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王子様と婚約したようですが、何故ですか? 〜溺愛してこられても困ります!〜  作者: 星月みら


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18 お兄様とのお出かけ 2



 お兄様にエスコートされて馬車を降りると、大きな劇場が目の前にあった。

 私はお兄様と一緒に劇場に入る。


 すると、執事みたいな人が近づいてきて、お兄様といくつか会話を交わすと席へ案内してくれた。


「……あの、お兄様、ここは……?」

「ん? 劇場だけど?」


 うん、それは誰でも分かる。

 だけど、ここは二階分をぶち抜いて作られた、王族とか位の高い人しか入れない、ロイヤルボックスじゃない?


「それは分かりますが、この席は……」

「ロイヤルボックス席だが、嫌だったか?」


 や、やっぱり!

 何で私たちがここでオペラを見れることになってるの!?


 私、伯爵令嬢だよ?

 それに、お兄様だって嫡男とはいえ、伯爵令息。ロイヤルボックスって明らかにおかしいでしょ!


 私の様子を見て、お兄様が私の考えていることに気づいたのか、説明をしてくれた。


「レーアは誰の婚約者だ?」

「……セレン様です」

「もう少ししたらレーアは王太子妃。そして、王妃になる。問題あるか?」

「ありますよ!」


 あるに決まっている。

 セレン様とここに来たのなら納得できるが、お兄様とだったら納得できない。

 そもそも、婚約を解消するつもりでいたんだし。


 王太子の婚約者だからといって、そんな簡単にここを取れるものなのだろうか。

 私がズレているだけなのかもしれない。


 だけど、私は百歩譲っていいとしても、お兄様は全然良くない。


 お兄様がまたしても私の考えていることに気づいてくれ、説明してくれる。


「ああ、俺のことか? 俺ならレーアが王太子殿下と結婚したら、王太子殿下の義兄になるんだが」

「結婚してからなら、百歩いや二百歩譲っていいかもしれませんが、まだ結婚もしてませんよ!?」


 そんなに爵位は高くないし、婚約も決まったばかり。そんななのに、ここを取れるっておかしい。 


「レーアは厳しいな。実は、王太子殿下に『あること』を助けた件で貸しがあったんだ。それで、今日ここを取って貰ったんだ」


 セレン様に貸し!?

 あることを助けたって何を!?

 と、色々とツッコミたいところだが、他の人もいるので帰ってから聞こうと思う。


 まあ、王太子殿下に許可をもらっているお兄様と、王太子であるセレン様の婚約者である私なら、断れなかったのかもしれない。


 もうすぐ始まるし、せっかくのロイヤルボックスなのだから楽しもうと思い、諦めて席に座った。



◇◇◇



「うぅ……。ぐすん……」

「そんなに泣かなくても……」


 オペラを見終わった私は、思いっきり泣いていた。あのお兄様ですら、私の泣きっぷりに引いている。


 でも、ものすごく良い物語だったのだ。


「ほん゙どうに、よがっだ〜」

「泣くな。帰るぞ」

「うぅ……ひくっ……」


 お兄様は無理矢理、私を立たせた。

 私が涙を拭くハンカチは、もうびしょびしょになっている。


「もう泣きやめ」

「はい……。ずびばぜん゙」


 すると、お兄様の手が私の目元を覆った。次の瞬間には、暖かな光がお兄様の手から発せられていた。


 そして、お兄様が手を離すと、泣き止んでいた。しかも、泣いて赤くなっていた目が元通りに戻っている。


 今、お兄様は魔術を使ったんだろうと思っ。

 魔術はあまり使わない……というか、魔術が使える者が少ないのだが、少ない魔力を使って魔術を行使したのだろう。


 お兄様の魔力とかについては謎で、私は全く知らないのだが、さっきのは光属性の魔術。光属性は珍しいが、お兄様は持っているのだろう。


「これで帰れるな」

「は、はい……!」


 私はお兄様に手を引かれて、劇場をあとにした。


 そして、馬車に乗り込み、帰るのかと思いきや街に行くようだ。


「朝食も食べずに出てきてしまったからな、お腹が空いただろう。ご飯を食べて帰ろう」


 お兄様の意見にはあまり賛成できないことが多いが、これは賛成だ。

 そういえばお腹が空いた。もう昼過ぎだし、当然だ。


「はい、お兄様」


 そして、お兄様と暫くの間、馬車に揺られて市場にやってきた。


「レーアは、市場にはあまり来たことがないだろう?」

「そうですね」


 何で市場なのだろうと思ったが、私が来たことのない場所に連れてきてくれたようだ。


 市場はたくさんの人々で賑わっていた。

 たくさんの品物が並び、美味しそうな果物や見たことのない野菜など、色々なものがあり、興味がそそられた。


 すると、お兄様が私から離れると、二つの果物を買って戻ってきた。


「レーア、これを食べてみたいんだろう?」

「……っ! はい!」


 お兄様ってよく気づいてくれるよね。だから、モテるのだろう。でも、一つだけ気づいていないものがあるけど。


 お兄様はいつも私に味方をしてくれる。そして、幸せを願ってくれていると思う。だから、私もお兄様の幸せを願っている。そのためには、自分の恋心に気づかせないといけないのだろう。


 お兄様が二つ持っていたうちの一つの果物を、私に差し出してきた。

 それは、赤く美味しそうだ。手のひらサイズでかじりつきたくなる。


 名前は分からない赤い果物を齧ってみた。

 シャキッと音が鳴る。


 ……美味しい!

 甘くて、でも甘すぎなくて、すごく美味しい。


「お兄様、これなんて果物なんですか?」

「ああ、これは、リンネの実だ。東方の異国で採れる、ここではあまり見かけないものだったし、レーアが食べたそうだったから、買ってきたんだ」


 相変わらず、お兄様の知識量はすごいと思う。

 私なんてこの果物の名前すら知らなかったのに、どこで採れるかまで説明してくれるなんて。


 お兄様も何かと謎が多い人物だよね。セレン様も、レオン様も、あと『彼』も。

 私のまわりにそういう人が集まる傾向があるのかしら?


 と思いながら、お兄様と市場を歩いていると、人混みの中に綺麗な黒髪が目に入った。

 その黒髪が綺麗であのときの彼を思い出していると、その黒髪の男性が青い瞳で私を見た。


「え……」


 あの『彼』がそのまま大きくなったような、その黒髪の男性の姿に、私は目が離せなくなっていた。

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