28 お兄様の恋 4
なんとなくだけど、なんか話が噛み合っていないような気がする。
「あの、セレン様?」
「どうしたの? レーア」
「私、セレン様がヴィルお兄様たちの恋の応援をしていると思っているのですが、合ってますか?」
「───……ん?」
さっきの私の台詞を今度はセレン様が言った。
やっぱりどこかで話が食い違っていたようだ。
「レーア、一体何を言ってるんだ?」
「や、やっぱり!」
「何がやっぱりなんだ?」
セレン様はまだよく分かっていなさそうだったので、話が噛み合っていないことを説明し、ヴィルお兄様たちの恋を一緒に応援してくれないかと頼んでおいた。
セレン様は心よく一緒に応援してくれると言ってくれたので、これからの作戦について話をすることにした。
「セレン様、あの二人をくっつけるためにはどうしたらいいと思いますか? あの鈍感お兄様は、まだ自分の恋心に気づいていないみたいなんですが……」
「なら、まずはヴィルに自分の恋心を自覚させる必要があるけど……」
「ですよね……」
私たちは揃って黙り込んだ。
なぜなら、どうやってお兄様に自分の恋心を自覚させたらいいのか分からないからだ。
ていうか、そもそも私たちが自覚させるものでもない気がするけどね。
でも、私は早くお兄様にくっついてもらいたいのだ。そしたら私にも、お義姉様ができるし。
というか、フィアナ様にお義姉様になってもらいたい!
フィアナ様はいつも優しくて、王国の中でも女性ながら魔術師団に所属しており、私が唯一尊敬している方なのだ。
ちなみに、お兄様は第一魔術師団の師団長だったりする。お兄様は教え方はお世辞でも上手いとは言えないけれど、実力はあるのだ。一応……。
って、そんなこと考えてる場合じゃない!
今はお兄様は自分の恋心を自覚させる必要があるのよね。でも、そんなの二人きりにするとかしか思いつかない。
「セレン様は何かいい案とかありますか?」
「俺の可愛いレーアの力にはなりたいけれど、恋心を自覚させる方法なんて思いつかない」
やっぱりセレン様も思いつかないみたいだ。
でもまあ、とりあえず二人きりにしてみるか!
「セレン様、とりあえずヴィルお兄様とフィアナ様を二人きりにするのを手伝ってくれませか?」
「ああ。協力しよう」
セレン様は二つ返事で快諾してくれ、私たちは二人きりにするための作戦を練ることにした。
「レーアがヴィルたちを上手く庭に連れ出して、こっそり二人から離れるっていうのは?」
「どうせ二人きりにするなら、綺麗でロマンチックなところがいいですね」
「なら、あの辺はどうだ? 噴水もあるし、あそこはローズガーデンになっているみたいだし」
「いいですね! では早速、作戦を決行しますね!」
珍しくセレン様との会話が盛り上がったところで、私はお兄様たちがいる会場へと走り出した。
「あ、レーア、待って!」
セレン様が叫んだものの、レーアの耳には届いていなかった。
◇◇◇
私が会場に到着すると、すぐにみんなの視線が私へと向き、すぐに囲まれた。
そうだった!
私、今日は注目されていたんだった!
どうしよう。このままではお兄様のところへ行けない。
周りからの質問攻めに、あたふたしていると、またまたセレン様が登場して助けてくれた。
「こうなることが分かってるんだから、さっき待ってって言ったのに」
セレン様は少し頬を膨らましており、とても可愛い。その可愛いセレン様に周りの令嬢たちは、バタバタと倒れていく。なんとか生き残っている人もいるが、セレン様に見惚れて周りの声が聞こえていないようだった。
ただ唯一、一人の令嬢がセレン様が頬を膨らました姿に、倒れもせず見惚れもせずにいた。それは勿論、フィアナ様である。
フィアナ様はヴィルお兄様以外に見惚れたりなんかしない。フィアナ様って魔術もすごいし、学力だって学園に通っていた頃はずっと学年トップだったと聞く。もちろん容姿も目を引くほどに美しい。まさに、フィアナ様は才色兼備の完璧美人なのである。
そんなフィアナ様に婚約の打診が無かったとは思えない。そんなフィアナ様に好意を寄せられているお兄様って、実はすごかったりする……?
「レーア、聞いてる?」
「あ、セレン様! すみません、考えごとしていて……」
セレン様と話していることをすっかりすっかり忘れていた。
そのせいか、セレン様は少し不機嫌そうだ。
「いいけど、その考えごとって俺のこと?」
「……まあ、そんなところです」
「それならいいけど、俺以外の男のことを考えていたら、そのレーアが考えていた男、絶対に許さない」
そのセレン様の独占欲が強すぎる言葉に、私は内心冷や汗をかいていた。
言えない。お兄様のことを考えていただなんて、言えない。言ったらお兄様、セレン様に許してもらえなくなっちゃう!
あ、でも、お兄様だし大丈夫だよね。身内だし。それに、お兄様がセレン様に許してもらえなくなっても私は関係ないし。
「で、レーア、どうして君はそんなすぐに俺以外の人間たちに囲まれるんだ?」
「それ、セレン様のせいです!」
本当にセレン様のせいなのだ。セレン様が私と婚約したから、みんな私に注目しているだけで。
「そういえば、そうだな」
「そういわなくても、そうです!」
本当にセレン様と婚約して、こっちは迷惑してるんですよ!
こうやってみんなに質問攻めに遭ったり、あったり、あったり……。
他に迷惑してることが思いつかないから、まあ今回は許すことにした。
「で、レーア、作戦はまだなのか?」
「あっ、そうだった! ありがとうございます、セレン様」
今度こそ、私はお兄様のところへ辿り着くことができた。
「お兄様、フィアナ様! あの、庭に素敵な花を見つけたので見に行きませんか?」
また囲まれる前に早く言わないといけないと思い、適当に思いついた嘘を言う。
「レーアが言うなら見に行こう。フィアナ嬢も一緒に見に行かないか」
「私もヴィル様と見に行きたいです」
わざとらしかったかもしれないけれど、二人とも誘いに乗ってくれたので、良しとしておくことにした。




