35 聖女の役割
「くしゅん!!」
風邪ひいた……。
私は今、自分のベッドに寝転がっている。
風邪をひいてしまったから、ララに寝とけと言われたのだ。
「レーア様、これでも寒いですか?」
ララが私に尋ねてきた。
恐らく、ララは私の上に積み上がっている毛布のことを言っているのだろう。
毛布だからそんなに積み上がってないように見えるが、私がくしゃみをするたびにララが毛布を重ねてくるから、非常に重いのである。
ララは一見常識人に見えるかもしれないが、全く常識人ではない。
「ううん。毛布重ねすぎて逆に暑いし、苦しいから、取ってくれない?」
私がララに毛布についての苦情を言うと、ララはすぐに謝って毛布を取ってくれた。
「あっ、そうでした。レーア様、王太子殿下がお見舞いに来られているのですが、お通ししてもよろしいですか?」
「え!? あ、えと……」
セレン様への好意を自覚したせいか、セレン様の名前や王太子という言葉を聞いただけで、過剰に反応してしまった。
「レーア様、大丈夫ですか? いつもと様子が違いますが」
おかげでララに心配されてしまったじゃないか。もう。
「う、うん。大丈夫大丈夫。セレン様に風邪をうつしてはいけないから、帰ってもらうように伝えてくれる?」
「はい」
本当はセレン様に会いたいよ?
でもね、こんな状態の私をセレン様に見られるのは、なんかちょっと……。分かるよね!?
ララが私の部屋から出ていく音が聞こえた。
「はぁ~〜〜!」
私は大きなため息をつく。
私がセレン様を好き?
未だに信じがたい。だけど、そう思えばそう思うほど、そう思えてくる。
もちろん頭の片隅には、あの時の彼もいる。
忘れようとしても忘れられない。
だけど今は彼よりもセレン様といたい。
心からそう思えるんだ。
これが本当に『恋』というものなのかは分からない。だけど、本当にセレン様と一緒にいたいのかと聞かれたら、そう思える。
すると、私の部屋の扉が開く音がした。
「レーア!! 大丈夫!?」
ここにいるはずのない人物の声が、私の耳に届いた。
私の願望からきた幻聴かなにかかと思っていると、その人物が私の視界に入った。
「セレン様!? なぜここに……」
「良かった。レーア、生きてる……!」
色々と私も疑問だらけだったけど、セレン様の一言で冷静になれた。
「そ、それは生きていますよ。ただの風邪ですし」
やっぱり少しセレン様を意識して普通に話すことが出来ない……。
「良かった、レーア」
「あ、あの、私、ララに風邪がうつるといけないからと、セレン様に帰ってもらうようお願いしておいたはずなのですが……」
疑問に思っていたことをセレン様に聞いてみた。
「あ、ごめん。レーアに会いたかったし、それにレーアから風邪をうつされるなら全然よかったし、無理矢理きちゃった」
『きちゃった』じゃない!!
急に自分が部屋着でいるのが恥ずかしくなってきたため、慌ててララが被せてくれた毛布の中に潜る。
「あ、レーア様、すみません。王太子殿下にどうしてもと言われたので、私にはどうにもできず……」
「あ、ララは悪くないからね。悪いのは、この国の王太子だから」
私は呆れを含んだ視線をセレン様にやる。
同様にララもセレン様に同じような目で見ていた。
私もそうかもしれないけれど、ララは流石に不敬なのではと思ったが、セレン様だしなと思い無かったことにした。
「そういえばレーア、父上から手紙を預かってたんだ」
「国王陛下から手紙ですか?」
「ああ」
セレン様から手紙が渡される。
私は素直にそれを受け取ると、さっそく中身を取り出した。
そこには二つ折りにされている一枚の紙が入っていた。
私は恐る恐るそれを開く。
『レーア嬢、いきなりですまないが、セレンから「すずらんの聖女」について聞かせてもらった。遅くなったが、この件については伏せておいてほしい。
そこでなんだが、レーア嬢の父、コンバラリア伯爵より、精霊の花畑に異変が見られるようになってきたと報告があった。
文献には、「すずらんの聖女が現れたとき、精霊の花畑に危険が訪れる」とあるが、その危険が今回の異変と関わりがあるかもしれぬ。
精霊の花畑を救えるのは、聖女のみだと思われる。
すまないが、レーア嬢には精霊の花畑を危険から守ってほしい。方法はまだ分からないが、分かればまた連絡する。
レーア嬢には負担をかけてしまうが、精霊の花畑という重要なものを、どうか守ってほしい』
と、その手紙には綴られていた。
聖女の役割というのは、精霊の花畑を守ること。
もちろん、国王陛下に言われなくとも守るつもりだ。
ただ、何をして良いのか分からないし、私はこんな状態だ。
まずは風邪を治すことが、最優先事項だろう。
すると、私が国王陛下からの手紙を読み終わったことを確認したセレン様が、手紙の内容について尋ねてきた。
この件については伏せておいてほしいと言われているけど、セレン様はもともと知ってるのだからいいだろう。
ただ、ララはダメだよね。
私はララに退室してもらうと、セレン様に手紙を渡した。
読み終わったセレン様は、少し怒っているように見えた。
「あのバカ父上!! レーアに何かあったらどうするつもりなんだ……!」
そんな大袈裟にしなくていいと思うが、やっぱり嬉しく感じる。
「私は大丈夫です! 聖女になってしまったからには、聖女の役割を全うします!」
「レーア……。俺もレーアを守るから」
「ありがとうございます、セレン様」
セレン様の言葉に、私の心臓がドクンと跳ねたのが分かった。
「その聖女の役割を全うするために、まず私は風邪を治そうと思います! ……くしゅん!」
いつも読んでくださって、ありがとうございます!
しばらく更新が空いてしまって、すみません。
できるだけ早く投稿できるように頑張りますので、これからもよろしくお願いします!




