初の洞窟
──トロトロの墓。
松明の頼りない火が洞窟内を照らす。
1歩踏み出したその先に魔物が居るかもしれない。
慣れない暗闇の中、手が汗ばむのを感じた。
証明する手立ては今の所ないが、これでも勇者の末裔だ。
人より身体能力も高く、このような状況下でも常に頭でマッピングをし、不足の事態にも対応できる頭脳もある。
しかし、命を賭けた本当の戦場はこれほどまでに違うものか。
「っか!この松明邪魔だよ!右手で武器持って左手に盾持ったら、松明つかえねぇじゃん!」
大きな声が洞窟内に響き渡る。
この洞窟に入った時からわかってはいたが、この洞窟にはモンスターの気配は無い。
またただのチュートリアルだ。
「墓って言ったって、遺体はここにはないし、どうせ子孫頑張れ、みたいなことだろ?」
実際その通り。
でも、一応収穫はあったか。
太陽の振動石、雨雲の振動杖。
この二つを手に入れなければ竜王のところには辿りつけないらしい。
「だったら、俺ん家の日記とかに書いとけよ。残したのは金だけだしよ」
まぁ、それでもこの年までニートできたからまだいいか。
洞窟を出る。
「ラブドール姫は可愛いのかなぁ」
名前だけ聞くと、とんでもない名器の持ち主っぽいが。
レベルを上げ、装備を整えた俺は橋を渡り東へ。
目指すはイラマの村。
温泉もあるみたいだし、息抜きはできそうだ。