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四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜  作者: 最上 虎々
第九章 在るべき姿の世界

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第百四十一話 猛者達の本気

 マルコシアス魔導兵団は、一斉に生気の無い目で先生達の方を向き、攻撃を開始する。


「フン、ホッ、ハッ!……意思無き傀儡など、恐るるに足りませんな!」


 ムーア先生は一人、魔道兵団の中へ突っ込み、回転斬りと連続突きで圧倒していた。


 素体となっている死体は、確かにロディアの力で強化されている。


 しかし、それがまるで無力であるかのように、次から次へと機能を停止させていくムーア先生の動きは現役時代の、鬼とも軍神とも評され、幾千もの魔物を葬り去ってきた、伝説的な活躍と違いないものであった。


「あたしも負けてられないわね!パワードスーツ!もう一度さっきの、いける!?」


「可能デス。準備ヲお願いしマす、マスター」」


「ええ!……はぁぁぁぁぁぁぁぁ……!喰らいなさい!【雷電暴雨斬裂飛(テンペスト)】!!!」


 ケーリッジ先生も長弓を構え、渾身の力を込めて矢を放つ。


 クロスボウとは比にならない威力の一撃は、爆撃のような広範囲、落雷のような高威力で、魔道兵団を消し飛ばした。


「ががが、あが、がががが」


 ぎこちない動きで、魔道兵団はメイラークム先生へも攻撃を仕掛ける。


「あら、ムーア先生とケーリッジ先生のところはいいの?お仲間がやられているけれど」


「がが、あがががぁ!や、やす、い、ほう……」


「やれやれね。この三人の中だと、私が一番弱いってバレちゃったのかしら」


「ががぁ!ひと、じち……!」


「……でも、死体にナメられるというのは……何だか納得いかないわね」


 一方のメイラークム先生。


 じわじわと距離を詰めてくる魔道兵団を前に、一切の焦りを見せず。


 胸ポケットから取り出したナイフを飛ばし、先頭に立っている魔導兵の動きを止めた。


「あ、ぎ、ぎぎぃ」


「畳みかけるわ。【鎮静蹴(ドクター・ストップ)】。はっ、やっ、ふんっ、はっ!」


 そして一切の隙を見せず、高く飛び上がったメイラークム先生は、魔導兵達の頭部へ連続で蹴りをお見舞いする。


「ギャッ」


「グエッ」


 頭部を砕かれた魔導兵は、次々に機能を停止。

 そのまま元の死体へと戻っていく様子を見て、メイラークム先生は、そっと胸を撫で下ろした。


 魔導兵団と、そう形容されるだけの数が揃っていたハズだったが、あっという間に蹴散らされたそれらは、ものの十数分で半分に数を減らしてしまっている。


 たった三人、それも現役で戦場に立ってはいない、冒険者養成学校の教師達。


 しかし彼らは間違いなく、未来の英雄を育てるに相応しい、英雄の如き戦いぶりで、悪魔マルコシアスによる悪趣味な軍隊を圧倒していた。


「まだまだ、これからですな。疲れたら休んでいてくれて構いませんぞ」


「言ってくれるじゃない、ムーア先生!久しぶりに当時を思い出しちゃった?」


「ホッホッホ、そうですなぁ。この血湧き肉踊るプレッシャー……!やはり私は生涯、戦いをやめられはしないのかもしれませんな」


「ほんと、騎士というより狂戦士よね、ムーア先生って」


「ふっ、褒め言葉ですな」


「二人とも。まだまだ来るわ、気を抜いちゃダメよ」


「「了解!」」


 三人はもはや、先ほどのロディアと戦っていた彼らではない。


 ある者は若き時代の鬼たる己を呼び戻し、ある者は失った足を完全に取り戻し、またある者は、動く大量の死体を前に、一切動じなかった。


 身体温まってしまり、ギアが上がってしまった三人は、もはや強化した死体程度では止められなくなっていたのである。

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