城下町
せっかく城に来たのだから、情報収集及び、観光をしよう。
と言って歩いて見たものの、大した収穫はない。
1番の収穫は、この城のどこかに地下室があり、そこに竜王を倒すために必要なアイテムがある、ということだけだ。
あとは、光あれとか言いながら、太陽拳をかましてきたジジイくらいか。
『カクは眩い光を覚えた!』
このナンバリングで覚える特技じゃない気が、するけど……。
俺は早々に城を後にすると、ラブドールの城下町に出ることにした。
町を散策中、草むらに倒れている兵士がいた。
俺は慌てて駆け寄り、声をかける。
「大丈夫か!?」
お世辞にも大丈夫だとは言えない致命傷。
しかし、それを推しても伝えたいことがあるようだ。
彼は弱々しく俺の手を握り、訥々と話す。
「ラ、ラーブ姫の……、救…助たい、は、ぜ、全滅、した……。
こ、このこと、を。王にお伝えしなく、ては……。ぐふっ!」
血を吐き出し、動かなくなる兵士。
彼は仲間も殺され、自身も殺されそうになりながらもその役目を全うすべく、この町まで戻ってきたのだろう。
俺はこの名もなき勇者の手を取り、お城へ連れて行くことにした。
「ラ、ラーブ姫の……、救…助たい、は、ぜ、全滅、した……。
こ、このこと、を。王にお伝えしなく、ては……。ぐふっ!」
まだ生きてるんかい。
それは暁光だが、紛らわしい。
とりあえず、城の兵士に彼を託し、再び城下町へと赴く。
「なんか装備を買わないとな」
今の俺の武具といえば、護身用の竹槍、布の服くらいだ。
武器防具、回復用に薬草、毒消し草。
欲しいものは多々あるものの、手持ちは150K。
買えるのは、武器なら棍棒、防具なら旅人の服か皮の盾。
とりあえず、皮の盾を買っといて、残りは薬草にするか。
軽く装備を整えた俺は、一歩。
非現実へと踏み出した。
『カク(俺)』が『カク(俺)』として『カク(俺)』を超えて『カク(俺)』が世界になるために。
何度でも繰り返す、第一歩。