ドムドームラムラ村
──ドムドームラムラ村。
「ここか……」
破壊され、燃やされ、殺され、略奪され、朽ちる。
ここにある人々の営みは今は面影もない。
唯一生き残った人間も力尽きたのか。
いくつかの墓を見つけたが、村人全員を弔うことはできなかったようだ。
俺は村の中でもこちらを狙ってくる魔物に気をつけながら進む。
しかしこれだけたくさんの魔物がいながら、複数で襲ってこないのは何故だろう。基本タイマンだ。俺としてはありがたいのだが。
ここに勇者トロトロの鎧があると言うが、確か、道具屋のユキノフだかトンヌラだかが持ってたと言う話だ。
そんなお宝を魔物たちが見逃すか?破壊、もしくは手の届かないところへと隠すのではないか。
そうなるとこの村にある可能性も低くなる。
俺は遠目から道具やらしきものを見かけ、そちらを目指す。
近づいたらわかるほどの清涼な空気。
その手前には同じほどの邪気を放った魔物の姿があった。
「あれは!」
俺も名前しか聞いたことはないが、ドラゴンに匹敵するか凌駕すると言われる、竜王軍切っての魔物。
その強さはトップクラス。
名前は確か。
「淫夢の騎士!」
奴もこちらに気づいたようだ。
「遅かったな、勇者よ。ここを守り続けて10年……。誰一人ここまで辿り着いたものはいない」
こいつは10年間もこの鎧の前でつっ立っていたのか?
「今コーヒーを入れよう。砂糖とミルクはどうする?お茶請けにはデリシャススティックがあるぞ」
ちゃぶ台を取り出した淫夢の騎士は、本格的に豆を挽き、適度な温度でゆっくりと円を描くようにお湯を入れていく。
「待てまてマテ、もてなすな、俺を!戦えお前モンスターだろ馬鹿タレ!」
淫夢の騎士は悲しそうな顔をして、戦闘態勢に入った。




