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第百四十九話 抜け落ちた日常

 一ヶ月後。


 ロディアを巡った一通りの事件は事後処理が済み、少し立ち直った俺達もまた、そろそろ講義へ復帰するところであった。


「おはようございますわ、ガラテヤ様!騎士様も!」


「お久しぶりですわね!先生方と、どこか遠くへ旅に行っていたと噂を聞いたのですけれど……どこへ?」


「ええ、おはよう。ちょっと北の方に行っていただけよ」


「良いですわね、旅!もう王都にも、だんだん飽きてきてしまいましたわ~」


「え、ちなみにそこには、騎士様もご一緒に?」


「え、あ?ええ、まあ」


「「「キャー!ヒューヒュー!」」」


 お気楽なものだ。


 俺達が「果て」へ到達したことも、ロディアと交戦したことも、それが原因でマーズさんとアドラさんが死んだことも、一部の人間を除いて、公には発表されていない。


 二人が死亡した理由は、もっともらしい理由で隠蔽されているのだ。

 何なら、二人とは旅の途中で別れたことになっている。


 別れたは別れたでも、正しくは死に別れたということを知る者は、ごく僅か。


 それを知らないのか、校内におけるマーズさん追悼ムードは、案外あっけなく終わってしまったのである。


 一方、俺達はまだ、その悲しみから抜け出せずにいる。


 新たな四肢(パワードスーツ)を得て、現役時代をも超える動きが可能となったケーリッジ先生でさえ、それは同じこと。


 元気そうでありながらも、時折何とも言えない、口角と眉が完全には上がり切らないような表情がたまに視界へ映るのは、俺達に気を遣ってのことではないと、そう思いたい。


 むしろ、気遣いで表情を作ってくれているのならば、そのような浅い同情は不要であり、そしてケーリッジ先生もまた、それを分からない程度の冒険者ではないハズだからである。


「すいませーん……って、いないか」


 俺とガラテヤ様は講義の合間に、メイラークム先生の元を訪ねる。


 しかし、校内のどこにも姿は見当たらず。

 ムーア先生から聞くところによると、しばらくメイラークム男爵家に戻っているのだとか。


 薬の研究を進めるための荷物を取りに行っているとのことで、戻るまで少し時間がかかるようなのだ。


 昼休みに入り、教室を出たところで、ファーリちゃんが姿を見せる。


「おはよう、今日から戻ったんだ」


「ああ。俺達がヘコんでいたところで、講義は待ってくれないから。何とか無理やり来てるよ」


「今年は、ただでさえ外出が多かったものね。流石に一年目で不登校という訳にもいかないもの」


「……ん、そうだね」


「ファーリちゃんは?いつからココに?」


「先週。バタバタしてて、ちゃんと学園に入るための準備……できてなかったから。あと、学費……ありがと」


「良いのよ、冒険者養成政策のおかげで、安いし。庶民の子、結構いたでしょ?」


「ん。それでも、ありがと」


「……良い子に育ててもらったのね。改めて、猟兵(警備隊)の皆には感謝しなくちゃ」


「そっスね」


 ガラテヤ様も、見た目の幼さならあんまり変わらないのに……というのは、言わないお約束である。


 俺達はファーリちゃんと共に、食堂へ。


「よォ、少しいいか?」


 すると何故か、この学園には在籍していないどころか、本来ならば俺達との協力関係を一旦は終えて軍の監視体制に置かれているハズのバグラディが、俺達を待ち伏せしていたかのように立っていた。

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