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5 王城での昼餐会 1



 セレン様とのお茶会が解散になったあと、セレン様から頂いた手紙のお礼の品を眺めていた。


 数日前に、私の部屋の半分を占拠するほどのプレゼントを贈ったはずなのに、また部屋の半分くらいを占拠している。


 一体、前回と今回でどれほどのお金がかかったのだろう。きっと気の遠くなるような額に違いない。

 私はそう思い、お金のことを考えるのをやめた。


 プレゼントの中身は前回とは少し違っていた。

 もちろん、ドレスとかアクセサリーもあったのだが、ペンとレターセットが結構多かった。


 もっと俺に手紙を書けってことなのだろう。

 面倒くさいし、絶対に書いてやらない。


 それにしても毎回のように、こんなにたくさんの品を頂いても、お金がかかるし、場所取るし、全部着れきれるか分からない。


 今度からは無くていいと伝えておかなければ、大変なことになりそうだ。

 手紙、書く? でも、書きたくない。でもでも、せっかくレターセット貰ったんだし、書くべきなのだろう。もう一度、お礼も兼ねて書いてあげよう。


 そうして、私はセレン様から貰ったレターセットを使って手紙を書いた。


「なんやかんやでレーア様も嬉しいんじゃないですか?」


 ニヤニヤしながらララが聞いてきた。

 もちろん、ララが期待している答えは返せそうにない。ちょっと申し訳なく思うが、ここはきっぱりと言っておかなければ。


「嬉しいというよりも、困ってるの方が正しいと思うけど」

「でも、少しだけ、少しだけでも嬉しかったりしません?」

「まあ、ちょっぴり、ほんのちょっぴりだけね」

「おやおやレーア様?」


 これはサービス精神というものだ。

 ララの圧に押されたのもあるかもしれないけど、決して嬉しいとは思ってません!

 ……でも、ちょっぴり嬉しかったのは本当なのかもしれない。


「あ、そうでした。レーア様、色々と招待状が届いてますよ」

「招待状? 今まで全く届いて無かったのに……。どうして、いきなり?」

「それは王太子殿下の誕生パーティーで、王太子殿下とレーア様が婚約している、と聞いたからでしょう」


 影響が凄すぎる。ララに招待状を持ってきてもらったけど、何通あるのか数え切れない。


 貴族たちは本当に噂話や恋愛話が好きね。みんな気になってしょうがないんだろうな。それで私をお茶会などに招待して、話を聞こうとしたのか。


 でも、社交は貴族にとって必要なもの。私だって社交は苦手だけど、結構頑張っている方だと思う。

 だけど、これ全部参加は無理がある。どれに参加するのかを選ばないと。


「ねえ、ララ。この中で絶対参加しなきゃいけないものはある?」

「はい、ありますよ。こちらです」


 ララが何通もある招待状の中から、一つの招待状を探し出し、私に差し出した。

 私はそれを受け取ると、誰からなのか確認する。


「えっ……!」


 当然の反応だろう。国王陛下からだったのだから。


 ど、どどどどうしよう。国王陛下だなんて!

 しかも、日程が明後日なんて急すぎる。どうやら、国王陛下と王妃様、セレン様と私の四人で、昼餐会をしたいらしい。


 セレン様はいいとして、国王陛下と王妃様だなんて絶対に無理! 多分、緊張してせっかくのお料理の味が分からないだろう。


 でも、国王陛下からだから断るわけにはいかない。すぐに、昼餐会の参加の旨を書いた手紙を王城に送った。



 ◇◇◇



 それからすぐに昼餐会の日になった。


 着ないつもりだったものの、セレン様に会うのだから、セレン様に貰ったドレスを着たほうがいいだろうということで、私は嫌々セレン様に貰ったドレスをララに着せられた。


 アクセサリーも靴も全てがセレン様から貰ったもので、本当は嫌なのだが、悔しいことに自分に似合っている。

 そして、怖いくらいにサイズも全てぴったりだった。


「すごくお似合いですよ、レーア様。王太子殿下は、レーア様のことが本当によく分かっていらっしゃいますね」


 ララはものすごく褒めてくれるが、セレン様に何故かムカつく。

 ああ、婚約解消したい。


 ん? そういえば今日って国王陛下と王妃様とセレン様と私だけなのよね?

 これって人違いでしたってオチなんじゃないの?

 それで私を呼び出して婚約解消ってことじゃ……!


 よし、行く気出た!

 だってそうとしか思えない。私の記憶には、王太子殿下との婚約を承諾した覚えは全く無いのだから。


 ゴトゴトと馬車に揺られながら、王城へと向かう。


 そして、馬車に数十分揺られたあと、馬車がぴたりと止まった。すると、目の前には真っ白の壁に青い屋根をした王城があった。

 とてつもなく大きく、庭も広い。噴水がいくつもあり、反射によってキラキラと輝いていた。花々もそれぞれが美しく咲き誇っている。


 これを建てるのにどれほどのお金が掛かったのだろう。想像するだけで頭が痛い。


 馬車から降りると、執事服を着た若い男性が立っていた。


「レーア・コンバラリア様ですね。お待ちしておりました。早速ですが、ご案内致しますね」

「あ、はい。よろしくお願いします」


 流石、王家に仕える者といったところだろうか。所作や言葉遣いがすごく丁寧で美しい。

 多分、私の方が所作も言葉遣いも汚い。貴族令嬢として危機感を持つべきだろう。


 その男性についていくと、一つの扉の前で立ち止まった。


 どうやらこの部屋らしい。


 その男性がゆっくりと扉を開けてくれると、部屋の中が少しずつ見えた。

 もうすでに、皆様お揃いのようだった。


「遅くなり、申し訳ございません。レーア・コンバラリアです。この度は、昼餐会に招待して頂きありがとうございます」


 セレン様から貰ったドレスの裾をちょんと摘み、カーテシーを披露する。


 すると、穏やかではあるが威厳のある声が響いた。


「堅苦しいことは良い。ここは非公式の場だ。肩の力を抜いてくれ」


 国王陛下にそうは言われたものの、肩の力なんて抜けるわけがない。抜ける人なんて限られているだろう。

 内心そう思いながらも、案内してくれた男性に椅子を引いてもらうと、そこに腰掛けた。


 そして、その男性は軽くお辞儀をすると、この部屋から出ていく。


 その男性が出ていくのを確認したセレン様は、すぐに私に話しかけてきた。

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