恐れていたからだと私は考えます。実際に日本屈指のスラム街である大阪市の某所では、取り締まりがあるまで公道上で現金をやり取りしながらカード賭博…手本引きやサイ本引きと言われる特殊な絵札を使用して、反社会的集団が労働者からお金を巻き上げていました)
え。
そんなん、許されるもんでしょうか。
(もちろん、ダメです。しかし第二次世界大戦後…太平洋戦争に負けた後の混乱の中で反社会勢力は大きく勢いをつけていたのです。そして江戸時代からの伝統で、賭博を開催する専門職でもあった彼らは…一言で言うと「手慣れていた」のですよ…)
で、「麻雀物語」だの「ドサ健ばくち地獄」とかいう表題の電子書籍が送られて来たりします。
(まりり、これでいいのよね…あんたが大好きな麻雀とか花札とか無茶苦茶な博打打ちの生態事例…)
(なんですかこれ…麻雀打ってる最中に覚醒剤中毒の症状が悪化して死んだ相手から身ぐるみ剥がすだけじゃなくて死体を排水溝に捨てるとか…むちゃくちゃですよ…フィレンツェも大概治安が悪化してましたからテヴェレ川に時々死体が浮いてるのなんて当たり前だったって叔父も言ってましたけどね…)
ええ、ベラ子陛下が呆れておられますけど。
(あの時代はそれで通ったらしいから。あと背中が煤けてるのとかご無礼とか無敗の男とかで完璧。玉を弾いたり擬似硬貨を入れて目押しする方での裏基板とか注射屋さんカバン屋さんの話とかあったら更にオッケー)
なんですのそれと思いましたが、マリアリーゼ陛下のおっしゃる話です。
絶対にろくなこと、書かれてはいないだろう。
私にはそういう確信がありました。
何といってもイカサマ大好きな娼婦の口車に乗って散財した、ドナイシタン・サド侯爵という好例が比較的身近な事例として挙げられますから。
(なんであれに引っかかるかなあのおっさんは…)
ええ、変態エロ小説家でもあったサド侯爵に関わる顛末、わしとテレーズは特に、よう知っとるのです…。
(ふらこに同意。あれこそ賭博のあかんところを煮詰めたような話やで…)
しかし、マドモアゼル・タノキチのお話の感触では、過剰支出への対策案も、おありの様子。
(ご明察です、フラメンシア殿下…要は所得や貯蓄額に応じて馬券やら富くじへの購入支出を制限すればいいだけだと私は考えます)
でぇえええええええ。
(なんで驚くんですか…そりゃあ連邦世界であれば基本的人権とか財産権とか色々と個人の権利にやかましくもなると思いますけど、そもそも基本的人権があったら、私はベラちゃんや初代様にあんなんされたりこんなんされてません…)
(たのきちの悪意は深海のように深い。その思いで明日の夜は報復を為すことにしましょう…)
(せんでええ。ともかく、罪人なら罪人の口座残高や収入は一瞬にして財務局の端末で把握できる訳ですから、そこから可処分所得の制限を設定すれば馬券を買いたくても出来ないようにしてしまうことは簡単です。それに…競馬限定ですけどね、一ヶ月に賭博に使える金額を制限すれば、おのずと勝ち馬を予想するための予想や検討に対して真剣に取り組むと思いますよ…直感や対戦相手との心理戦になりがちなカード賭博の部類と違って、その場ですぐに結果が出ないのが競馬の特徴ですから…それゆえに依存性は他の賭博よりも比較的低い、私はそのように考えております)
(確かに、釜ヶ崎のおっちゃんたちが博打に耽っていたのは、自分たちの寝泊まりしているドヤのすぐ近くで賭場やってたからだからな…)
(新世界の将棋場でも子供ですら100円玉を差し出して打っていたとか…)
(で、私が競馬を容認しようとしている理由ですが、かかって牧畜・畜産事業への投資回収のためです。決して賭博常習者を増やすためではないことをご理解下さい…それにね、まりり…あんまりバクチにハマらせすぎるとね、多分、精気授受がおろそかになって精気収入にもマイナスの影響が出るわよ…連邦世界から送られてきた女の人、特に日本発の人たちのそれまでの生活実態を思い返してみてよ…いわゆるパチンカスだの、水商売経験者で裏カジノどっぷりどハマりとかさ…)
(株や国際金融先物に手を出して首が回らなくなったり離婚した人もいましたね…)
(女の執念深さが裏目に出て、相場や銘柄を深追いするとかね…)
(スロで天井まで追いかけるとかあるあるよね…)
聞けば、南洋行政局管内、特に出稼ぎ国に該当する界隈から日本にやって来た女性がそういうお手軽系の賭博に嵌って所得を巻き上げられていたとか、不幸な事例には事欠かないようです。
そして、そんな女たちが男よりも賭博という思考に陥って、男たちに相手にされなくなったりだの、ヒモと呼ばれる不労傾向者の男に捕まって男女共々生き地獄に陥っただの、人生の転落絵図には事欠かないと日本出身の方々は口を揃えるのです。
(しかし、競馬であれば開催日を絞ることで依存性を減らすことが可能になります。これも上皇マリアリーゼがよく知っていると思うのですが、競馬の配当率については主催者が一定の範囲内で定めて良いことになっています。そして、そのレースでの馬券収益を予想してオッズ…配当率を最終的に決定して告知するのは主催者の権利であり義務です…)
(それとさぁ、競馬って予想のためにはその馬の勝負の実績も必要なんだよな…競馬新聞を発行する必要性なくね?)
(それはまりりに任せます。ですが、そういう競馬情報の提供を行う場所については、馬券発売所と兼ねさせることで人の雇用に繋げることができるわよ)
ほう。
(で、ここからがアレーゼ本部長やマイレーネ本部長の疑問にも答える話となります。連邦世界の日本では、宝くじ…富くじの発売所が街中や、場合によっては郊外にも存在しました)
で、ここで人が一人中におるだけの売店のような小さな店の画像が送られて来ます。
(そして、痴女皇国世界の欧州の駅にも順次設置されておると思いますが、旅客向けの食品や飲料に簡単な読み物や旅行用品を売る売店、ありますよね)
ああ、キオスクのことですね。
(あそこで馬券も売るのです。既にあのキオスク、富くじ発売所としても機能させる予定があったと思いますが…まりり、宝くじ発券機とかサッカーくじ発券機って置く予定よね…)
(うん。多機能くじ発券機だろ?…なるほどね、あれで紙の馬券を売るわけか…)
(例えば、電子決済だと本人の口座からしか決済できないわよね…だけどさ、召使さんへの預かり金預託モード…通称お使いモードって聖環に実装したじゃない…あれを使えばご主人が「お前の分の富くじや馬券も買って来ていいぞ」という風な使い方もできるでしょ?)
(なるほど、それで紙のくじだけじゃなくて馬券を出せるように…たのの言いたいことはようわかりみだから、その機能実装は券売機メーカーに依頼すれば対応はしてくれると思うよ…)
(マリア。どういうことかな)
(ああ、おばさま…あの手の富くじ販売スタンドって、日本だと民間業者への委託形態で運営されているんですよ。売店に併設されたものや単独の売り場、築城の駅とか博多の駅にもあったでしょ?)
(確か、太宰府にもあったような記憶もあるな…なるほど、そういう街中の売店でくじと同じく馬券も売るわけか。そして新聞の類も一緒に買わせればよいと)
どうやらアレーゼ様、連邦世界のそういう売り場を直接に目にされた経験、おありのようですね。
(もちろん聖環決済ならお使いモードでなきゃ購入制限はかけられるでしょ。未成年が買う場合は決済ロックするか、小遣いの範囲で買わせてもいいわけですし)
(そして、売店の売り子を聖隷騎士団所属扱いにするわけか…福祉目的で雇用した人材への雇用先とするなら、慈善事業に該当するな…マイレーネ,どうかな)
(そもそも聖隷騎士団は聖院規範を遵守すべく設立された慈善騎士団と伺っております。孤児や困窮者への雇用を満たす目的であれば問題はないかと)
(それでパチンコ屋の景品交換と似たことになるって訳か…確かにあれ、福祉事業扱いだしな…で、馬券も連邦世界の日本のスポーツくじと同じ扱いにするってことにすりゃ、これまた福祉事業になるよな…)
(ただね、まりり…馬券の売り上げや宝くじ…富くじの収益は直接に競走馬の育成や競馬場の整備には使えなくなるからね…それに福祉事業にすることで、本宮の持ち出し経費も増えるからそこは承認してよ…)
(そりゃまぁ、仕方はないよな…それに馬術学校も元々、体育学校と同じで文教局の扱いだし…)
(とまぁ、競馬で胴元もうっはうっはとはいきませんけど、少なくとも競馬事業が大幅に当たらなかった場合でも福祉目的や教育目的でやっているということで、支部債務にはならないように手を打ちました。テレーズちゃんもフラメンシアちゃんも、これでいいわよね?)
(あぃ…わたくしどもに異存はございまへん…ふらこもそれでええやろ?)
(せやな…それにアレーゼ様にマイレーネ様、貧民への雇用拡大や男子についての進路希望ともなるかと存じますので、聖院規範への抵触とならないように現場のわたしどもも努力させて頂きます…)
(まぁまぁフラメンシア、元々は馬車や馬の活用もあって言い出された話でしょう…アレーゼ様)
(北米でも鉄道の駅まではともかく、そこから先については必ずしも自動車一辺倒という訳じゃないのはフランスと似た状況だ。君たちの取り組みは北米でも参考にさせて貰えるだろう…そして中米や南米でも家畜活用が改めて取り沙汰されている中で、多少の支出は先行投資として致し方ないということで私も助言させてもらおう…ただ、マリアの競馬でギャンブラーになる夢はちょっと横に置いてもらうことになるぞ、いいな…)
(あい…)
ええ、マリアリーゼ陛下がしょんぼりとされていますが、仕方ありません。
それに、タノキチ様の出した「福祉事業として馬券を売ったり予想情報を提供する」案の方が、現実的かつ庶民の雇用や消費増大にもつながるでしょうから…。
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で、その翌日の、おひる。
「エスカルゴのブルギニョンでございます…」
ええ、熱々の陶器の皿に乗った、殻付きのエスカルゴが1人あたま、6つ。
しかもパセリを和えたバターをどかっと詰め込んだ上で焼いたものです。
あ、下拵えとしてハーブどっさりのブイヨンで煮込まれてますよ、このカタツムリ。
「いやー、貴賓食堂の幹部会の後の料理もなかなかだけどさー、本場で頂けるのは格別よねー」
ええ、ベルサイユ本宮で出される食事にお越しの、マドモアゼル・タノキチのアオザイ姿がそこに。
というか、接待です。
もう、何をどう見ても接待なのです。
「ワインはそのエスカルゴが葉っぱを食うておりましたブドウの産地となります、ブルゴーニュ産の銘柄にて…」
ええ、モンラッシュというワイン蔵がそこにあります。
つまり、かなーーーーーーーーり、ええお値段のワインがまさに、マドモアゼルに振舞われておるのです。
(わしらも同じもん頂いとるやないけ…)
ええ、またしてもこの食卓に座った全員の費用として見た場合は一食100万フランが消し飛びかねないカルトなのです…。
まず、鴨のフォアグラとパセリのサラダに始まりまして、エスカルゴを煮たブイヨンの上澄のクルトン添えが続きます。
そして焼魚料理の代わりにそのエスカルゴをば。
更にはこの後、マドモアゼルのたってご希望で、鴨肉ローストのビガラートソース添え。
いや、今は鴨にあまり脂が乗ってませんからオレンジソース煮の方がええんちゃいますかとは事前にお聞きしました。
しかし、しかし…。
「いつぞやのりええやベラちゃんにマリーさんが、出張にかこつけてパリで鴨食ってやがったのを聞かされたあたしの恨みをここで晴らす絶好の機会なの…わかるよね?」
と言われたがために、ローストした鴨の胸肉にオレンジソースを添えて出すことになったのです。
ちなみにオレンジ、キュラソー産ほど苦くはありませんが、あまり甘くないやつですよ。
で、赤ワインもエスカルゴが葉っぱバリバリ食ってやがったブルゴーニュのものです。
というか、ブドウ畑にはアホほど湧いておったこのエスカルゴ、一時期はどないして退治しよかという話すら出ておったのです。
しかし、マダム田中はもちろん、マドモアゼル・タノキチなどなど連邦世界の日本出身者の方々からことごとく、退治るなど勿体無いという話が出ました。
そして、うちの名物料理人であるカレームはもちろんのこと、痴女皇国の料理番とも言えるムッシュ・中井までもが「連邦世界だと逆に絶滅寸前で養殖までしているんですよ…」と、カタツムリへの助命嘆願を出して来られたのです。
むろん、その背景たるや皆様が「あれは食材。食える。美味い」と声を揃えて主張された点につきます。
で「フランス名物であるエスカルゴを何とかするためにはこれしかあらへんやろ」ということで、食材に利用することが早期に決まりました。
そればかりか、例の卑猥な名前の肥料の緑色の方はまだしも、強力な黄色の方を原液で使えばエスカルゴを駆除しかねないということで、カタツムリを飼育する用途兼用のブドウ畑を用意して一定供給数を確保。
(あの肥料を使えばさ、エスカルゴに齧られた葉っぱもすぐ元に戻るから…)
ええ、マリアリーゼ陛下も、エスカルゴ保護を主張なさった組に入っておられました。
そして供給数が増えたエスカルゴは料理の食材としての利用が広まりまして、パリ市民以外にも、日本における「サザエのツボヤキ」「アサリのサカムシ」程度の浸透度で馴染むに至ったのです。
(食用ガエルも飼育してますが、そっちはイタリアに譲ってもええんちゃいますかとも…いや、嫌いなわけやないんですけど…)
でまぁ、王家の食卓にマドモアゼルをお招きしておる理由ですが、実のところは馬券購入人口の見積もりのお願いとか、財務局に関わるお話のためでもあります。
ですので、この席にはわしとてれことソフィーちゃん、そしてマドモアゼルの4名が座っておるのみ。
(ベラちゃんへの意趣返しのためにおねだりした事なので、歯軋りさせるためにも皇帝の出席は許しませんでした…)
ええ、食い物の恨みの恐ろしさ、かくの如し。
しかし、この食事の席では真剣に、聖隷騎士団や聖院学院にも関係する福祉予算として競馬や牧畜関係で生じる支出に関わる内々のお話もする予定なのです。
というか、しております。
そして、財務局の幹部が主導であれば、例え皇帝や上皇であっても直接に同席はできない場合があるそうです。
(何より、デルフィリーゼ局長がまりりのおばあさまですから…)
ええ、それに、局長は聖院金衣でも5本の指に入る武闘派でも勇名を轟かせた方だということ、本宮地下の墓所の「真っ白に燃え尽きた」肖像画のおかげで皆が知っておりますしね…。
「ま、これで経費面でフランス支部や南欧行政局の財源を過剰に脅かすことなく事業に邁進してもらえると思いますよ…あとは、心置きなくやってください…馬術教官についても、智秋課長…若様のおうちの牧場で教育を引き受けてもらっていますし、一流の競馬騎手を育てる人材を供給できるのは間違いないと思いますから…)




