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第四十八話 功労者はそれから

 マハト霊山での合宿から一週間後。


 これまでの人生で最も肉体と精神を酷使したのだろう。


 俺が次に目を覚ました時には、ウェンディル学園の自室に帰ってきていた。


 目の前には、心配そうにこちらを見つめるガラテヤ様。

 俺が目を覚ますと、コンマ一秒も空けずにこちらへ抱きついてきた。


「ジィン!」


「あーッ!ガラテヤ様!痛い痛い痛い!痛いけど嬉しい!ただいま!俺、無事です!」


「良かった……生きてて……!」


「こっちのセリフですよ!はぁ……無理して良かったぁ……。マジでどうなることかと思いました」


 溜め息をつく俺に、ガラテヤ様は涙を溢しながら、しかし抱きつく腕は緩めない。

 どうやらガラテヤ様の方は、すっかり快復したようである。


「ジィン……ジィン……!もう、会えないかと思ったぁ……!あのデートの言葉、やっぱりフラグだったんじゃないかって思ったぁ……!」


「もう、そんなことにはならないって言ったじゃないですか。俺は貴方の騎士ですよ。貴方の身だけじゃなくて、ちゃんと心も守りますって。その対象が俺なら、尚更死ねませんよ」


「良かった、良かった……!そうよね、ジィンは騎士だものね……!」


「そうです。俺は騎士ですから!少なくとも、ガラテヤ様を守る力だけは最強と言っても良いかもですね。……って、調子に乗りすぎですかね?」


「ううん、そんな事ないわ……!」


「いやいや。……俺が着いた時には結局、ガラテヤ様も痛めつけられてましたし」


「いいのよ、あれくらい!後遺症も残ってないんだし!」


 俺とガラテヤ様はそれからもしばらく抱き合った後、あの事件から今に至るまで何があったのかを教えてもらった。


 あの後、俺はメイラークム先生とメイラークム男爵家直属の医師と魔法使い達による処置を受け、病室で休ませてもらっていたらしい。

 その間に、残る皆はとりあえず用意されていた行事……バーベキューなり野外訓練なりをこなしていたそうな。


 最終日の入浴時間に女子風呂の覗きで一悶着あったらしいが、そこはマーズさんがヌルッと鎮圧したようであり、ガラテヤ様をいろんな意味で守ってくれたことについて、彼女のパワーには頭が下がる思いである。


 俺はその間に加えて、王都へ戻ってきてから一週間。

 魔法薬で特殊な処置をしてもらっていたとはいえ、まさかここまで眠っていたとは。

 それ相応の回復はしていたらしく、身体の痛みこそ残っているが、それ以外は大分マシになっている。


「バグラディは?どうなったんですか?」


「アイツは牢獄行きよ。今は衛兵達が詰所にしている古城の地下で幽閉されてるわ。全身に鎖を繋いで、魔力を封じる結界も張られている牢屋に閉じ込められてるってこと。警備員にも戦闘力なら隊長にも並ぶ人達を配置して、念には念を入れた警備がされているわ」


「まあ、危険人物ですからね。子爵家のお嬢様と騎士を殺そうとした挙句、国家転覆まで企てていたんですから」


「そうね。傷害、暴行、殺人未遂、内乱未遂……こちら側の法律にはあまり詳しくないけれど、これと余罪の分くらいは罰されるんじゃあないかしら?とりあえず、私は皆にジィンの無事を伝えてくるわ。ジィンはもう少し、ここでお休みなさい」


 俺は痛む全身を無理矢理に起こし、部屋を出ようとするガラテヤ様を見送る。


「じゃあ、また。何かあったら言ってください、俺にできることがあれば手伝います。武器のメンテくらいなら、多分大丈夫なので」


「分かった。これからも、頼りにさせてもらうわね」


 ガラテヤ様が部屋を出ていく。


 俺は再びベッドに横たわり、震える身体を押さえる。


 まだ、妙な胸騒ぎは収まっていない。


 これから何か起きようとも、俺は絶対にガラテヤ様を守ると、その後ろ姿を思い出しながら改めて誓う。


 騎士として、弟として。

 そして、彼女を愛する彼氏として。

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