無用の長物と王女の愛欲
魔物の持つ瘴気の吹き溜まりのようなこの町で、これだけ聖なるオーラを放っているのだ。
魔物たちがなぜこれを持ち去らなかったのかよくわかった。触れることすら出来ないのだ。
俺は早速鎧を装備した。
わかる。これは勇者トロトロの鎧だ。
そして。俺しか装備できない鎧だ。
俺はチラリと脱いだ鎧に目をやる。魔法に耐性のある「魔法の鎧」。先程エナメルキドで買ったばかりの鎧だ。もう用済みで売ってお金にするだけの荷物になった。
「無駄なコーガン(お金の単位)になりやがった!」
嘆き悲しみながらも、俺はそれを持ち物として持ち歩く。
こんなでかい物持ち歩というレベルではない。担がなきゃいけない大きさだ。
グラフィック的には俺が持ってるのは剣と盾。どこで鎧などの武器を持ち歩いているのかは謎だが、俺はこのドムドームラムラ村を後にして、一度ラブドール城に帰ることにした。
と、その時。
「カク様、聞こえますか?」
剣に龍が巻きついた貰っても嬉しくないおみやげno.1のアイテムから声が聞こえてきた。
確か「王女の愛欲」とかいうくだらないアイテムだ。
「一度エナメルキドに戻って下さいませ」
王女は普段と変わらぬ様子で話している。
しかし後ろからは、卑猥な粘液音と男らしき喘ぎ声が聞こえる。
「ひ、姫さま! もう果ててしまいますっ!!」
「あと5分は保たないと、城の兵士にはなれません!男なら頑張りなさいっ!」
一体こいつらは何をしてるんだ。
「申し訳ありません。新しい兵士の採用試験をしているもので……」
え? 兵士ってそういう過程を通らないとなれないの? じゃあ、あのお城や最前線で戦っている兵士たちも?
「とにかく、エナメルキドに戻り、そこの長老に話を伺って下さいませ。重要なアイテムの在りかがわかるはずですわ」
「ひ、姫さま! もうっ!!」
「残念……。貴方は兵士としては失格です。配属先は城に使える侍女たちの慰み者です」
……。この赤いボタンが通話ボタンか?
俺は黙ってそのボタンを押して通話を切ると、再びエナメルキドの町へ歩き出した。




