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作者: 芋姫
掲載日:2024/10/28


100発100中の暗殺成功率を誇るわたくしは、国一番と名高い殺し屋。


今日も依頼人からの仕事を請け負い、任務を遂行中。


わたくしの調査によると、もうすぐ今回のターゲットである有名な富豪の一家がこの道を通るはず。


数分前から曲がり角に隠れて待機している。


すれ違いざまに一撃で始末するのが、いつものわたくしのスタイル。


目撃者は足元にいる黒猫のみ。野良猫かしらね。 かわいいわ。


待ち構える事、数十分。 ついにターゲットが姿を現した。


今回のターゲットは一家の現当主と、次期跡取りと評判の一人息子。2名である。父親の方は著名人で、メディアで何度も見かけているから知っている。息子の方は、依頼主の都合で事前に写真を入手できなかったが、まだ子供らしい。年は5~6歳で金髪で、見たらすぐにわかるとのこと。


子供だろうとわたくしは容赦はしない。 依頼主はこの一家が経営する事業のライバル事業者だが、子供と聞いても眉一つ動かさないわたくしに依頼する気になったらしい。


他は全部断られたってこと? まあ、どうでもいいわ。


そもそもわたくしは子供が大嫌い。わたくしが好きなのは赤ワインと猫。 



・・・話がそれましたわね。 ターゲットが近づいてくる。 先頭にはサングラスをかけた黒いスーツを着た男が2名。彼等に続いて、仕立ての良い茶色いコートを着た男がやってきた。


おそらくあの男が今回のターゲットの一人、現当主だろう。

 

やがてそのあとから高級そうな白いファーを着た女が現れた。女は視線を下に向け、微笑んでいる。視線の先には小さな子供がいた。 (あのガキね) わたくしはコートのポケットにしのばせた武器に手をかける。前方の男たちは護衛だろう。あたりを警戒している。


しかし、わたくしにとって、こういう状況は何百回と経験し、もう「慣れたこと」。足元の黒猫ちゃんにウインクをして私は通行人を装い、自然な感じで角から通りに出ていく。 


いつからかしら?


星の数ほど依頼をこなすうち、会社で頼まれた書類のコピーを何枚もとるように殺しを行えるようになった。そこには何の感情もわかなかった。


前方の男たちがわたくしを見る。ターゲット一家の視界についに入った。


わたくしは全く動じず、他の通行人にまぎれて堂々と歩く。 いつもどおりの手順。


ターゲットと距離が近づいていく。 あと数メートルですれ違うという位置まできた。


わたくしは光の速さで武器を取り出した。 まずは父親。 音もなく真正面から毒を仕込んだ刃で切りつけた。


血も出ない上、当人は切られた事にも気が付かない、が、数時間後には毒が完全に効いて命を落としているだろう。


ちなみにこの毒も特殊かつ非合法なもので、毒の成分が時間とともに消滅する。そのため、証拠は一切残らないってわけ。


大きなニュースになるでしょうね。 まあ、この手の大物の不審死に大抵関与してしまっているわたくしが言うセリフではないけれど。


さて次は、と。


およそ0.2秒で一人目のターゲットを始末したとほぼ同時であった。



・・・こどもと目が合った。


その一瞬、わたくしは石になったかのように動けなくなってしまった。 ・・・そのまま一家とわたくしはすれ違った。 


我に返り、後ろを振り向くと10メートルほど、彼等と距離ができてしまっていた。



わたくしは暗殺に失敗してしまった。  


しかし、そんなことより。  わたくしはぼんやりとした頭でふたたび歩きだす。


歩き出しながら、浮かんでくるのは先ほどの子どもの顔。 


依頼主の証言通り。金髪で。年は5~6歳で、、、ぷっくりした頬に。茶色い丸い瞳。口はぽかんと半開きで、、、、。



(なんて、可愛いのかしら。)



そのときだった。



気配を感じて足元を見ると、いつのまにかさっきの黒猫がついてきていた。


一部始終を見ていたであろう、唯一のこの小さな目撃者は、動揺しているわたくしを見上げ、「ニャア」とのんきに鳴いたのだった。





**************************************************************


テレビをつけたら著名な実業家の訃報のニュースが報じられていた。


思わず見入っていると、居間で電話が鳴った。杖を片手にソファーから立ち上がりかけた時、メイドがすばやく子機を持って現れた。


「奥様にお電話です」「ありがとう」 


メイドはお辞儀をして部屋からでていった。ドアが静かに閉まるのを見届けてから、電話に出る。


「・・・もしもし」 すると、電話のむこうからよく通る聴き慣れた女の声がした。


「わたくしです」 「ああ」


「J・S家の現当主および次期当主、予定通りに始末しましたわ」 「ついに終わったのね」 


「・・おかあさまが昔、殺せなかったターゲットですけどね」


女は軽く嫌味を言う。 「ええ、ええ、わかってるわ」 と苦笑しながら答える。


被害者は先日、新社長に就任したばかりのまだ若い青年だった。


髪の色を除けば、幼い頃の面影などみじんもなく、陰で独裁者と評判だった父親にうりふたつの顔をした若者だった。


彼の父親はとうの昔に亡くなっているが、今は亡き父の意志を継いでこれから、という時の突然死、と報じられている。


親子2代で不審死が続いているが、真相は誰にもわからない。色々な説が巷で飛び交っているが、今後も判明することはないだろう。


「では、わたくしは次の仕事がありますので、ごきげんよう」「ご苦労様、またね」


わたくしの意志をしっかりと継いでくれた娘にねぎらいの言葉をかけつつ、電話を終える。


タイミングよくティーセットを持ってきてくれたメイドに子機を返し、小さくあくびをしながら考える。


(編み物でもしようかしら)


テレビを消し、お茶を飲もうとしたら、飼っている白猫が足元にじゃれついてきた。


「なによ、遊んでほしいの?」微笑みかけると「ミャア」と一言、猫は鳴いた。

























































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